ITエヴァンジェリスト(伝道者)で「世界最高齢プログラマー」と称される若宮正子さん。
88歳の今もなお、岸田首相主催のデジタル田園都市国家構想実現会議構成員として活躍し、精力的に活動しています。好奇心旺盛に日々を過ごす若宮さん初めての著書『昨日までと違う自分になる』(KADOKAWA)より、一部抜粋してご紹介します。
【前回】88歳で活躍する若宮正子さん。「たった1通のメールで世界中の注目の的に!」
コピペじゃない生き方をしよう
2022年にデンマークに行ってきて、いろいろ感じるところがありました。日本との違いについてです。
まず、日本では精神的な自立ができていない女性や若い人が結構多いのではと気になりました。「若いときは親に従い、盛りにしては夫に従い、老いては子に従う」ことが日本では古くから女子教育の規範とされてきました。
これが日本女性の自立を妨げてきました。
「自立している女は可愛げのない女」と言われてきましたが、今でもそういう発想は生きています。
それともう一つ。年を重ねるといろんなことを諦めてしまう人が多いですね。
人生100年時代と言われる今となっては、〝十で神童、十五で天才、二十過ぎれば只の人〞なんて、あんまり褒められたことじゃないと思うんですよね。
この頃は役職定年があったり、制度も変わってきているので、50代ぐらいで人生を諦めておられる方もいらっしゃいますが、そんなに若くして疲れてしまって、あとの何十年間ずっと老後みたいな人生を送られるとしたら、むしろ大器晩成型のほうがいいのかなと思いますね。
私なんかが幸せに生きていられてるのは、仲間やコミュニティがあるからだと思うんです。
いわゆる独居老人ですし、結婚もしていませんし。でもね、そんなふうだって、仲間がいるから孤独感なんて全然ない。
この頃の若い人たちはみんな、自分で自分にとらわれちゃっていないでしょうか。「ガラスの天井」ってよく言われますけど、みんな、ガラスの箱の中に自分から入っちゃったんじゃないかしら、というようなことをちょっと思います。
結局ね、非常識っていうものを排除しないほうがいいんです。私なんか、昔は変人って言われたのだけど、時代が変わったら今みたいに注目されたりしましてね。
常識・非常識なんていうものは、時代によってくるくるころころ変わるんだっていうことの証明です。
やっぱりコピペは駄目ね。コピペじゃない生き方をしたいです。
私も役所からの依頼で地域創生のお手伝いをしたりしていますけど、過疎地では、スタバやコンビニができないと地域創生じゃないんだって言う方が多いのです。それだったら、隣町のコピペじゃないの。人と違って当然なのに。私は「我が町は他の町にはない個性がある」、そういう町に惹かれますね。隣の町や隣の他人と比較しないこと。自分の成長が大事なんです。
いろいろな経験をすることって大事ですね。いっぱい失敗したり、みっともないことがあっていいんですよ。人生全て、自分の思い通りになっちゃって、ちゃんと志望校に入れて、希望した会社に入ってやりたい仕事がやれて、いいスペックのお嫁さんもらってとか。いいのかもわからないけれど、それって3Dじゃない、平面的な人生よね。
人生って思うようにいかないから、立体的な生き方になるんじゃないかしら。