父の介護。介護者の私が楽になるために、兄と交わした取り決め

<この体験記を書いた人>
ペンネーム:あめゆじゅ
性別:女
年齢:54
プロフィール:昨年の秋に認知症でパーキンソン病の父(85歳)を呼び寄せ、親子三代で暮らしています。

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親の介護は、一人っ子の方がなんでも決められるし、割り切って考えられるので気が楽だと年上の方から聞いたことがあります。

一方、私は一つ違いの兄と自分の二人きょうだいです。

独り暮らしをしていた父の認知症の症状に気付いて、一緒に暮らすために呼び寄せたのは妹の私。もし、兄が父を引き取ることになったら、お世話をするのはきっと仕事をしていない兄のお嫁さんだったでしょう。

昨日できなかったことが今日できるのが子どもなら、昨日できていたことが今日できなくなるのがお年寄りです。赤ちゃんに戻っていくのですから、時にはシモの世話もあります。私は近くに住む姑の介護をしていたので、歩けていても漏らしたりすることがあるのを知っていました。それで、姑ならまだしも、舅のシモの世話をお嫁さんがするのは、あまりにも気の毒だと考えたのです。

 

私たちは、父とともに3人で、引っ越しを終えた日に取り決めをしました。父の年金を使って面倒をみること、それでも足りないようなら兄からも金銭的な援助をすること、私が楽になるためなら父の預金を下ろして使っても構わないこと、また、兄が長期の休みの時は兄の家で父を預かること。父が兄の家に行くときには、最寄り駅までの送り迎えをすることなど。

父は認知症を伴ったパーキンソン病で、その上ひどい頻尿ですから、はた目にはわからない苦労があります。日ごと認知症の症状も進んでいるので、兄としてはさぞ、会うたびに悪くなっているように見えたことでしょう。父と数日間過ごすだけでも、私の苦労を強く感じたそうです。

 

介護は一人で背負うには重いものです。転倒して救急車で運ばれたり、熱を出してわけがわからないことを言ったり、時には病院で思いもかけない病気が見つかって重大な判断を迫られたりします。

普段の生活では、いまだにトイレの場所が覚えられない、ひとりで着替えられない、入れ歯が入れられない、オシッコを漏らすことだってたびたびあります。その苦労がたとえ一部であっても、兄と共有できるだけで主たる介護者である私の気持ちは少し楽になります。

介護をするうえで、きょうだいの役割分担や取り決めは大事だと感じました。離れて暮らしていても、自分には何ができるか考え、連絡をくれるだけも嬉しいものです。きょうだいが応分に介護負担をしてくれれば、もう少し頑張ろうかなと思えてきます。

 

今、兄ができることは、年に数回、父を預かることだけです。兄に対して、もっと父を連れ出して欲しいとか、相撲を国技館で観させてあげて欲しいとか、欲を言い出したらきりがないのですが、仕事が忙しいなりにも父を預かってくれるだけで、私としては精神的にかなり救われています。父を私がみることで兄にはいつも感謝されていますが、感謝してくれる兄にも、私は感謝しています。

◇◇◇

介護をひとりで抱え込まないためにはどうしたらいい? 専門家からのアドバイス

周囲に要介護者(介護を受ける人)がいないと、介護は自分に関係ないと思いがちです。が、介護者(介護をする人)になる日は突然やってきます。その時に知識がないとどうすべきか分からず、精神的に追いつめられることに。そうならないために知っておくべきことを、介護者のサポートをしている阿久津美栄子さんに、伺いました。

「介護者になると自分の置かれた状況を冷静に見られなくなります。そこから抜け出すためには、介護環境を可視化することをおすすめします」と阿久津さん。では具体的にどのようにすればよいのでしょう?

  

介護に関わる人は1人ではありません

まずは要介護者の状況や介護に関わる人を記します。状況を図にしてまとめると見えてくることがあるのです。まずは「介護に関わる人」の相関図を書きましょう。下の図のように、要介護者と介護者の関係、仕事状況などを明確に記載します。 介護に関わる人.jpg

主介護者(主に介護にあたる人)は、介護をするのは自分1人と思いがちです。が、このように図にして可視化することで、実際は多くの人が関われることが分かります。近くに兄弟姉妹がいれば、時々、介護をお願いできます。介護経費をどの程度分担してもらえるかも見えてきます。

そして、下の図のようにさらに介護に関わる日常の作業全てを書き出し、その作業の担当者を割り振りましょう。主介護者の担当を少しでも減らすよう心掛けることが大切です。これにより家族全員が介護者である意識を共有できるようになります。ホームヘルパーなど専門職の力を借りることもできます。直接介護に関わらず任せきりになる方は、介護の費用を援助し、口は挟まないようにしましょう。

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最後に、主介護者は、自分と要介護者の1日のスケジュール表を作ってみましょう。デイサービスをお願いして専門職を味方にする、家族に任せる時間を作るなど、自分の時間を作れるよう、要介護者と自分のスケジュールを書いて検討しましょう。

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このように要介護者と主介護者、そして家族など取り巻く状況を可視化することで、客観的に状況を把握する助けになるのです。

<教えてくれた人>

阿久津美栄子(あくつ・みえこ)さん
1967年生まれ。NPO法人UPTREE代表。NPO法人介護者サポートネットワークセンターアラジン理事。子育て中に両親の遠距離介護を経験し、介護者の居場所を作る活動を行う。2016年、母子健康手帳の介護版ともいえる「介護者手帳」を制作。

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