DVやハラスメント、性犯罪に娘のいじめ...「女性が巻き込まれやすいトラブル」は数多くあります。でも、そうした悩みを解決したくても、「誰かに相談したら逆に悪化するかも...」とどうしていいかわからない人も多いと言います。そこで、弁護士の上谷さくらさんと岸本学さんの著書『おとめ六法』(KADOKAWA)より、女性の味方になってくれる「法律」についてご紹介。ぜひ、ご自身やお子さんがトラブルの参考にしてください。
親権とは、未成年の子を育て、財産を管理し、法律行為を代理する権利をいいます。
具体的な親権の内容としては、次のようなものがあります。
財産管理権(包括的な財産の管理権)
・子どもの法律行為に対する同意権(民法第5条)
身上監護権
・居所指定権...親が子どもの居所を指定する権利(民法第821条)
・懲戒権...子どもに対して親が懲戒・しつけをする権利(民法第822条)
・職業許可権...子どもが職業を営むにあたって親がその職業を許可する権利(民法第823条)
・身分行為の代理権...子どもが身分法上の行為を行うにあたっての親の同意・代理権(民法第737条、第787条、第804条)
未成年の子どもは親の親権に従うことになり、その親権は父母が共同して行使することが原則です(民法第818条3項)。
権利だけでなく、社会的に未熟な子どもを保護して、子どもの精神的・肉体的な成長を図っていかなければならない親の義務という側面もあります。
日本では離婚する場合、父母のどちらか一方が親権者となります(単独親権)。
なお、欧米では離婚しても両親がともに親権を持つ「共同親権」が主流です。
話し合いで親権者を決めることができればいいですが、決められない場合は、調停や裁判で争うことになります。
親権者を決める際は、「親の事情」と「子どもの事情」を踏まえて総合的に判断します。
親の事情には監護能力、健康状態、経済力、居住環境、教育環境、子どもへの愛情、子育てを手伝ってくれる人の有無などがあります。
子どもの事情には、年齢、性別、兄弟姉妹関係、健康状態、環境の変化への対応性、本人の意向などがあります。
日本では、「母親優先の原則」「継続性の原則」の2つが重要視されます。
「子どもは母親が育てるのが望ましい」「現在の生活環境を変えないほうが子どもの利益になる」という考え方です。
親権者は、離婚届に記載します。
離婚時に定めた親権者を離婚の成立後に変更したいときは、家庭裁判所に調停を申し立てることが必要です。
家庭裁判所の関与なく、父母間の協議だけで親権者を変更することはできません。
一度親権者を提出すると変更は難しい
父母の合意だけで親権者を指定できるのは、協議離婚だけです。
どのかたちの離婚でも、いったん離婚届に親権者が記載されると、その後の変更は困難なケースが多いです。
【事例1】
自分に稼ぎがなくても親権は取れる?
【ANSWER】
経済力は基準の一つではありますが、それよりも愛情を持って子どもを監護できるのか、ということが重要です。離婚すれば配偶者から養育費が支払われます。ひとり親に対する経済的支援制度もあります。少しずつ経済力をつけながら子育てすることは十分可能です。経済力がない、ということだけで親権の適格性が否定されることはありません。
【事例2】
父親は親権が取れない?
【ANSWER】
「母親優先の原則」は、かなり強力であることは間違いありません。しかし、親権は、子どもの利益の観点から決められるものです。子育てにどれほど積極的に関与してきたか、現在の子どもとの関係性は良好か、仕事が忙しい時期や出張の際、子育てのサポート体制は十分かなどの事情が重要です。総合的に判断した結果、父親が親権を取れるケースはあります。
【あなたを守る法律】
民法 第819条 離婚、または認知の場合の親権者
1 父母が協議上の離婚をするときは、その協議で、その一方を親権者と定めなければならない。
2 裁判上の離婚の場合には、裁判所は、父母の一方を親権者と定める。
5 第1項、第3項、または前項の協議が調わないとき、または協議をすることができないときは、家庭裁判所は、父、または母の請求によって、協議に代わる審判をすることができる。
ほかにも書籍では、恋愛・くらし・しごと・結婚など6つの章だてで、女性に起こりうる様々なトラブルに「どう法的に対処すべきか」が解説されていますので、興味がある方はチェックしてみてくださいね。
六法やDV防止法、ストーカー規制法...。女性の一生に寄り添う大切な法律が、6章にわたって解説されています。