中村獅童さんインタビュー「劇場に足を運んだ思い出はいとおしき時間。僕もそんな思いをお届けできれば」

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2017年11月に『松竹大歌舞伎 秋季公演』でがんの闘病から復帰後、精力的に活動をしている中村獅童さん。3月には三谷幸喜さん作・演出の舞台『江戸は燃えているか』に勝海舟役で出演します。そんな中村さんに舞台に込めた思いのほか、心に残っている作品についてお聞きました。

 

劇場に足を運んだ思い出はいとおしき時間

僕もそんな思いをお届けできれば

「ご心配をおかけしましたが、すっかり元気になりました。大河ドラマ『新選組!』(04)以来の三谷作品で〝いままでの勝海舟と違って、ちょっとマヌケな感じです〟と三谷さんから言われています(笑)。三谷さんは当て書き(役者の個性に合わせて脚本家が登場人物を描くこと)をされるので〝やっぱり僕だとマヌケになるんだな〟と(笑)。見抜かれているんでしょうね」

そう話す獅童さんの笑顔に、三谷さんとの信頼関係が垣間見えます。今作では勝海舟と西郷隆盛の歴史的な会談の場面の裏側が描かれます。共演の松岡昌宏さんは勝海舟のニセモノを演じます。

「昔から、なぜか松岡くんによく間違えられるんです(笑)。今回は松岡くんが僕の替え玉の役をするということも面白いですよね。三谷さんの台本は本当に笑えるので、作品ができあがるのが楽しみです。病気でずっと休んでいて、改めて舞台に立たせていただけること、自分が好きなことが仕事になっていることのありがたさを痛感しました。お客様に楽しんでいただけるように誠心誠意、務めたいと思っています」

獅童さんは闘病中に、昔、映画館に見に行った作品を見直したそうです。
「『クレイマー、クレイマー』(1979年)、『蒲田行進曲』(1982年)、『スタンド・バイ・ミー』(1986年)など、自分が幼少期に、父や母と見たものばかりを無意識のうちに選んでいました。〝あのときはこんなことを話したな〟という、映画館に行ったときのいろいろな場面が全部思い出されて、自分の人生を振り返る感じでした。劇場に足を運んだからこその思い出がある。僕の作品を見に来てくださった方にもそんな思い出を作っていただけたらいいですね」

「また、バレエが女性のものだと見なされていた時代に少年がプロのバレエ・ダンサーを目指す映画『リトル・ダンサー』(2000年)は大泣きした作品です。女性がやることだとばかにされた主人公の少年時代は、小さい頃、日本舞踊の稽古の後、おしろいを落とし残したまま学校に行ってしまいばかにされた思い出など、自分の人生とオーバーラップしたんです。大人になったバレエ・ダンサーを演じたアダム・クーパーは、バレエ界に新しい風を吹き込みました。彼とは同世代ということもあり、すごく刺激を受けました。いろいろな作品を見たり、舞台で過ごした時間......さまざまな影響を受けて〝中村獅童〟は作られているんだと思います」

 

取材・文/落合佑桂里

中村獅童さんインタビュー「劇場に足を運んだ思い出はいとおしき時間。僕もそんな思いをお届けできれば」
中村獅童(なかむら・しどう)さん

1972年9月14日生まれ、東京都出身。祖父は昭和の名女形とうたわれた三世中村時蔵。8歳で歌舞伎座にて初舞台を踏み、二代目中村獅童襲名。歌舞伎役者として活動の他、映画、テレビで活躍。映画『ピンポン』では日本アカデミー賞など数々の新人賞を受賞(03年)。舞台『浪人街』『丹下左膳』でゴールデン・アロー賞演劇賞受賞(05年)。近作に『松竹大歌舞伎』(17年)、『新春歌舞伎公演』(18年)など。次出演作は舞台『江戸は燃えているか』(下記)。

中村獅童さんインタビュー「劇場に足を運んだ思い出はいとおしき時間。僕もそんな思いをお届けできれば」

PARCO Production

『江戸は燃えているか』


2018年3月3日(土)~26日(月)

新橋演舞場

作・演出:三谷幸喜
出演:中村獅童、松岡昌宏他
三谷幸喜さんが「難しい話は一切なし、心の底から笑える作品」を作るべく書き下ろした最新作。歴史を作った偉い人たちと庶民たちの、おかしくもいとおしい江戸無血開城を巡る群像喜劇。

 
この記事は『毎日が発見』2018年2月号に掲載の情報です。

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