ピンピンコロリを目指して、鎌田實さんが毎日実践していること

雑誌『毎日が発見』で好評連載中の、医師・作家の鎌田實さん「もっともっとおもしろく生きようよ」から、今回は鎌田さんが「毎日実践していること」について語ります。

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「今年のウェアは緑色。スキー場のミドリムシ」

 
かなわなかった最後のスキー

10年ほど前、70歳のAさんが、諏訪中央病院緩和ケア病棟に入院してきました。すい臓がんが骨にも転移し、末期の状態でした。

彼は自分の命が長くないことを理解し、受け入れていました。そのうえで、一つだけやりたいことがある、と言いました。

「もう一度、スキーをしたい」

定年退職後、蓼科の自然が気に入って移り住んでいました。

そこでスキーを楽しみ、若い人たちとも親しくなったといいます。

「それなら、ぜひ、実現しましょう」

ぼくもスキー好き。スキーをする日を決めました。彼の仲間たちや病院の看護師らも、その日のために準備を始めました。もちろん、だれより心待ちにしていたのはAさんでしょう。

ところがその目前、がんが脊髄にも広がり、Aさんの足は動かなくなってしまったのです。断念せざるを得なくなりました。

仲間たちがスキー場の雪を雪だるまにして、彼の病室のベランダに置きました。Aさんは感謝してくれましたが、周りのぼくたちには後悔が残りました。

ぼくはこの経験から、限りがある人生を悔いなく送りたい、とあらためて思いました。

 
92歳になってもスキーができる健康づくり

ぼくは、今70歳。いつお迎えが来てもいいのですが、それまでは元気でいたいと思っています。つまり、コロリと逝くまでは、ピンピンしていたい、ということです。合言葉はPPK。そこで、次のような目標を立てました。

イラク戦争後、イラクの子どもたちの医療支援を続けてきましたが、80歳まで難民キャンプで診察できるような体力を維持したい。
 
85歳になっても大好きなジャズを聞きにライブハウスに行きたい。地下にあるライブハウスにも1人で降りていけるような足腰をもっていたい。
 
90歳になっても、紅テントの唐組(※劇団唐組。主宰は劇作家の唐十郎さん)の芝居を見たい。そして、92歳になっても、カッコよくスキーを続けていたい。何歳でもいい。スキーをしながら心筋梗塞でも起きて、死ぬんだったら本望です。「納得死」です。

最後まで自分らしく、好きなことを続けるには、元気に動き回れる体と心づくりが大切です。

 
運動とたんぱく質で「貯筋」

これらの夢を実現するために、毎日していることがあります。

一つは、運動とたんぱく質で「貯筋」をすること。

この連載でも紹介しましたが、ぼくは毎日、スクワットや鎌田式かかと落とし(※)をやっています。週2回はジムに通い、太ももの筋肉などを強化してきました。運動習慣は、"動ける体"ピンピンを維持するためには、重要な習慣です。


※鎌田式かかと落しの方法
1.背筋を伸ばして立つ。
2.両足のかかとを上げて3秒キープ。
3.かかとをストンと落とす。これを1日30回行う

関連記事:「人生100年時代。「鎌田式スクワット」「かかと落とし」で貯筋、骨活を続けよう/鎌田實」

 
筋肉を維持・増強するにはたんぱく質も必要です。

ぼくは肉が好きで、焼き肉やステーキをよく食べます。でも、毎日の食事で、肉だけでたんぱく質を摂ろうとすると、相当の量の肉を食べなければなりません。魚や卵、乳製品、大豆製品など、できるだけ多種類の食品から、たんぱく質を摂るようにしています。

おすすめは味付け卵。ゆで卵をウーロン茶と数滴のめんつゆに漬けただけのものです。これを冷蔵庫に入れておき、効率よく筋肉をつくるため運動後30分以内のゴールデンタイムなどに食べています。

高野豆腐もたんぱく質のかたまりです。血糖値やコレステロール、中性脂肪を下げるというレジスタントたんぱくが豊富に含まれています。煮物、鍋やみそ汁に入れてもいい。毎日一枚食べるようにしています。

ピンピンコロリを目指して、鎌田實さんが毎日実践していること
ピンピンコロリを目指して、鎌田實さんが毎日実践していること

たんぱく質豊富なおすすめメニュー「ウーロン茶漬けゆで卵」(右)と「高野豆腐の煮物」

 

ボストン大学の研究では、一日100gのたんぱく質を摂る人は、あまりたんぱく質を摂らない人に比べて、高血圧になるリスクが40%低いというデータが出ています。たんぱく質をたくさん摂ると脳梗塞が少なくなることもわかっています。

たんぱく質は筋肉だけでなく、骨や血管、臓器、ホルモンにも必要なものなので、積極的に摂りたいものです。

 
一日の始まりは、鎌田流野菜ジュース

認知能力が衰えないようにすること。そのために、慢性炎症を起こさないように気を付けています。慢性炎症は、老化に伴ってじわじわと進み、高血圧や動脈硬化、脳卒中、糖尿病、がん、認知症などを起こすといわれています。

野菜に含まれる色素は、抗酸化力があり、慢性炎症を防ぐと考えられています。厚生労働省は野菜を一日350g摂るように推奨していますが、野菜ジュースにすれば比較的簡単に摂ることができます。

ぼくは、毎朝の野菜ジュースに、牛乳とヨーグルト、ごま、それに小さじ一杯のえごま油を入れています。えごま油はオメガ3脂肪酸で、血液をサラサラにして、脳血管疾患や心筋梗塞などのリスクを減らしてくれます。

ちなみに、ぼくが使っているのは、宮城県で障害者の就労支援をしている社会福祉法人臥牛(がぎゅう)三敬会が販売している「角田(かくだ)の恵 えごま油」というもの。障害のある人たちがえごまを栽培し、製品化したものです。


ピンピンコロリを目指して、鎌田實さんが毎日実践していること 1904_p143_02.jpg毎朝の野菜ジュースに入れている「角田の恵 えごま油」
(100g 1,204円+税、問い合わせ 社会福祉法人 臥牛三敬会 虹の園電0224-63-1481)

 
後悔しない生き方を

スイスのツェルマットにスキーをしに行ったとき、ホテルでひとり夕食をとる日本人男性と出会いました。前年肝臓がんの手術をして、生きているうちにどうしても、ツェルマットに来たかったのだと言います。

朝起きてゴンドラで山頂まで登り、雄大なマッターホルンを眺めながら下まで滑り降りてくる。そんな悠々としたスキーを楽しんでいました。

同志に会ったような気がして、ぼくはうれしくなりました。 いつか死がやってきても、自分の人生は十分満足だったと言えるように、一日一日を自由に、おもしろく生きたいものですね。

 

<教えてくれた人>
鎌田 實(かまた・みのる)さん

1948 年生まれ。医師、作家、諏訪中央病院名誉院長。チェルノブイリ、イラクへの医療支援、東日本大震災被災地支援などに取り組んでいる。『だまされない』(KADOKAWA)など著書多数。

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「ぼくは67歳で筋トレを始めてから、人生が変わった!」と話し、ご自身を「スクワット伝道師」という鎌田實先生(71歳)の健康法を大公開。「スクワット」や「かかと落とし」など無理なくできる「筋トレ」の方法をはじめ、ゆで卵やジュースなどの「若返りごはん」レシピ、「心の若返り方」や、若々しい先生の「着こなしの極意」まで、盛りだくさん。保存版の一冊です!!

この記事は『毎日が発見』2019年4月号に掲載の情報です。

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