一日の始めは、すっきり目覚めて大好きなことをする
「この40年間、目覚まし時計を使わずに起きています。寝たいだけ寝て自然と目が覚める。毎朝、わくわくとした気分で、今日は何をしようかなと思って起きることが僕の元気の秘訣です」
そう話す鎌田實さんが、朝いちばんに行うのは執筆です。早朝4時30分~6時30分の間に起きて、コーヒーを入れた後、仕事でありライフワークでもある執筆に向かいます。
「子どもの頃から作家になりたいという夢がありましたから、現在、医師として、また作家としても活動していることに幸せを感じています。僕にとって書くことは喜び。文豪などは締め切りに遅れた、その言い訳がユニークだという逸話がありますが、僕は書くことが楽しくて仕方ないから、締め切りに遅れるなんて考えられません。朝、目覚めたばかりの時間は、クリエイティブな活動に最も向いています。真っ白なところから何かを書き出すなら朝ですね」
季節が冬なら、もう一つ、鎌田さんにとって大きな元気のもとがあります。それはスキーです。取材当日(1月末)も、7時30分には家を出て、近所のスキー場で3kmのコースを5本ノンストップで滑走してきたそうです。
「急斜面にもめげずにサーッと滑り降りていくと自分が風になったように感じます。時々、若い人に抜かされても気にしない。2年に1度は転倒して骨折しているから、周囲から『気を付けてください』とは言われるけれど、やめられないですね(笑)。山の上からノンストップで滑り降りていくときには無心になれるんです。思い切りリフレッシュして、そして近くの温泉に入り、汗を流して仕事モードに切り替えます」
朝に活動することと、運動をすることは医学的にも良いことが分かっています。ホルモンの働きが元気につながり、運動をすれば病気を防ぐホルモンが筋肉から分泌される、夜はスムーズに眠りにつけるなど、健康に良い循環が起こるのです。
「朝の8時くらいに、何はなくても一度べランダに出て太陽の光を浴びましょう。セロトニンという幸せホルモンが出て、やがて夜になるとそれは睡眠ホルモンに変わります。僕は一時期、眠りにくくなって睡眠薬を使っていたこともありますが、朝の活動を意識するようになってからは薬を使わなくなりました。喜びを感じたときに出るのは『ドーパミン』。成功体験によって出るドーパミンは、次も頑張ろうとの意欲を生みます。誰かのために何かをしようとしたときに出る『オキシトシン』も元気のもとです。
知っておきたい、「元気」を生み出すホルモンの種類
セロトニン
気持ちを安定させる。朝、太陽を浴びると分泌される。夜は睡眠ホルモンになる。
ドーパミンン
喜びや達成感があると分泌されるホルモン。やる気を引き起こす。一方、依存症とも関連。
オキシトシン
スキンシップをとったり、愛情や信頼を感じたときに分泌されるホルモン。幸福感が高まる。
テストステロン
筋肉から分泌される男性ホルモン。やる気、チャレンジ、リーダーシップにつながる。
マイオカイン
筋肉から分泌される、通称「若返りホルモン」。認知症など病気の予防と関連がある。
取材・文/三村路子 撮影/菅 朋香
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1948年6月28日東京都生まれ。東京医科歯科大学医学部を卒業後、長野県茅野市の諏訪中央病院に勤務し地域一体型の医療に携わる。2005年から同院名誉院長。イラクへの医療支援など社会貢献活動も広く行っている。