気むずかしい母に脳ドッグを受けさせたい。そこで姉妹がひねり出した「妙案」は?/アルツフルデイズ

ワフウフ著『アルツフルデイズ笑いと涙の認知症介護』からエピソードを厳選してお届けします。

浮気と金銭問題が原因で、両親は家庭内別居中。そんな中、母(あーちゃん)はお金や薬の管理ができなくなり、アルツハイマー型認知症と診断されます。これ幸いと、あの手この手で母の個人財産の独り占めを企てる、悪魔のような父(たんたん)から母を守り、極秘で施設への入居を計画するワフウフさんと姉(なーにゃん)。いつかは訪れる肉親の介護問題をリアルに考えさせられたかと思うと、ありえないトラブルが続出し、グイグイと引き込まれる、涙と笑いの介護ストーリーをお届けします。

※本記事はワフウフ著の書籍『アルツフルデイズ笑いと涙の認知症介護』から一部抜粋・編集しました。

【前回】まさか認知症!? 自信満々でプライドの高い母を、どうやって病院へ連れだす?

ひねり出した妙案は「姉妹から脳ドッグをプレゼント」に母は快諾!でも検査当日「今日はみんなで何の集り?」快諾の記憶はなし。

抵抗はされなかったけど......何しに来たの!?

実際にあーちゃんの様子を見ていないなーにゃんは半信半疑だったが、ワフウフとなーにゃんは話し合って出来るだけ早いタイミングであーちゃんに認知症の検査を受けさせようと決めた。

だけど認知症の検査が何科の病院で出来るのかすらもよく分からなかった。

ネットで色々調べてみたら「老年科」「物忘れ外来」「脳神経外科」などがあった。

でも、プライドの高いあーちゃんをどう言いくるめて認知症検査に連れて行けばいいのだろう。

これもネットで調べたら、やっぱり本人が断固として拒否するので病院に連れて行くことが出来ないというお悩み相談がたくさん出てきた。

うーん。やっぱり、みなさんそうだよねえ。

「認知症の検査」だなんて言ってしまったら、あーちゃんも断固として病院行きを拒否するだろう。

「認知症の検査」と言わなくても、「老年科」「物忘れ外来」という名前の場所に連れて行かれるだけでひどくプライドを傷つけてしまいそうだ。

何しろ本人はまだまだ若見えする事に自信満々だからね。

そして、プライドを傷つけてしまったら二度と同じ場所を受診しないだろうし、ワフウフとなーにゃんのことも警戒して避けられてしまいそうだ。

ワフウフとなーにゃんはじっくりと策を練り、あーちゃんに「健康で長生きして欲しいから脳ドックをプレゼントするよ!」と言ってみた。

あーちゃんは糖尿病なので健康診断は定期的に受けているが、脳ドックは受けたことがなかったのだ。

おかげさまであーちゃんは喜んでプレゼントの脳ドックを受けに行くと言ってくれて、「あなた認知症ですよって言われちゃったりしてね!」と、冗談まで言っていた。

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いや、それ、冗談になりませんから。

じっくりと策を練っている間に、きっかけとなった日から脳ドックを受けるまでひと月ほど時間がかかってしまったが、病院へスムーズに連れて行く段取りはついた。

そして2017年4月某日。

いよいよ待ちに待った、あーちゃんの脳ドックの日。

病院の最寄り駅でワフウフとなーにゃんとあーちゃんで待ち合わせしたのだが、顔を合わせるなりあーちゃんが放った言葉は......

「今日はみんなで何の集まり?」

脳ドックって約束したのに......!

忘れちゃったの!?

そして、その日あーちゃんは、きっかけの日にワフウフが買ってあげたスカートをはいてきていたのだけど、

「このスカート素敵でしょ? いくらだと思う? ○×で980円!」

地元の店であーちゃんが自分で買ったことになっていたよ......。

まあいいのよ、買ってあげたといっても、ファストブランドのお値下げ品だったので実はもっとお安かったのでね。

ワフウフはあーちゃんの話を訂正したが、駅から病院へ向かう10分弱の間、あーちゃんは何度も何度も「このスカート素敵でしょ? いくらだと思う? ○×で980円!」と、繰り返した。

そしてワフウフも訂正を繰り返した。

ワフウフとなーにゃんは目配せを交わし合いながら、どんどん暗い気持ちになっていった。

これはもう、認知症検査を受けるまでもなく......。

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ワフウフ

アラフィフの主婦。昭和を引きずる夫、大学生の長男長女の四人家族。実母のアルツハイマー型認知症発覚をきっかけに、忘備録として2018年よりAmebaブログ「アルツフルデイズ」を開始。「介護日記」ジャンルで人気を博す。2019年一般の部でブログ・オブ・ザ・イヤー受賞。2020年に公式トップブロガーに認定される。実母の生活のフォローに姉とふたりで四苦八苦する毎日を、イラストと笑いと毒をほんのり混ぜながらブログに綴る。

※この記事は『アルツフルデイズ笑いと涙の認知症介護』(ワフウフ/フォレスト出版)からの抜粋です。
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