新幹線がアヒル顔なのは騒音対策!? 身のまわりのモノの技術(6)【連載】

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2012年3月、初代「のぞみ」の車両(300系と呼ばれている)が引退した。技術革新にともない、新幹線の変遷も急速だ。だが、最近の新幹線を見ると、皆アヒル顔をしている。

アヒルのようなマスクを採用した理由には、もちろんスピード対策もある。しかし、それ以上に重要なのがトンネル対策だ。「団子鼻」をした昔の新幹線「ひかり」が時速300キロでトンネルに突入すると、トンネルの出口で「ドーン」という爆発音がしてしまう。逃げ場を失った空気が車両の前で圧縮され、衝撃波となって出口側に伝わり吹き出すからだ。これをトンネル微気圧波というが、車両が通過するたびに爆発音がしては、沿線住民に迷惑である。この騒音問題を解決したのがアヒル顔なのである。

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トンネル微気圧波をなくすには、列車の先頭形状を鋭くし、空気の逃げ場を作ればいい。そこで登場したのがジェット機のようなスマートな先端を持つ、500系と名づけられた「のぞみ」。しかし、これはスマートであるがゆえに車幅が狭いという欠点があり、鉄道ファンには人気があったが事業者には不評だった。そこで登場したのが700系「のぞみ」である。サイドを削ってアヒルのくちばしのように平べったいデザインにすることで、トンネルに入ったときに空気がくちばしの脇から逃げる。こうして、トンネル微気圧波の発生を抑えることができるのだ。先頭が平べったくなったおかげで、列車の幅を広くとれ、狭さも解消した。

このようなアヒルのくちばし型をエアロストリームと呼ぶが、最新の新幹線車両はさらにそれを発展させたエアロ・ダブルウィングと呼ばれる形にリファインされている。新幹線が速くなるにつれ、「アヒルのくちばし」はさらに改良されていくのである。

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このように、新幹線車両は騒音対策を常に優先している。これは、人口が密集した日本の宿命といえよう。フランスのTGVなど、他国の高速鉄道との大きな違いの一つだ。

涌井 良幸(わくい よしゆき)
1950年、東京都生まれ。東京教育大学(現・筑波大学)数学科を卒業後、千葉県立高等学校の教職に就く。現在は高校の数学教諭を務める傍ら、コンピュータを活用した教育法や統計学の研究を行なっている。
涌井 貞美(わくい さだみ)

1952年、東京都生まれ。東京大学理学系研究科修士課程を修了後、 富士通に就職。その後、神奈川県立高等学校の教員を経て、サイエンスライターとして独立。現在は書籍や雑誌の執筆を中心に活動している。

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「雑学科学読本 身のまわりのモノの技術」
(涌井良幸 涌井貞美/KADOKAWA)
家電からハイテク機器、乗り物、さらには家庭用品まで、私たちが日頃よく使っているモノの技術に関する素朴な疑問を、図解とともにわかりやすく解説している「雑学科学読本」です。

この記事は書籍「雑学科学読本 身のまわりのモノの技術」(KADOKAWA)からの抜粋です。
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