2021年度も続く「エコカー減税&サポカー補助金」。車選びで気を付けたいのは経済性と安全性のどっち?

運転免許の自主返納が増える一方で、日常生活には車が不可欠という人がいるのも事実。そんな中、エコカー減税やサポカー補助金といった制度は、2021年4月以降も継続します。どういう基準で車を選んだらいいのか迷うところ。そこで今回は、日本自動車研究所 代表理事 研究所長の鎌田 実(かまた・みのる)先生に、「車選びで気を付けたい点」についてお聞きしました。

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車のアクセルとブレーキのペダル踏み間違い事故の危険性に注目が集まり、近年65歳以上の運転免許自主返納数が増えつつあります。

ただ、電車やバスを使えば不自由なく生活できるという人もいる一方で、車がないと日常生活に支障をきたすという人も。

いま新しい車を購入するとしたら、私たちが車を選ぶポイントとして、どんな点が挙げられるのでしょうか?

交通安全について長年研究してきた鎌田実先生は、車の経済性については「価値観や財力による部分が大きいため、人それぞれ異なります」とする一方で、安全性については「運転ミスなどに対するサポート機能が付いた車を選んでほしい」と話します。

いまの時代、どんな車が選択肢に挙がるのでしょうか。


エコカー減税を受けられる「次世代車」

燃料電池車(FCV)

[特徴]
○燃料となる水素は、地球上で最も豊富にある資源
○走行中、水しか排出しない

[課題]
●水素を補充する「水素ステーション」の数が限られている
●水素の製造・運搬時に二酸化炭素を排出しないよう、改善の余地がある

電気自動車(EV)

[特徴]
○走行中、二酸化炭素を排出しない
○災害時、移動できる蓄電池として使用できる

[課題]
●充電に時間が必要で、走行距離もガソリン車と比べると短い

プラグインハイブリッド車(PHV)

[特徴]
○家庭用電源で充電できるため、これまでのハイブリッド車とEVの長所を併せ持つ
○EVと比べて長距離走行しやすい

[課題]
●部品が増えるため、車体が重たくなりがち。小型車には現状向かない
●集合住宅住まいだと、充電設備の設置が難しい場合がある

天然ガス自動車

[特徴]
○ガソリン車と比べて、走行中の二酸化炭素排出量が少ない
○騒音が少なく、気温が低い場合でもエンジン始動がスムーズ

[課題]
●車両価格が高く、一般にはほとんど普及していない
●天然ガスを補給できる場所が限られる


まず経済性の点を見てみましょう。

気になるのは購入時の費用と燃費の2点です。

燃費のいい車の普及を進めるため、基準を満たすと「エコカー減税」という免税措置を受けられる制度を国が実施しています。

5月から基準がいままでより厳しくなるのですが、上の表のような環境によい「次世代車」と呼ばれる車種を購入した場合は、2回目の車検時までの自動車重量税が免税になります。

車種にもよりますが、他の免税措置や併用可能な補助金を合わせると、購入時に数十万円程度お得になるケースもあるようです。

ただし、「自宅に充電設備を設置できるかどうかなど、購入前に注意すべき点があります」と、鎌田先生。

燃費についても「いくら燃費がよくても、元の車両価格が高ければかなりの距離を走らないと差額を取り戻せません。結局ガソリン車を買っていた方が安かった、というケースも見られます」と釘を刺します。

鎌田先生が注意を呼びかけているのは、経済性よりもむしろ安全性についてです。


交通事故を防ぐ主な最新の安全技術

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衝突被害軽減ブレーキ
車に搭載されたレーダーやカメラによって前の車や歩行者を検知して、衝突の可能性がある場合には警報で運転手に知らせます。さらに、前の車や歩行者との距離が短くなって衝突の可能性が高まった場合には、自動でブレーキが作動して車が止まるという仕組みです。

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ペダル踏み間違い急発進抑制装置
車が停止、あるいは低速で走行しているとき、車の進行方向に車載のレーダーやカメラ、ソナーなどによって壁や他の車を検知している場合があります。その際にアクセルを踏み込んでも、エンジン出力を自動で抑えることによって急加速を防止する装置です。

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車線逸脱警報装置
車載のカメラによって道路上の車線を検知し、高速道路等走行時にハンドル操作を誤って車線からはみ出して走行しても、運転手に対して警報を鳴らすことで気付かせてくれます。運転手が意図的にウインカーを出して車線変更を行う場合には、警報は作動しません。


「重大事故につながりやすいペダル踏み間違いがよく注目されますが、高齢者の事故原因で多いのはハンドル操作ミスと一時停止をしないことによる出合い頭です」(鎌田先生)。

ペダル踏み間違いにだけ気を付ければ交通事故を防げるわけではありません。

そのために上の図のような、交通事故を防ぐ最新の安全技術が開発されています。

これらのような、特に高齢運転者向けの安全技術が搭載された車は「サポカーS(セーフティ・サポートカーS)」と呼ばれています。

ただし、と鎌田先生は続けます。

「このような安全技術は、最初に設計したときの条件に当てはまるときちんと作動してくれるのですが、ハンドルやペダルの操作によっては、作動しない場合も当然あります。どんな操作をしても作動してくれると過信すると大変な結果を招く可能性があるので、注意が必要です」

大事なのは自らの安全運転への意識を高めること。

「安全技術はそれをサポートしてくれる存在、と認識するのがいいと思います」と鎌田先生。

安全技術が充実しているものほど高価になります。

しかしサポカーSを購入する際に補助金を受けられる「サポカー補助金」の制度があり、4月以降も継続します(※)。

エコカー減税やサポカー補助金などの制度をうまく使えば、経済的かつ安全性の高い車を選ぶことができますね。

※2021年度中に補助金交付申請額が予算額を超えた場合は、申請受付終了の予定。

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取材・文/仁井慎治 イラスト/やまだやすこ

 

<教えてくれた人>

日本自動車研究所 代表理事 研究所長
鎌田 実(かまた・みのる)先生
1959年生まれ、神奈川県出身。87年、東京大学大学院工学系研究科舶用機械工学専攻博士課程修了。東京大学高齢社会総合研究機構機構長・教授などを経て、現職。研究テーマは「自動車交通の安全」など。

この記事は『毎日が発見』2021年5月号に掲載の情報です。

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