もし今、自分の親に介護が必要になったとしたら......。多くの人の頭には、「離職」の二文字がよぎるのではないでしょうか。
介護のために離職する人は、把握されているだけでも年間10万人といわれています。お世話になった親や愛する家族の面倒を、「自分で見たい」と思うのは自然なこと。そのために、仕事と介護をてんびんにかけ、やむなく介護を選択する人が増えているのです。
しかし、書籍『もし明日、親が倒れても仕事を辞めずにすむ方法』では、この思考に「待った」をかけています。すべての面倒を家族が見るのは負担が大きすぎますし、再就職できずに経済的に行き詰まると、いざというときにプロの手を借りることも難しくなります。何より、それが"介護される本人の幸せ"につながるかどうかは、誰にも分かりません。
公的制度や民間のサービスをうまく利用すれば、離職せずとも介護はできます。自分だけで抱え込まず、上手に任せて、頼ることが介護を成功させるカギだと著者はいいます。
安心して任せられる"終の住処"を見つけるコツ
介護のサポートを受けたいと思ったとき、中でも慎重になるのが"終の住処"選びでしょう。"悪徳老人ホーム"のニュースを聞くにつけ、不安が募りますよね。そこで本書から、よりよい施設を選ぶための5つのコツをご紹介しましょう。
1. すぐ入居できます、は疑おう
本人の様子も見ず「すぐ入居できる」とうたっている場合、何かあったときに即退去を迫られる可能性が高く、不誠実。事前に本人の状態を把握した上で受け入れてくれる施設がいいでしょう。
2. 家族が昼食を食べに行こう
食事は行政による指導監査が入らないため、一生懸命やっているかどうかの差が出やすいポイントだとか。できれば入居者さんの食事に同席し、味はもちろん、皆さんがちゃんと出された量を食べているかも観察を。
3. 職員の離職率を調べよう
厚労省「介護事業所・生活関連情報検索」サイトで、前年度の退職者数や各スタッフの経験年数などを確認。離職率が高すぎる職場では、現場で得たノウハウが蓄積されず、サービスの質も期待できない可能性があります。
4. 月額料金は総額を聞こう
パンフレットに記載されている料金は安くても、オプションなどが加わって最終的には膨れ上がってしまうことも。「自分の親と同じケース(要介護度、状態など)で、実際にどれくらいの請求書を発行しているか」を聞きましょう。
5. 看取りケアをやっているか、聞いてみよう
看取りケアとは、入居者が亡くなるときの最期のケア。デリケートな問題で、施設にとってはリスクにもなりますが、そのリスクを取ってでも入居者に寄り添う覚悟があるという一つの指標になります。
信頼できる施設探しは、家族ができる"孝行"のひとつ。しっかりと見極めたいものです。
文/さいとうあずみ
(川内潤/ポプラ社)
介護で大切なのは、上手に任せて、頼ること。そのためにも、決して会社を辞めないで! 公的制度の利用方法から、独りで抱え込まないためのマインドセットまで、長年現場に携わってきた介護のプロが、仕事と介護の両立法を伝授します。