東京から大阪まで地声が届く。深海のこだまを利用したクジラの会話術/身近な科学

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※この記事は『[図解]身近な科学 信じられない本当の話』(涌井貞美/KADOKAWA)からの抜粋です。

東京から大阪まで地声が届く。深海のこだまを利用したクジラの会話術/身近な科学 pixta_33637732_S.jpg前の記事「カラスにチンパンジー、魚まで!? 道具を使えるのは人間だけではない/身近な科学(3)」はこちら。

 

驚異の伝達距離を実現するSOFAR(ソファー)層。
クジラの声は500キロ先に届く

クジラの声が500キロ先にも届くことがわかりました。東京~大阪間に相当する距離を、クジラは生の声で会話できるのです。

東京から大阪まで地声が届く。深海のこだまを利用したクジラの会話術/身近な科学 p022.jpgこの驚異の伝達距離を可能にするのが、SOFAR層と呼ばれる水深約1000メートルを中心とする厚さ数百メートルの層です。

一般的に、水温が下がると分子の動きが鈍くなり、水中を伝わる音速は小さくなります。また、水圧が高くなると海水密度が上がり、音速は大きくなります。

実際の海では、深くなるにつれて太陽光が届かなくなるため温度は下がりますが、深さ1000メートル程度以上になると、太陽光の影響はなくなり、一定の温度に保たれます。しかし、深くなればなるほど水圧は上がります。深さ1000メートル程度の層で音速は最低になるのです。すると、音波はこの層から出ようとすると層の境界で反射されます。こうして、この層に入り込んだ音波は反射しながら遠くに伝わることができるのです。この層がSOFAR層です。

東京から大阪まで地声が届く。深海のこだまを利用したクジラの会話術/身近な科学 p023.jpg音波が反射されるしくみは、光が光ファイバーの中を反射しながら伝わるのと同じです。光も音波も「波」ですが、波は速さの遅いところから速いところに進もうとすると反射される性質があるのです。

 

次の記事「渡り鳥とイルカの共通点。脳を半分ずつ眠らせて24時間フル稼働!/身近な科学(5)」はこちら。

 

 

涌井貞美(わくい さだみ)

1952年、東京都生まれ。東京大学理学系研究科修士課程修了後、富士通に就職。その後、神奈川県立高等学校教員を経て、サイエンスライターとして独立。現在は書籍や雑誌の執筆を中心に活動している。著書は、『図解 身近な科学 信じられない本当の話』『雑学科学読本 身のまわりのすごい技術大百科』(以上KADOKAWA)、『Excelでわかるディープラーニング超入門』『ディープラーニングがわかる数学入門』(以上、技術評論社)、『「物理・化学」の法則・原理・公式がまとめてわかる事典』(ベレ出版)、『図解・ベイズ統計「超」入門』(SBクリエイティブ)など多数。

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『[図解]身近な科学 信じられない本当の話』

(涌井貞美/KADOKAWA)

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この記事は書籍『[図解]身近な科学 信じられない本当の話』からの抜粋です。

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