毎月12万円のパート収入でやりくりをし、「老前整理」としてのものを減らしながらシンプルに暮らす――。そんな日々を綴ったブログが人気となったショコラさんの著書『58歳から 日々を大切に小さく暮らす』(すばる舎)より、「慎ましくも工夫して楽しむ生活」のヒントを、連載形式でお届けします。
家具の配置は10 年以上同じ。元々ベッドは頭をベランダに寄せて、ソファもテレビの真正面に置いていましたが、家具を壁に寄せて使うことで、部屋の中央を広く開け、部屋も広く見えます。
少ないものでシンプルに暮らすための「老前整理」
インテリアに興味があり、好みは変わりながらも家具はずっと好きでした。
部屋も狭く、最小限の家具で暮らしているつもりだったのに、あったほうが便利だろうとダイニングセットにコーヒーテーブル、飾り棚、余分な椅子等、少しずつ増えていました。
数年前に出会った、「ミニマリスト」という言葉。調べてみると、本当に少ない家具や物で暮らしている人がいる......。
スッキリしているけれど、私にはムリだな。ソファもテレビも炊飯器も電子レンジもない生活など考えられない。毎日同じ服では楽しくないし、いつも同じ食器で食事はしたくない。
でも、それをきっかけに、部屋の整理をしようと思い立ちました。
物を持ちすぎていたとは思いませんでしたが、必要のないもの、好きではないものを持っていたくないと。
片づけ本を図書館から何冊か借りてきて。本の通りに真似するのではなく、残しておくもの・捨てるものは、あくまで自分の基準。
生前整理にはまだ早いけれど、「老前整理」です。
近い将来すぐにいなくなるとは思いませんが、何が起こるかわからない。私がいなくなった後、この部屋を片づけるのは息子たちです。迷惑はかけたくありません。
部屋の中や持っているものを見直し、少ないものでシンプルに暮らすことを心がけるようになりました。
大きな家具から始め、次は整理しやすい洋服類、靴やバッグ、食器や調理器具。少しずつ捨てながら好きなもの、必要なものだけを残し、今は持っているものをほぼ把握できるようになりました。
私が子どもや10代だった頃は、ものが増えることを、みな幸せに感じていた時代でした。
日本は高度成長期で、まだ決してものが豊かな時代ではありませんでした。初めてのテレビ、初めての冷蔵庫、初めての洗濯機(脱水はローラーで回していた)が家に来たときの驚きと喜び......。
家具や電化製品、服も靴も満足に持っていることは少なく、新しく買うこともめったにない。小学生の頃を思い出しても、元旦に家族みんなが服を新調できるのが楽しみだったほど。
今の若い人たちのように、生まれたときからものに不自由なく育った世代とは違い、ものを持つこと、増えることの幸せを知っている私たちの世代は、ものを減らすことになかなか踏み切れないことも多いはずです。
持っているだけで場所をとる、あまり使わないキッチン道具や食器、もう着ていない服や持たないバッグ、履かない靴......。そういうものの処分は比較的簡単ですが、過去からつながる今の自分をつくっているものたちの処分は難しい。
大切にしたい思い出のもの、好きな食器や雑貨、身につけると幸せになれる服やバッグに靴。歳をとるほど増えていくものです。でも、そんなふうに思えるものがあるのは、とても幸せなこと。
私も自分の写真や息子たちの写真、若い頃からの手紙類や好きな音楽のCDは、まだ手をつけられずにいます。もう少し歳をとって時間に余裕ができたら、これらも片づけようと思っています。
大事なのは、不要なものや好きでもないものと、一緒に暮らさないことではないでしょうか。
自分の基準をつくり、ものの処分をしていれば、自然に好きなものを大切にした、シンプルだけど豊かな暮らしになると思っています。
ひとり暮らしならなおのこと、飾りの何もないガラーンとした部屋ではきっと寂しくなってしまう。思い出のある、好きなものたちが目につくことで、寂しいという気持ちは起きません。
「自分で動かせない」重くて大きい家具は処分
老前整理を決め、まずは家具の処分から始めました。
元々大きな家具はありませんでしたが、今のうちに、なくても困らない家具、自分で動かせないような重い家具は処分してしまおうと思いました。歳をとるほど体力が落ち、力もなくなり、面倒だなと思う気持ちに拍車がかかるでしょう。
処分したのは、2人用ダイニングテーブルと椅子2脚、飾り棚、4段チェスト(ビューローの代わり)、大きな座椅子、クローゼットの中のスチールラック。
家具の配置を変え、部屋の模様替えを楽しんでいた頃が嘘のよう。これだけ捨てたので、ずいぶん部屋がスッキリしました。
粗大ゴミとして1階のエントランスまで運ぶのは、大変な作業でした。今のうちにやっておいてよかったと思っています。
部屋に残した家具は7つ。これから新しく増やしたり、買い換えたりすることはないと思います。できるかぎり、重くて大きいものは持たないように。ベッドもコンパクトサイズです。
ドアポケットが大きく、冷凍室が下にある使いやすい大きさの冷蔵庫。ヴェトナム土産のマグネットがアクセント。
無印良品の脚付マットレスはコンパクトで、圧迫感がなく部屋がスッキリ見えます。
自炊はするけれど、ひとり暮らしだし、買い物は1日おきにはするので、大きな冷蔵庫は必要ありません。スペースの都合で上に電子レンジを置きたいので、小さめの冷蔵庫を選んでいます。
4 年以上前、ヤフオクで8000 円ほどだった、中古のケイト・スペード。小さめですが大きい外ポケットあり。ハンドと斜めがけショルダーがついているのが便利。
そして、体力がなくなってくると同時に、持ち物の見直しもしました。一番はバッグです。若い頃のように重いブランドバッグを持つこともなくなり、バッグ選びの基準は「軽い」ことが最優先。
小さめバッグに入るよう、中身を整理し、財布やポーチも軽くて小さいことを基準に選んでいます。
通勤バッグの中身。お弁当を入れています。折りたたみ傘は天気次第で。小さめ水筒にはアイスコーヒー。細々したものはポーチにまとめることで、バッグの中でバラバラを防いでいます。
中がコンパクトにまとまる、がま口財布。小銭を分けて入れられて、便利です。
撮影/林ひろし
パート収入12万円。ショコラさんの慎ましくも楽しい暮らし。その他の記事リストはこちら!
「老前整理」として物を整理しつつ、「シンプルで豊かな暮らし」が詰まった一冊です。