優しさとタフさを兼ね備え、笑顔がとてもすてき鈴木亮平さん。大河ドラマ「西郷(せご)どん」の西郷隆盛役にどっぷりとつかったこの1年。役者として、人間として、「西郷どん」を演じきった"いま"の思いを語ってくれました。
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ますます役者の道に励んでいきたい
たくさんの実力派の俳優さんとがっぷり四つに組む演技をしてきた鈴木さんが、役者としても人間としても多くのことを学んだのは、島津斉彬(しまづ・なりあきら)公役の渡辺謙さんだといいます。
「謙さんは大河に何度も出演していらして。大きなチームを率いてきた人間の厚み、器の大きさだったり、人の心をつかんでいく、魅力的な人間性のある方で、勉強になりました。お芝居はもちろんですが、その人間力に憧れます。でも僕は謙さんになれないことは分かっていますし(笑)、僕らの仕事は自分の持っているものを出すしかないんですよね。
いい影響を受けて、少しでも盗ませていただきつつ(笑)、自分なりの方法で、謙さんはじめ上の世代の方たちを引き継ぎながらも、超えていかなくては、ということは感じています」。
先輩を尊敬しつつ、その思いを自分の中に落とし込み、さらに役者として、高みを目指す鈴木さんに、頼もしさを感じます。
「ドラマでは後輩がいっぱい出てきて、みんな"先生" "先生"って声をかけてきて"よかよか"と答える感じに慣れてきて(笑)、自分の年齢を越えた西郷さんを演じていると、普段の自分も老けていくんですよ。"よいしょ"っていすに座ったり(笑)、考え方もいい意味で"ま、いいか"になってくるんです。いろんなことが楽になるのかなと思いました。"ああ、自分はこんな感じに年を取っていくのかな"と自分の未来がちょっと見えたような、少し先の人生をつまみ食いさせていただいたような気がして、非常に面白かったです。西郷さんも政争に敗れて薩摩に戻ってきてからは、ぽわーんとしていて、温泉ばっかり入っているんですよ(笑)。人にどう見られているかとか、気にしなくなったんじゃないかなと思います。
僕はいま、一生懸命役者の道に励んでいます。年を取れば違う悩みもたくさん出てきて、体も大変になってくると思います。でも精神的には、人生の困難なことと向かい合う"策"をいっぱい持つようになって、変な自意識も抜けていく。そういう感じが、意外といいな、すてきだなと思いました。年を重ねることは不安じゃなくて、なるようになる。そういう気分に自分がなれたことがすごく良かったなと思います」。
俳優・鈴木亮平さんがどんなふうにすてきに年を重ねるのか、ずっと見続けていたいですね。ラストに向けて、大河ドラマ「西郷どん」の見どころは?
「大久保利通と袂(たもと)を分かっていくのも見どころですが、次の世代にどうバトンを渡していくかという話になっていきます。国の仕組みを壊して、新しい国を作ったけれども、その国を形成していくのは、次の世代だということを、特に西郷さんは意識していたと思います。当時の人たちが、どういうふうに次世代につないでいこうとしたのかという部分は、読者の方々に特に共感していただけるんじゃないかなと思います」。
大河ドラマ「西郷(せご)どん」
毎週日曜20:00 ~ 20:45 NHK 総合 他
新政府への不満が高まる中、大久保利通(瑛太)は"廃藩置県"を断行。西郷隆盛(鈴木亮平)は新政府への協力を決め東京へ出てきたが、し烈な権力争いに明け暮れる役人たちに嫌悪する。大久保とも意見が分かれ......。12/16(日)いよいよ最終回!
取材・文/落合佑桂里 撮影/吉原朱美 デザイン/藤原美夏子 ヘアメイク/SHUTARO スタイリスト/徳永貴士