専門医が解説する「尿管結石」。男性は7人に1人、女性も中年以降は特に注意。原因が食習慣の可能性も

今回は、国際医療福祉大学三田病院 副院長 泌尿器科部長(教授)の大東貴志(おおひがし・たかし)先生に、「尿路結石」についてお聞きしました。尿路結石を経験する確率は男性が多いですが、実は女性の経験者も少なくはありません。尿路結石は細菌感染を引き起こす原因にもなり、死亡する可能性も出てきます。食事と水の摂り方で防ぐことが可能ですのでぜひ、この記事を参考にしてください。

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どんな病気?

● 尿路(腎臓、尿管、膀胱(ぼうこう)、尿道)に結石(石のようなもの)ができる病気。
● 背中周辺の激しい痛みの他、血尿や吐き気を伴うことがある。
● 女性は15人に1人、男性は7人に1人が 一生に一度は経験するといわれる。
● 尿の流れが悪くなり、細菌感染を起こすと、命にかかわる「結石性腎盂腎炎(じんうじんえん)」を発症することもある。

再発率は5年で50%と高く、再発予防が大切です。


尿管に詰まった石が背中周辺の激痛を起こす

ある日突然、背中やわき腹あたりに激しい痛みを感じたら、「尿路結石」かもしれません。

ズキズキ、あるいは刺すような痛みで、人によっては救急車を呼ぶほど重篤な事態を招くこともあります。

「尿路は、尿を作る腎臓、腎臓から膀胱につながる尿管、尿をためる膀胱、尿を排出する尿道の総称です。この尿路に石ができるのが尿路結石です」と、大東貴志先生。

突然の痛みに加えて、血尿が伴うこともありますが、全ての人に症状が出るわけではありません。

腎臓で大きくなった結石が尿管に移動して詰まったとき、激しい痛みの症状につながるのが一般的です。

「尿管は、内径が1mm程度の細い管で、尿が通るときには3mm程度にまで膨らみます。5mm未満の結石なら尿と一緒に膀胱へ送ることが可能ですが、1cm以上になると尿管に結石が詰まり、自然に出ることが少なくなります。

この『尿管結石』は、合併症の『結石性腎盂腎炎』を引き起こすと、血液中に細菌が入って全身に広がる敗血症となり、命の危険に陥ることもあります」と、大東先生は警鐘を鳴らします。

尿と一緒に流れた結石が膀胱に到達すると痛みは起こりにくく、また、尿道を通過するときも、尿道は尿管より内径が広いため、通常はさっと出ることが多いですが、まれに途中で詰まることも。

このときは尿が出にくくなります。

ほぼ無症状の結石は、健康診断などの超音波検査で発見されるケースが増えています。

結石が自然に排出しない場合は、「ESWL(体外衝撃波結石破砕術)」や「TUL(経尿道的結石破砕術)」などにより結石を砕いて取り除く他、尿道に移動した結石が詰まって尿が出ないときには、緊急内視鏡手術で結石を取り除くこともあるそうです。


「尿路結石」ができる場所は4カ所

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食習慣や持病など結石の原因はさまざま

無症状の場合でも、結石を放置すると、やがて腎機能が低下し、血液透析が必要となる腎不全につながることもあります。

早期の治療が大切ですが、治療を受けても約半数の人は再発します。

なぜなら、結石ができる主な原因は食生活との関係が深く、改善できないと再発率が高いためです。

「結石のできる原因は、結石を構成する成分によってさまざまあります。最も多いのは、『シュウ酸カルシウム結石』。シュウ酸はほうれん草などの食べ物に多く含まれ、尿が酸性に傾くとカルシウムと結合して結石を作りやすいのです」と、大東先生は話します。

肉類など脂肪分の多い食事やアルコール類全般などは、尿を酸性に傾けるといいます。

他に肥満やトイレを我慢しなければいけない職場環境など、さまざまな要因が絡み合って尿路結石は生じやすくなります。

また、尿路結石の患者はもともと男性が多いですが、中年以降の女性は発症しやすいことも分かっています。

病気によって結石ができることもあります。

例えば、「高尿酸血症の人は『尿酸結石』が生じやすくなります」と、大東先生。

レバーや肉類などのプリン体を多く含む食品を摂ると肝臓で分解されて尿酸に変わり、血液中の尿酸値が高くなると尿の中に排出されますが、それが結晶化すると尿酸結石になるのです。

「また、のどの甲状腺の裏側にある副甲状腺に腫瘍ができると、体内のカルシウムをうまく調節できなくなり、尿の中にカルシウムとリンが増えて『リン酸カルシウム結石』が生じやすくなります。

遺伝性の病気により、アミノ酸の一種のシスチンが結晶化する『シスチン結石』ができる場合もあります」と言います。

取材・文/安達純子 イラスト/堀江篤史

 

国際医療福祉大学三田病院 副院長 泌尿器科部長(教授)
大東貴志(おおひがし・たかし)先生

1984年、慶應義塾大学医学部卒。医学博士。埼玉医科大学講師、米国チュレーン大学留学、慶應義塾大学医学部泌尿器科准教授などを経て、2008年より現職。日本泌尿器科学会認定指導医・泌尿器科専門医。

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この記事は『毎日が発見』2023年5月号に掲載の情報です。

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