介護しながら働くために。知っておきたい国や会社の制度と相談窓口

介護しながら働くために。知っておきたい国や会社の制度と相談窓口 pixta_27489140_S.jpgある日、家族に介護が必要になったとき、今まで勤めていた会社を「辞めるしかない」と勝手に思い込んでしまい「介護離職」をする人が増えています。しかし、会社を辞めると無職で無収入になってしまいます。その結果、親の年金だけで生活することに...。介護離職をせずに働きながら、介護と仕事を両立するする方法や、環境の整え方を一般社団法人介護離職防止対策促進機構代表理事の和氣美枝さんにお聞きしました。

 
前の記事「介護と仕事は両立できる。介護サービスをうまく利用して介護する人もされる人も幸せに(3)」はこちら。

 

介護しながら働くための国や会社の制度を活用

介護していることを会社に報告すると、昇給や昇格に影響するのではないかと考えて、中には介護していることを会社に言わない人もいるようです。「介護が始まると、勤務中でも介護関連の電話が頻繁にかかってきて、仕事に支障が出ることも...。欠勤や遅刻、早退が増え、不真面目だと誤解されることもあるようです。

会社に黙っていることで肉体的、精神的に余計な負担がかかり、介護離職に至るケースも考えられます」会社の理解がなければ、仕事と介護の両立は難しいといえます。介護のことを会社に伝えると、介護と仕事のバランスを取るための各種制度を利用できるのです。実際に利用できる制度は、勤務形態によって異なる場合があります。

 

介護しながら働くための国や会社の制度

介護休業
・要介護状態にある家族(※)1人につき通算93日まで3回を上限として取得できる。
・一定の要件を満たせば、介護休業給付金(月額)として「休業開始時賃金日額×支給日数(30日)×67%」が支給される。ただし介護休業中に賃金が支払われている場合は、その分、減額される場合がある。

介護休暇
・要介護状態にある家族(※)が1人なら年に5日まで、2人以上なら年に10日まで1日単位または半日単位で取得可能。

所定労働時間の短縮
・事業主は介護休業とは別に要介護状態にある家族(※)1人につき利用開始から3年間で2回以上((4)を除く)(1)短時間勤務、(2)フレックスタイム制、(3)時差出勤制度、(4)介護サービス費の助成のどれかの利用を可能にしなければならない。

※2週間以上にわたり常時介護を必要とする状態の配偶者、父母、配偶者の父母、祖父母、兄弟姉妹など

時間外労働の制限
・1カ月に24時間、1年に150時間を超える残業の制限を請求できる。1回の請求で1カ月以上1年以内の期間を指定でき、請求回数に制限はない。

所定外労働の制限
・残業の免除を請求できる。1回の請求で1カ月以上1年以内の期間を指定でき、請求回数に制限はない。

深夜業の制限
・午後10時から午前5時の深夜勤務の制限を請求できる。1回の請求で1カ月以上6カ月以内の期間を指定でき、請求回数に制限はない。
勤務先との労使協定によっては、雇用期間1年未満(介護休暇は雇用期間6カ月未満)の労働者など、制度を利用できない場合がある

出典:厚生労働省のホームページを基に作成

 

 
介護しながら働くために。知っておきたい国や会社の制度と相談窓口 1809p049_1.jpg介護者の会への参加を家族にすすめる

「家族が介護を1人で抱え込んでしまうと、その人も過労やストレスで体調を崩してしまいます。介護を担う家族に、介護支援団体などが主催する『介護者会』への参加をすすめましょう」と和氣さん。介護仲間と話すことでつらいのは自分だけではないと、勇気づけられることもあるようです。「介護保険の介護サービスや国の制度を利用すれば、仕事と介護の両立は可能です。日頃から家と『自分や配偶者に介護が必要になった場合』のことを話し合い、準備しておきましょう。そうすれば家族は、働きながらでも介護できるのです」。

 

介護者の味方になってくれる介護支援団体

●NPO法人介護者サポートネットワークセンター・アラジン(東京都)
電:03-5368-1955
【主催する介護者の会】娘サロン、息子サロン

 

●NPO法人てとりん(愛知県)
電:0568-41-8844
【主催する介護者の会】家族介護者のつどい

 

●男性介護者と支援者の全国ネットワーク(京都府)
電:075-466-3306
【主催する介護者の会】男性介護者のつどい

 

●ワーク&ケアバランス研究所(東京都)
電:03-6277-5456
【主催する介護者の会】働く介護者おひとり様、介護ミーティング

  

取材・文/松澤ゆかり イラスト/オオノマサフミ

 

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和氣美枝(わき・みえ)さん

一般社団法人介護離職防止対策促進機構代表理事。著書に『介護離職しない、させない』(毎日新聞出版)などがある。

この記事は『毎日が発見』2018年9月号に掲載の情報です。

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