薄いな~っと思ったら大間違い!「世間話」が効果を発揮する日本人の会話術

「食後にお皿をまとめる」「落し物を自分の物にしない」「見えないところで努力する」――。日本で長らく育ってきた方であればきっと普通のことだと感じるでしょう。でも、外国人からしてみると、実は想像できないほど不思議な行動だそうです。「幸せに生きるコツは日本で見つけた」という、来日30年を超えるアメリカ人女性が気付いたのは、この行動や考え方は世界に誇れるということ。外国人から見た、「日本人の本当のすごさ」についてお届けします。

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会話術から見えた日本人の優しさ

私は日本人の会話術について、長い間勘違いしていました。

もともと私は世間話が苦手なため、天候やテレビ番組、家庭の料理などについてひとしきり話し、本題になかなか入らない日本人流の会話を苦しく感じていたのです。

パーティーの席でも、政治やニュース、世界情勢について熱論を交わすことが好きな私にとって、表面的な世間話を長々している日本人どうしの会話を、ちょっと「浅い」と感じていました。

私にとって会話はチャレンジであり、これまでずっと、話術を使って"楽しい対立"をしてきました。意見が違っていたとしても自分の考え方を知ってもらい、相手の考え方を理解するための良いチャンス――。それが「会話」だという認識だったのです。

意見を交わし、お互いのアイデアや考え方を出し合ううちに発展し、より深くなることもあれば、意見がまったく一致しないときもあります。いずれにせよ、そうした会話に快感を覚えていました。会話に心地よさを求めるよりも、活気ある刺激を求めがちだったのです。たとえ意見が対立しても、そこにお互いの尊重があれば、「自分はこういう意見だけど、あなたは別の意見をもっているのね」と理解することで、またひとつ成長できるような気がしていました。

ですから、当たり障りのない心地よい話ばかりしている日本人どうしの会話は、どこかもの足りなかったのです。

自分の会話スタイルこそが、ほんとうのコミュニケーションだと思い込んでいましたが、大変な思いあがりであったと、あるできごとが気づかせてくれました。リクルートで働いていたときの同期会でのことです。

私たち同期は非常に仲がよく、それぞれ独立してからも定期的に集まって、近況報告をしながら食事を楽しんでいます。その日も、リクルートにいたときのことや、お互いの近況の話に花を咲かせていました。

じつはそのとき、私は大きな転機にあり、暗闇のなかをさまよっていました。幸せになれると思っていた結婚生活が、崩壊寸前だったのです。夫から離婚を宣告され、自分を否定してばかりいました。

国際結婚だったため、お互いの文化や習慣の違いを理解し、歩み寄ることが必要でしたが、その努力が足りませんでした。相手の欠点ばかりが目につき、本来ならいちばん大事にしなければならない子どもたちに対する愛情や将来の夢が、共有できなくなっていました。まさに、どん底です。

私は同期仲間との楽しい時間を台無しにしたくない、同僚たちに心配させたくないという思いから、必死で苦しみを隠していました。みんなも特に気づかなかったはずです。

ところが、「だんなさん、元気?」と元同僚の女性から聞かれ、私は一瞬かたまってしまいました。彼女にしてみれば、なにげなく聞いたのでしょう。重い空気が一気に流れ、みんなと目を合わせてしまいました。

いつもなら、「元気よ!」と明るく振る舞えるのに、このときばかりはカラ元気さえ出ません。

「だめかも......」

ぽつりとつぶやくと、それまで胸に溜め込んでいたものが一気にあふれ出し、そこでついに自分の事情を打ち明けたのです。

それでも、ようやく伝えられたのは「離婚かも......」という結論ぐらいで、心の奥底の暗い秘密の扉は、ロックがかかった古い倉庫の扉のように、押しても引いてもびくとも動きませんでした。

それ以上話すと感情があふれてしまいそうで、ずっと下を向いていたのですが、黙って聞いていたうちの一人が「じつは......」と漏らし、同じような深い苦しみを抱えていたことを話してくれたのです。

彼女の細い肩は震えはじめ、大きな涙がぽろぽろと落ちてきました。私たちは抱き合い、気が済むまでしばらく泣いていました。それからは彼女と何度か会って、お互いの近況を報告し合うことになりました。幸い彼女は家庭を無事に守ることができ、いまでは大切な家族に囲まれて幸せに暮らしています。

日本人の会話は、まるで水面が暖かく心地がいい海のようです。サーフィンをする人は、水面に浮かんで波が来るのを楽しみに待ちますが、日本人も会話の浅いところを楽しみながら、人生をスムーズに過ごしているように映ります。

水面にいるといつでも呼吸ができ、周りが見渡せるため比較的安全です。私はあえて会話の海のなかに潜って、水面にいては見えないものを見たい、深い何かを感じたいと思います。そこは息が苦しく、心地いいとはいえない環境ですが、刺激的で発見や気づきがあります。私はそういう会話や人との関係を望んできました。

でも、同期会での一件を経て、日本人の会話術をもっと大きくとらえるようになりました。日本人の会話術、コミュニケーション術は、人生をスムーズに進めるための知恵なのだと気づいたのです。

そして、日本人も水面に揺られているだけでなく、ほんとうに必要なときは、海の底まで深く潜り、本質的な会話で人間関係を深めようとすることも知りました。普段は水面の心地よさを楽しみ、ここぞというときは深く潜る。それが日本人のコミュニケーションスタイルなのですね。

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hokorinisitai_syoei.jpg39の「日本人の特長」がつづられた本書は、読むだけで何だかうれしくなります

 

ルース・マリー・ジャーマン

米国ノースカロライナ州生まれ、ハワイ州育ち。1988年にボストンのタフツ大学国際関係学部から(株)リクルートに入社し、以来30年間日本に滞在。2012年4月に(株)ジャーマン・インターナショナルを起業。日本企業と外国人の潜在顧客をつなげるため、経営戦略と営業・広告活動をサポートしている。2018年に日本企業のグローバル化トレーニングを行う「Train to Globalize」事業も立ち上げる。NHK教育テレビ「しごとの基礎英語」にてビジネスアドバイザーとして出演するなど、メディアでも活動中。

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『日本人がいつまでも誇りにしたい39のこと』

(ルース・マリー・ジャーマン/あさ出版)

見えないところで努力する日本人は、世界からかっこいいと思われている!?来日30年を超えるアメリカ人著者が、日本で見つけた「39の幸せに生きるコツ」。精神性や美意識、ビジネス論など、5つの観点から日本人をながめてみると、世界に誇れる気質がたくさん見えてくる。著者の体験談を交えて語られるエピソードは、まるで大好きな日本への愛情をつづったラブレター。きっと、日本人に生まれて良かったと感じられます!

※この記事は『日本人がいつまでも誇りにしたい39のこと』(ルース・マリー・ジャーマン/あさ出版)からの抜粋です。
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