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介護のために資産を失う「介護破産」が最近話題となっています。実は介護破産の原因には、単に資産の多寡だけでなく、介護に関する「情報量」も大きく関わってくるのです。
本書「介護破産」で、介護で将来破綻するような悲劇を防ぐための方法を学んでいきましょう。
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前の記事「50歳を過ぎると10%以上が親の介護に直面する/介護破産(25)」はこちら。
親を看取るまでにかかる介護費用は?
では、自分の親に介護が必要となったら、どれくらいの経済的負担が生じるのだろうか。公益財団法人生命保険文化センターの調べによると、介護にかかる費用の平均は毎月の介護保険の自己負担分を含めて7.9万円。そして、約3割が10万円以上となっている(図3 -2)。
なお、介護費用の負担は大部分が親、つまり被介護者たちの年金、資産、貯蓄でまかなわれているのが実態で、子どもから経済的援助を受けているケースは1割にとどまっている(図3 -3)。
しかし、子どもに経済的負担が生じるケースは少ないとしても、身の回りの世話をするなどの労力は必要となる。しかも、親元から離れた遠方に暮らしていれば、定期的に支援に赴くケースも珍しくなく、その時間や手間、金銭的負担を見過ごすことはできない。
では、老後に備えていくら貯蓄しておけばいいのだろうか。筆者の経験からいうと、高齢者一人につき、基本1000万円の貯金を有していればなんとかなる、というのが答えだ。
より詳細にみていこう。毎月の年金受給額によっても異なるが、急に脳梗塞などで倒れても、入院の初期段階では医療保険の自己負担分を含めて50~100万円の入院費を考えておく必要がある。
個室などに入院してしまえば、1か月の入院生活だけで50万円かかってしまうこともあるが、公立病院への入院や相部屋の利用などで、10~30万円に抑えられることも少なくない。医療にかける費用はよくよく考えておくべきだろう。その後に待ち受ける介護は、医療と異なり先がみえず長く続くからだ。蓄えを医療費に使い過ぎ、介護生活を迎える頃には、預貯金がなくなってしまった―、といった事態にならないよう気をつけたい。
次の記事「1000万円の貯金と毎月15万円の収入があれば介護生活がしのげる/介護破産(27)」はこちら。
淑徳大学総合福祉学部教授。1969年生まれ。社会福祉士、介護福祉士、ケアマネジャー。地域包括支援センターおよび民間居宅介護支援事業所への勤務経験がある。おもな著書に『在宅介護――「自分で選ぶ」視点から 』(岩波新書)、『孤独死のリアル』(講談社現代新書)、『介護入門 親の老後にいくらかかるか? 』(ちくま新書)など。
村田くみ(むらた・くみ)
ジャーナリスト。1969年生まれ。会社員を経て1995年毎日新聞社入社。「サンデー毎日」編集部所属。2011年よりフリーに。2016年1月一般社団法人介護離職防止対策促進機構(KABS)のアドバイザーに就任。おもな著書に『書き込み式! 親の入院・介護・亡くなった時に備えておく情報ノート』(翔泳社)、『おひとりさま介護』(河出書房新社)など。
(結城 康博、村田 くみ/ KADOKAWA)
長寿は「悪夢」なのか!? 介護によって始まる老後貧困の衝撃!
介護のために資産を失う「介護破産」が最近話題となっています。本書では現在介護生活を送っている人々の生の声をルポしつつ、介護をするにあたり知っておきたいお金のこと、法律面のことなどに言及。介護で将来破綻するような悲劇を防ぐための方法論を記した一冊です。