25年前にイギリスから単身日本にやってきたポール・スミザーさんは、無農薬で庭づくりをしている注目のガーデナー。山梨県の八ヶ岳にある彼のナチュラルガーデンが人気を博しています。今回尋ねたのは「ガーデニングの楽しみは花をたくさん咲かせることだけ?」ということ。ポールさんの答えはノー。「葉の魅力にも気付いてほしいな」と話してくれました。
「植物を育てようとするとき、もし自分の家の庭やベランダの日当たりが良くなかったら、がっかりする人が多いかもしれないね。でも、植物が生きやすい環境はそれぞれ。そういう場所だからこそできる庭もある」
ポールさんが案内してくれたのは、八ヶ岳の庭の一部。木立に囲まれ、確かに1日中さんさんと日が降り注ぐ環境ではなさそうです。
2018年7月初旬の風景。木の足元の植物に程よい木漏れ日が当たるよう、周囲の樹木の数を抑えている。右下の赤い葉はアスチルベ・カラーフラッシュ。左上の若草色の葉は、アスチルベ・ピンク(ピンク色の花を付けている)。中央の鮮やかな緑の葉は、ギボウシの品種違い・長大銀葉(ちょうだいぎんば)。
「日陰は、マイナス要因ではなく個性。ある程度の日差しがあれば丈夫に育つたくましい葉ものがたくさんあるから使ってみて。一鉢あるだけで、小さなベランダもきっと見違えるよ」
なるほど、葉は赤、緑、黄緑、ふ入りと多彩。形も面状の大きなものがあるかと思えば、細長かったり、ぎざぎざの切れ込みが入っていたり...。個性的な色と形がリズミカルに隣り合って、花が少なくてもにぎやかです。
植物の成長を考えて株の間を空けて植えているので、地面がのぞいていますが、やがてすくすく育ち、景色はさらにこなれていくでしょう。
クリの葉の間からやさしい木漏れ日が差す
「日陰といってもいろんな段階がある。この場所は落葉樹の間から木漏れ日が差す木陰だね。建物などによって日差しが遮られて、日中の半分くらいしか日が当たらない場所は半日陰。植物がそのうちのどんな環境を好むのか、それを知ってから植えるものを選ぶといいね」
風が吹けば、葉がこすれる音が聞こえそうなリーフガーデン。これからの季節にぴったりです。
葉色も形も個性的!ポールさんが好む「日陰で育つ多年草」3選
アスチルベ
アスチルベの一品種・チョコレートショーグン。半日陰を好む。葉は名前の通りの色。初夏に房状の花を付ける。
ミスカンサス
日陰から日なたまで環境を選ばない。黄緑の葉色が景色を明るくしてくれる。全体の丸いシルエットも見所。
ギボウシ
日陰を好む。写真はふ入りだが、光沢のある葉、つや消しの葉など種類が多い。夏に房状の花を付ける。
萌木の村 ナチュラルガーデン
紹介している景色は、一般公開されているポールさんの庭の一つ。春夏秋冬の景色を楽しめます。
住所:山梨県北杜市高根町清里3545
電話:0551-48-3522
時間:10:00~18:00(5~11月)
10:00~17:00(12~4月)
休み:なし
料金:入場無料
取材・文/飯田充代 撮影/木下大造 協力/萌木の村