実は脳を守っていた!カキ氷を食べたら頭がキーンとする理由

「年を取ると時間が早い」「写真の自分の顔に違和感がある」など、私たちの暮らしの中で感じるちょっとした不思議、実は科学で解明されているものも多いそうです。そこで、世界600万人が支持したニューヨークタイムズベストセラー『いきなりサイエンス 日常のその疑問、科学が「すぐに」解決します』(文響社)から厳選し、誰かに伝えたくなる「科学の雑学」を連載形式でお届けします。

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カキ氷やアイスを食べると頭がキーンとするしくみ

うだるような暑い日、よく冷えた飲みものやカキ氷を口にしたとたん、キーンと響くあの頭痛にのけぞった経験は、誰にでもあると思う。

冷たいものを食べたときに感じる頭痛(ブレイン・フリーズ)は、せいぜい20秒程度だ。冷たいものが私たちの口蓋(口の中の上側の部分)に触れた瞬間に、この頭痛は発生する。しかし、ブレイン・フリーズは冷たいものを食べたときにだけ起きる特別な現象ではない。実は寒い場所にいるときにも起きるのだ。

ブレイン・フリーズが起こる理由は、最も細い血管である「毛細血管」が、熱の放出を抑えようとするからだ。冷たいものを食べるとまず収縮するのは口内の毛細血管だが、毛細血管の多くは、私たちの手足にある。毛細血管は収縮することによって身体からの熱の放散を抑え、命に関係のある重要な臓器(心臓やその他の内臓など)がある体の中心へと、優先的に血流を送りこんでいる。

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ものすごく寒い場所でテレビゲームをやったり、タイピングをしたりすると、指が寒さに慣れるまで少し時間がかかるはずだ。それは寒さで血流が滞っているせいである。口蓋に冷たい食べものが触れた瞬間も、これと同じことが起きている。

ただし、毛細血管の収縮が直接的に「キーン!」という頭痛を引き起こしているわけではない。脳が冷えないように、逆に身体が必死に血管を拡張して血流を増やそうとしていることで、頭痛が起こるのである。

脳は頭蓋骨の中におさまっている。そのため冷たいものを飲んだり食べたりすると、脳を冷やさないために血流の量が増加し、頭蓋骨内で圧力が強まる。これが頭痛の原因となるのだ。脳は人間の身体の中でも一番重要な臓器であるため、動脈の急激な拡張・収縮を起こすことで、身体はその大切な部分を保護しようとしているのである。

冷たい飲みものを飲みこんで冷たさの要因が取りのぞかれると、収縮していた口内の毛細血管が一気に開く。結果的に、より多くの血液が流れこむためにさらなる痛みを感じることもある。

ブレイン・フリーズを察知する神経は、こめかみ部分にもある。冷たいものが口蓋に触れて毛細血管が収縮した瞬間、そのサインを神経が受けとり、そこから脳に痛みの信号が送られるというわけだ。冷たいものを飲んだり食べたりしたとき、こめかみ部分に痛みを感じることが多いのはこのせいなのだ。

ブレイン・フリーズは一般的な「頭痛」の原因解明の手段としても研究が進められている。頭痛の研究においては、安全面と倫理面から考えて、被験者に意図的に頭痛や偏頭痛を起こさせることは難しい。だから、被験者には冷たい飲みものを飲ませて、ブレイン・フリーズを起こし、擬似的な頭痛として用いる。

ちなみに、一般的な頭痛薬の多くは血管収縮または血管拡張の効果を持つものが多い。これは、ブレイン・フリーズのしくみを応用して開発されたものだ。

あのキーンとくる頭痛も、われわれの日常に役立っているのである。

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ミッチェル・モフィット/グレッグ・ブラウン

カナダ在住。さまざまな現象を科学的に解明するYoutubeの人気番組『Asap SCIENCE』の創設者。チャネル登録者数は800万人以上。2015年に配信された「このドレスの本当の色は?!」という、色覚の不思議を扱った動画は、ネットを中心に話題となって2000万回以上も再生された。

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※この記事は『いきなりサイエンス 日常のその疑問、科学が「すぐに」解決します』(ミッチェル・モフィット、グレッグ・ブラウン/文響社)からの抜粋です。
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