テレビの見過ぎで22分寿命が縮む!? 視聴時間と病気の関係

「年を取ると時間が早い」「写真の自分の顔に違和感がある」など、私たちの暮らしの中で感じるちょっとした不思議、実は科学で解明されているものも多いそうです。そこで、世界600万人が支持したニューヨークタイムズベストセラー『いきなりサイエンス 日常のその疑問、科学が「すぐに」解決します』(文響社)から厳選し、誰かに伝えたくなる「科学の雑学」を連載形式でお届けします。

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テレビを見すぎると、視聴1時間あたり22分寿命が縮む!?

オリンピック中継を1週間とおしで見る、新作テレビゲームを最初から最後までやりつづける、録画した連ドラを見たおす......。こんなふうにテレビのまえで長居をすると、とくに激しく動いたわけでもないのに、なんだかぐったりと疲れてしまうことはないだろうか?

これは、単なる気のせい?それともテレビを見つづけることで私たちの体にはなにか悪影響が及ぶのだろうか?

過去には、テレビの見すぎがものすごく体に悪かった時代もあった。信じられないかもしれないが、製造工程におけるミスのせいで、今日の安全基準の100倍(!)にも相当する有害なX線を発していたテレビもあったという。

はるかに技術が進歩した現代でも、テレビが目に悪いことに変わりはない。

通常の状況下では、人のまばたきの平均回数は、毎分ほぼ18回と言われている。ところがテレビなどの画面を見ると、この回数が激減してしまうのだ。結果的に「目が痛む」「疲れる」といった症状が出るのは言うまでもない。ただし、ありがたいのは、こういった症状が一時的なもので、すぐにおさまることだろう。

だが子どもの場合、話は別だ。屋内で過ごす時間が長い子ほど、近視になりやすい。遠くの景色や風景ではなく、近くのものばかりに目の焦点を合わせているからだ。科学者によれば、正しい目のピント調節をおこなえるかどうかには、太陽も重要な役割を果たしているそうなのだ。

また、テレビは運動不足の原因にもなりかねない。とある実験では、「テレビを見る時間が少ない人ほど、実際に運動はしていなくてもカロリー燃焼が高い」という結果が出ている。

そう、頭を使う趣味(たとえば読書やボードゲーム)を楽しんだり、あるいは、ただ家事をこなしたりするだけでも、テレビを漫然と見ているよりはるかにエネルギーが必要だし、燃焼されるカロリーが高くなる。

そして、「心身ともにくつろぎたい」と本気で考えているならベッドのまえにテレビを置くのはおすすめできない。実際、「質のよい睡眠がさまたげられ、睡眠負債(1日に必要な睡眠時間と実際の睡眠時間との差)がたまりつづける」という実験結果が報告されている。

しかも、研究者によれば、毎週20時間以上テレビを見る男性は、精子の数が44%も減る傾向にあるという!これはゆゆしき事態だ。

しかし、テレビが人体に及ぼす最大の影響は、なんといっても「寿命を短くしてしまう可能性があること」だろう。テレビを見る時間が増えるほど、糖尿病や心臓病のリスクが高まるという研究結果が発表されている。しかも、それだけではない。

驚くかもしれないが、数多くの研究で「テレビを見る時間が増えるほど、死ぬ確率が高くなる。しかもあらゆる死因が考えられる」という結果が出ているのだ。中には「テレビの前で1時間過ごすたびに、あなたの寿命は22分縮まっている」と結論づけた研究もある。

これらの研究では、飲酒量や喫煙習慣の有無、運動時間なども同時に調査していたが、そうした要素を考慮しても、テレビの視聴時間は死亡率上昇に影響があったという。

もちろん「テレビ視聴=死の原因」というわけではない。両者に相関関係があるというだけだ。視聴時間をほどほどに抑えれば、テレビとも健全な関係を築けることだろう。

ここで紹介した研究結果の根っこになるのは「体を動かさずにテレビばかり見ていると、体に悪い」という考えかただ。動く時間が減るし、テレビを見ながら食べるとだらだら食べてしまうので摂取カロリーが高くなる傾向がある。座る姿勢が血行を悪くするのも一因だろう。

だからこそ、テレビが大好きな人ほど、今日からもっと体をこまめに動かし、より長生きして、たくさんの番組を見られるようにしようじゃないか。

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テレビの見過ぎで22分寿命が縮む!? 視聴時間と病気の関係 033-syoei-ikinarisaiensu.jpg「感覚」「体」「心」など5つテーマで、37の疑問を科学的に解説。理系が苦手でも、クスッと笑えます

 

ミッチェル・モフィット/グレッグ・ブラウン

カナダ在住。さまざまな現象を科学的に解明するYoutubeの人気番組『Asap SCIENCE』の創設者。チャネル登録者数は800万人以上。2015年に配信された「このドレスの本当の色は?!」という、色覚の不思議を扱った動画は、ネットを中心に話題となって2000万回以上も再生された。

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※この記事は『いきなりサイエンス 日常のその疑問、科学が「すぐに」解決します』(ミッチェル・モフィット、グレッグ・ブラウン/文響社)からの抜粋です。
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