ベランダや庭での園芸作業では、できるだけ農薬を使わずに管理したいと思っている方も多いのではないでしょうか? 家庭にある身近なもので病害虫を対策できる方法や植物が上手に育つ環境について、元国営昭和記念公園の植物管理担当の井出Gさんが指南します。
自然に優しいエコ対策。
早春から始めるのがおすすめです
庭やベランダの植物の害虫や病気の被害は、家庭にある身近なものを使って軽減することができます。市販の薬品ほどの即効性は期待できませんが、本格的な春が来る前から対策をしておくと効果も高まります。
また、植物が丈夫に育つ環境作りも大切です。日当たりや風通しの良い場所で、過度な湿気がない土の状態が保たれるように整えましょう。
■ここがポイント! 病害虫予防に大切なこと
その1 風通しを良くする
病原菌や害虫は一般的には湿った状況を好みます。枝葉の混み合った状態を避けるようにして葉、小枝、枝などを摘み取ったり、切り透かしたりして風通しを良くします。
その2 枯れ葉を取り除く
樹木や草花の根元に積もった落ち葉や枯草の中で越冬した虫たちが活動を開始する前に、取り除き、病気を媒介する病害虫を駆除します。根元や株元もすっきりしてヨトウムシなどの害虫も見つけやすくなります。
その3 こまめな除草
そろそろ雑草が芽を出し始めます。雑草の繁殖は病害虫の発生原因です。大きく育つ前にこまめに取り除くことで病害虫の早期発見、早期対応ができ、被害を軽減することができます。
その4 水やりの注意
水やりの際は花や葉に直接水がかからないようにします。特に泥跳ねすると病気の原因となる葉裏の気孔を汚すことになるので注意しましょう。
その5 こまめに手入れ
水やりの際に葉の色、つや、斑点などのチェックを習慣にします。アブラムシやハダニ、カイガラムシなどが寄生していたら、初期ならゴム手袋をしてこそげ取るか、古い歯ブラシでゴミ袋にかき落として処理します。
■こんなもので! 植物の害虫駆除&病気対策
どれも最初は少し薄い濃度で始めてみるとよいでしょう。「牛乳」と「洗剤」を使うものは、においが気になることがあれば、散布してしばらくしたら水で洗い流します。
●牛乳(賞味期限切れも可)
対象:アブラムシ、アリ、ハダニ
使用方法:霧吹きに牛乳を入れ、害虫全体に吹きかけます。牛乳の油成分でコーティングし、虫を窒息死させます。油膜が乾燥し、効果が確認できた後で散布した場所の匂いを消すため、水で洗い流します。
●食器洗い洗剤、液体ハンドソープ
対象:すす病、うどんこ病、アブラムシ、アオムシ、キジラミ、ダニ類
使用方法:食器洗い洗剤の1,000倍の薄め液を作り、霧吹きで病気の部分や害虫に散布します。効果が確認できたら水で洗い流します。
●コーヒー(インスタントも可)
対象:アリ、ダニ、ナメクジ、カタツムリ、ヨトウムシなどの忌避効果、病原菌予防
使用方法:濃いめに入れたコーヒーを冷まし、霧吹きで害虫や葉に散布します。
※その他コーヒーかすの利用方法:コーヒーのかすはよく乾燥させてから土と混ぜると通気性の改善や有用微生物のすみやすい環境を作り、植物の生育に有効。効果は1~2週間ほどなので、必要に応じて追加して混ぜます。また、蚊の発生する季節に小皿の上で燻すと蚊が寄りつかなくなります。
●食用油
対象:アブラムシ、一部のカイガラムシ、ダニ類
使用方法:食用油30ml、食器洗い洗剤を適度に薄めた10mlの溶液とともに水1Lに入れてよく攪拌し、霧吹きで害虫に散布します。
●とうがらし
対象:アブラムシ、アオムシ、キジラミ、ホコリダニ、モザイク病、リンモン病
使用方法:乾燥とうがらし3~4本を焼酎1Lに1カ月ほど漬け込み、500倍に薄めて霧吹きで散布します。
●反射テープ
対象:アブラムシ、鳥害予防
使用方法:アブラムシはキラキラ光るものを嫌うので、被害に遭いそうな植物のそばに支柱を立てて反射テープを結んでおきます。樹木の場合は小枝に結びつけて風になびかせるようにします。収穫期を迎えた果樹も鳥害を防ぐために、同じように反射テープを結びつけておきます。CD等でも効果があります。
●米ぬか
対象:ヨトウムシ
使用方法:米ぬかを空の豆腐容器などに入れ、容器の表面が地表から出るように埋め、容器の中に入ったヨトウムシを捕殺します。雨の心配があるときは一回り大きな容器をかぶせておきます。
●発泡酒かビール(炭酸が抜けていても可)
対象:ナメクジ
使用方法:プラスチックコップ(中の見える透明なもの)に発泡酒を半分ほど入れ被害に遭いそうな植物の近くに置いておくとナメクジを捕獲できます。飲み逃げされないよう穴の開いたふたをしておくと万全です。
●にんにく
対象:アブラムシ、ハダニなど全ての害虫とうどんこ病などの殺菌剤として
使用方法:細かくすりおろしたにんにく1片ほどを1Lの水に加えて良く攪拌し、布で漉します。それを4~5倍に薄めて霧吹きで葉に散布します。
取材・文/石井美佐 イラスト/小川温子