中村橋之助さん×坂東新悟さん 新春浅草歌舞伎2019インタビュー

若手歌舞伎俳優たちが大役に挑む「新春浅草歌舞伎」。浅草のお正月の風物詩として愛され続ける公演も、39年目を迎えます。今回ご出演の坂東新悟さんと中村橋之助さんに、新春浅草歌舞伎ならではの楽しみと意気込みについて伺いました。

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「新春浅草歌舞伎」は若手俳優にとって聖地です

「新春浅草歌舞伎」は、若手歌舞伎俳優にとって登竜門ともいわれる公演です。普段の公演ではできないような大役を務められる貴重な勉強の場であり、いま第一線で活躍する俳優たちもこの公演を経験し、大きく飛躍してきました。

新悟 同世代の俳優たちはみんな新春浅草歌舞伎で大役を務めたいという思いを抱えていると思います。いわば若手俳優にとっては聖地のような場所だと思います。自分自身も先輩方の背中を見ながら、いつか自分も浅草で勉強したいと思っていました。

橋之助 僕は小さい頃から歌舞伎がとても好きだったのですが、それは母(※注:女優・タレントの三田寛子)に劇場に連れて行ってもらっていたおかげでもあるし、父(※注:八代目中村芝翫)や伯父(※注:九代目中村福助)や普段遊んでもらっている兄さんたちが舞台の上で見せる格好良さや普段とのギャップに憧れを抱いたのが大きいです。
新春浅草歌舞伎も毎年見に行っていて、(中村)勘九郎兄さんたちが、いまの僕と同じ世代のときに大役を演じているのを見て、カッコイイなぁ、ああいうふうになりたいなと思っていました。そんな公演に初めて出させていただいたのは子役としてでした。そして、3年前に初めて正式メンバーとして入れていただいて。

新悟 前回出演したときに、「次回は襲名(※注:2016年10月・11月、歌舞伎座において、父と弟<二男が三代目福之助、三男が四代目歌之助>)と共に四代目橋之助を襲名。)なので出られないけれど、橋之助になってまた戻って来ます」と言っていて。

橋之助 はい。今回こうして襲名を経て橋之助として戻ってこられたのがすごくうれしいです。

新悟 本当に戻ってきてくれてうれしい。しかもひと回りもふた回りも大きくなって戻ってきてくれて。

橋之助 前回も新悟兄さんとは踊りをさせていただいて、また今回も『芋掘長者』でご一緒させていただきます。

新悟 橋之助さんとは中村座でもずっと一緒にやってきたけれど、橋之助さんの成長は目に見えてすごいと思っていて。これは先輩としての目線ではなく、純粋に同じ俳優として。まぁ僕はそんなに自分を先輩とは思っていないですし、橋之助さんもそんなに僕を先輩だと思っていないかもしれないけれどね(笑)。

橋之助 いやいやいや、めっちゃ先輩だと思っていますよ。だから、そういうふうに言っていただけていま本当にうれしいです。取材だから、いいこと言ってくださっているのかもしれないですけど(笑)。

新悟 いやいやいや、そんなにとっさに取材用にうまいこと言えないよ(笑)。

橋之助 僕は大人のお役をたくさん演じさせていただいた最初が中村座なんです。中村座チームでは新悟兄さんが若手の中ではいちばん年上でその頃からずっとお世話になっています。ですから、若手公演のときに新悟兄さんがいてくれるのは僕にとってすごく心強いです。

 

 

仲間や後輩のためにもしっかり盛り上げていきたい

「新春浅草歌舞伎」のお楽しみの一つに、開幕前に出演俳優が交代で行う『お年玉〈年始ご挨拶〉』があります。俳優それぞれの個性や工夫が楽しい恒例の人気企画です。

新悟 僕は苦手で(笑)。いつもギリギリになってどうしようと思っていて。前回などは真面目なことだけ言って早々に引き上げました(笑)。

橋之助 僕は前回"あさくさ"の言葉を使ってあいうえお作文をしました。今回も何か仕込んでいくと思います。前回は、新悟兄さんのお年玉の回に僕も出たことありましたよね。

