「シンプルに秋を詠んだ句」を楽しみませんか?/井上弘美先生「俳句のじかん」

俳句の井上弘美先生と、月ごとのテーマに合わせて俳句から学んでゆく、「毎日が発見」本誌の人気連載「俳句のじかん」。10月は「シンプルに詠む」というテーマで2つの句をご紹介します。

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水中をさらに落ちゆく木の実かな 鈴木鷹夫

解説 | 秋も深まると、樫(かし)や椎(しい)、椋(むく)などの木が「木の実」を降らせます。秋晴れのもと、木の実を拾う子ども達に出会うと、懐かしく優しい気持ちになります。

この句は「水中」に「落ちゆく木の実」を詠んだ句で、事実のままです。しかし、「さらに」と副詞を使って、水の深さを表現することに成功。水面からは見えない「木の実」が、どこまでも落ちてゆく様子が見えます。
シンプルにして句意明瞭。俳句はこうありたいものです。

作者は1928年、東京生まれ。「門」創刊・主宰。俳人協会賞受賞。『脚註鈴木鷹夫集』よりの一句。2013年没。享年84。

桔梗(きちこう)の花に折目や湖(うみ)暮るる 岩淵喜代子

解説 | 桔梗は秋の七草の一つで、『万葉集』の時代から歌に詠まれています。また、根は漢方の薬としても用いられてきました。

この句は「桔梗」と「湖」を組み合わせた句で、暮れてゆく「湖」が作品世界に奥行きをもたらしています。桔梗の花はきっぱりとした形と鮮やかな紫色が印象的。風船のような蕾が割れて開くので「折目」がついているように思えるのです。「折目」と花の特徴を捉えたことで、句にめりはりがつきました。

作者は1936年、東京生まれ。「ににん」創刊・主宰。俳人協会評論賞、詩歌文学館賞などを受賞。『岩淵喜代子集』より。

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<教えてくれた人>
井上弘美(いのうえ・ひろみ)先生

1953 年、京都市生まれ。「汀」主宰。「泉」同人。俳人協会評議員。「朝日新聞」京都版俳壇選者。

この記事は『毎日が発見』2019年10月号に掲載の情報です。

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