梨から何を想像しますか?「発想を飛躍させる」俳句の魅力

俳句の井上弘美先生と、月ごとのテーマに合わせて俳句から学んでゆく、「毎日が発見」本誌の人気連載「俳句のじかん」。9月は「発想を飛躍させる」というテーマで2つの句をご紹介します。

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梨剝けば遥かを遊ぶ波の音 小檜山繁子

9月に入ると、彩り美しい果物が豊富に出回るようになります。桃、梨、柿、葡萄、林檎、これらは全て秋の季語です。
この句は「梨」を剥いている日常の風景です。でも、シャリシャリという心地よい音とともに、果汁がたっぷり溢れることから、「遥か」遠くの「波の音」を想像したのです。柔らかい感性によって、発想を飛躍させての一句。俳句は詩です。事実だけを詠むのではなく、柔軟な発想を生かしたいものです。
作者は1931年、旧樺太生まれ。「槌の会」代表。現代俳句大賞などを受賞。『坐臥流転』よりの一句。

ひよんの実を出雲の風に鳴らしけり 堀切克洋

秋は大気が澄み、水が澄み、爽やかそのもの。森に入って自然と親しみたいものです。
「ひよんの実」は別名「ひょんの笛」。イスノキの葉にできた虫瘤のことで、幼虫が出たあとを吹くと、ヒョウヒョウと鳴ります。この句は「ひよんの実」を鳴らしたというだけの内容ですが、「出雲の風に」と発想を飛躍。その効果で、「ひよんの実」が神話の国の風に響くような味わいが出たのです。
作者は1983年、福島県生まれ。「銀漢」会員。第一句集『尺蠖の道』で俳人協会新人賞受賞。論作ともに優れた気鋭の作家として期待されています。

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<教えてくれた人>
井上弘美(いのうえ・ひろみ)先生

1953 年、京都市生まれ。「汀」主宰。「泉」同人。俳人協会評議員。「朝日新聞」京都版俳壇選者。

この記事は『毎日が発見』2019年9月号に掲載の情報です。

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