新悟 そうでしたそうでした! 本当に一人じゃ心もとなくて(笑)。助っ人をお願いして。

橋之助 その日、僕は新悟兄さんに頼まれていたことをすっかり忘れていつもの時間に行っちゃって。それで急いでこしらえしたら、部屋のスリッパのまま舞台に出ちゃって(笑)。

新悟 そうそう!(笑)。

橋之助 浅草公会堂は楽屋もワンフロアみたいな感じでほぼつながっているから、兄さんたちとの距離が近くなれるような気がします。そういった意味でも楽しみな公演なんです。子どもの頃はあそこで兄さんたちが遊んでくれていたので、思い出深い楽屋です。そこにいま自分がいて、そしてお役をさせていただくというのはすごくうれしいことです。

新悟 僕らの世代は、今回出ている以外にもたくさんいて、そのみんなが憧れているのが『新春浅草歌舞伎』の舞台です。だから僕らは出られない人たちの思いも背負ってやらないといけないし、後輩たちが僕らを見て浅草に出たいと思うようでなければいけないとも思っています。そのためにもしっかり盛り上げていかないと。

橋之助 そうですね。

 

◆中村橋之助の「この一役」
『芋掘長者(いもほりちょうじゃ)』友達 治六郎

(坂東)三津五郎のおじさまとうちの父がやっていた演目で、とても縁のあるお役です。今回、(坂東)巳之助(みのすけ)兄さんとさせていただけるというのは、すごくうれしいですね。しっかり勉強させていただきたいと思っています。中村橋之助さん×坂東新悟さん 新春浅草歌舞伎2019インタビュー 1901p077_01.jpg

 

◆坂東新悟の「この一役」
『寿曽我対面(ことぶきそがのたいめん)』大磯の虎

どの役も挑戦ですが、特にと言えば"大磯の虎"です。立女形(たておやま)の役なんですが、技術よりも存在感や風情が大事になってくるお役。いろいろ経験して中身が伴って初めてできるお役なので、いまの自分には大きな挑戦です。中村橋之助さん×坂東新悟さん 新春浅草歌舞伎2019インタビュー 1901p076_01.jpg

 


「新春浅草歌舞伎」
2019年1月2日(水)初日~26日(土)千穐楽

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第1部:『戻駕色相肩(もどりかごいろにあいかた)』『源平布引滝(げんぺいぬのびきのたき)』『義賢最期(よしかたさいご)』『芋掘長者(いもほりちょうじゃ)』
第2部:『寿曽我対面(ことぶきそがのたいめん)』『番町皿敷(ばんちょうさらやしき』
『乗合船惠方萬歳(のりあいぶねえほうまんざい)』

出演:尾上松也、中村歌昇、坂東巳之助、坂東新悟、中村種之助、中村隼人、中村橋之助/中村錦之助
会場:浅草公会堂 
住所:東京都台東区浅草1-38-6 
問い合わせ:チケットホン松竹0570-000-489 
料金:1等席:9,000円、2等席:6,000円、3等席:3,000円 
交通:交東京メトロ銀座線「浅草駅」1番・3番出口徒歩5分、都営浅草線「浅草駅」A4出口徒歩7分、東武鉄道「浅草駅」北口徒歩5分、つくばエクスプレス「浅草駅」A1出口徒歩3分


  

取材・文/鹿住恭子 撮影/吉原朱美

 

 

中村橋之助(なかむら・はしのすけ)

1995(平成7)年12月26日生まれ。八代目中村芝翫(しかん)の長男。2000年に中村国生(くにお)の名で初舞台。2016年に四代目橋之助を襲名。襲名を機に重要な役を演じる機会が増え、2017年からはさまざまな立役に挑戦している。

 

坂東新悟(ばんどう・しんご)

1990(平成2)年12月5日生まれ。坂東彌十郎(やじゅうろう)の長男。1995年に初代新悟を名乗り初舞台。女方を中心に時代物、世話物の古典から新作まで幅広い作品に真摯(しんし)に取り組んでいる。高音ながら聞きやすい美声が持ち味。

この記事は『毎日が発見』2019年1月号に掲載の情報です。

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