25年前にイギリスから単身日本にやってきたポール・スミザーさんは、無農薬で庭づくりをしている注目のガーデナー。山梨県の八ヶ岳にある彼のナチュラルガーデンが人気を博しています。今回は、ポールさんの庭の植物たちの「元気の秘訣」をお聞きしました。
水辺に咲くアネモネ ワイルドスワン。
ポール・スミザーさんは、農薬も化成肥料も一切使わずに庭作りをします。それなのに、植物たちは自由奔放で、驚くほど元気。秘訣は環境作り、土にあるようです。どんな土をどんなふうに使っているのでしょう?
ナチュラルガーデンの7 月の景色。ポールさんが「僕はバーク堆肥で土を健康にする」というとおり、バーク堆肥が植物の成長を助け、花がのびのびと咲き誇っています
「植物の環境を整えるために僕が愛用しているのは、木の皮を砕いて発酵させた"バーク堆肥"のみ。一つだけです」
ポールさんにぶつけた土についての質問の答えは、とてもシンプルでした。
「もともとそこにある庭の土の上にバーク堆肥を敷く。そうすると、まず雑草防止になる。土に含まれている雑草の種が発芽しにくくなるんだ」
ガーデナーの悩みの種である雑草の手入れが楽になるとは、うれしい!
「バーク堆肥の栄養分は、時間をかけてゆっくりじっくり分解されて、土の中に細菌や微生物が増えていく。人の腸と一緒でね、植物も土にたくさん細菌がいた方が元気に育つんだ。菌は植物から炭素をもらい、植物は菌からミネラルや水分をもらって、お互いが支え合う...。土を耕してしまうとその関係が壊れてしまうから、ただ敷くだけがいい。乾燥した場所でも、湿気の多い場所でも、僕は同じようにしているよ」
植物の成長を助けてくれるバーク堆肥。さらには、土壌そのものにも恩恵をもたらしてくれるといいます。
庭を流れる小川。ポールさんに健康な土って、どんな土?と尋ねると「植物が喜ぶ細菌が、いっぱい含まれている」と教えてくれました
「例えば、大雨が降ったときには、土が流れるのを防いでくれる。いま温暖化による気候の変化で豪雨被害のニュースがたくさん聞こえてくるけれど、バーク堆肥が敷いてあれば、水分を程よく吸収してくれるから土は守られる。土は一度流れると元に戻らないからね、植物と菌のいい関係を保つことは、巡り巡って自然そのものを守ることにもつながると信じています。小さな庭の中の自然も同じ。バーク堆肥を使うのはそんな理由からです」
庭の中をさらさらと流れる小川。
地面に敷かれた木の皮が原料のバーク堆肥。土壌改良の助けにもなる
萌木の村 ナチュラルガーデン
一般公開されているポールさんの庭。春夏秋冬の景色を楽しめます。
住所:山梨県北杜市高根町清里3545
電話:0551-48-3522
時間:10:00~18:00(5~11月) 10:00~17:00(12~4月)
休み:なし
料金:入場無料
取材・文/飯田充代 撮影/木下大造 協力/萌木の村