いよいよ年末、今年も大掃除の時節がやってきました。新年を迎えるといっても、実は今日と地続きの明日になるだけ。ところが、私たちの意識は不思議なもので、「改まること」に対して心が動きます。
自分たちの身の回りを整えて、まっさらの状態で向き合うには? 今回は年末の大掃除で磨いておきたい場所について、やましたひでこさんにうかがいました。
見て見ないふりをしているところを磨くことで気持ちが変わっていきます
扉を開けると、すぐにでも閉めたくなるような場所はありませんか?
布をかけて、目隠しをしているような場所はありませんか?
「年末の大掃除では、ぜひ『見て見ないふりをしているところ』に着手してみてください」とやましたさん。その理由をうかがいました。
心に磨き上げることで気付くことがある
断捨離の思考や行動を日常に取り入れるようになり、やましたさんが生活する空間にはいまや必要最低限のものしかありません。
「大掃除や物を処分するようなこともなくなりましたが、それでもまだまだ空間を整える必要性を日々感じているんですよ」
そんなやましたさんが、もっとも重視しているのは「磨く」こと。
「雑巾で棚を拭いていると、壁の桟にうっすら積もったホコリの存在に気付きます。そのホコリを拭きながら目線を下に落とすと、床にスーっと黒い線のような汚れを見つける。拭いて、さらに磨き上げるうちにいままで見えなかった汚れがどんどん見えてくるんです。
汚れを拭き、磨き上げることで、まだまだ光らせて、甦らせることができるんだ! と希望のような気持ちがわきあがることもあるんですよ」
時間がとれる年末こそ拭く・磨く掃除を
拭く、磨くという行動は、いつもの片付けよりちょっと特別です。
「今日はがんばってみる!」などと、ちょっとした決意が必要かもしれません。まとまった時間がないと、なかなか着手しにくいかもしれませんね。ですから、年末の大掃除の時期が絶好のチャンスです。
「不要なものを取り除く『掃く・拭く』が〝お祓い〟なら、『磨く』には〝お清め〟のような作用があります。一心に磨き上げていくうちに作業に没頭し、頭の中がリフレッシュされ、気持ちが整っていくんです」
年末にまとまった時間がとれないなら、下に紹介する3カ所だけでもぜひ整えてみてください。
人間の体も家も同じ出すから必要なものが入ってくる
「『断捨離』の行法哲学を多くの方に知っていただくようになりましたが、いまだに誤解されていることがあります。断捨離は、ただ物を捨てることではないんですよ」
あらためて解説していただくと、「断」は決断の断。
取り入れる物や情報を選ぶことです。
「捨」は不要・不適・不快なものを手放すことを意味します。
そして、「離」は「断」と「捨」を繰り返すことで、自分にとって重要な物事に集中できる境地を意味しています。
「断捨離では、まず『出す』ことを重視します。出すことで、いまの自分に必要なものが入ってくると考える。どちらかというと、必要なものを拾い上げるために、手放すんです」
断捨離の考え方をより理解するために、わかりやすい例があります。それは「呼吸」という漢字です。
「呼吸の『呼』は吐き出すこと、『吸』は吸い込むこと。呼吸って、実は出すことが先なんです。吐き出さなきゃ、吸えない! 新しいフレッシュな空気を吸いたいんだったらまず吐き出さなきゃ! ということなんです」
家という空間も同じ。不要なものを出すと新しい物事が入ってきます。
「それは物に限らず、エネルギーやチャンスといったものも含みます。整った空間でイライラしなくなった私、前向きになった私、そんな新しい自分でもあるんですよ」
空間を美しく保つために物を最適量に絞り込むことは、空間を整えるだけでなく、自分を整えるためにも必要なことなのです。
息を吐くと自然に新しい空気が入ってくるように
家でも出入りする場所が大切です
玄関・トイレ・キッチンを整えて新しい年を心地よく迎えましょう
[トイレ]
捨離の基本はまず「出す」ことです。トイレは人間が不要な物を出すための場所ですから、ここだけはきれいに整えます。いつも以上に便器やタンクを磨き、収納棚の中も整理整頓。きれいになったら花を活けてもいいですね。
[玄関]
「出す」場所が終わったら「出入りする」場所である玄関を整えましょう。靴がたくさん並んでいたら、必要最小限に。玄関のたたきを掃いて、水拭きします。靴箱の中もチェック。必要かどうか? の視点で選別しましょう。
[キッチン]
最後は「入れる」です。キッチンや冷蔵庫は、日々の食事を司る場所、食事は人間の体に「入れる」物です。冷蔵庫が食べ物のゾンビ置き場になっていませんか? 不要なものは処分し、棚や外側もきれいに拭きましょう。
構成/峰岸美帆 文/斎藤真知子 イラスト/根津あやぼ