秋風が心地よい季節、しみじみとした風情の秋の七草を育てて愛でて、と楽しんでみませんか? 万葉の時代から親しまれてきた花との付き合いを通して、深まる秋をしばし味わう機会にしてみてください。
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万葉集に由来を持つ秋の七草
春の七草は、粥にして食べ、無病息災を願う古くからの習わしですが、秋の七草も歴史は古く、万葉集で山上憶良(やまのうえのおくら)が詠んだ二首の歌が始まりと伝えられています。かつて、秋の花が咲く野原を「花野(はなの)」と呼び、散策しながら詩歌を詠んで楽しみました。秋の七草は食べることはなく、趣を愛でることが大切な目的だったようです。
秋の七草は開花期間が長く、初夏から秋が深まるまで花を楽しめるものが多いです。花が咲き終わるたびに、途中で切り戻すと何回か花が咲く植物もあるのも楽しみです。
秋の七草
【萩】
「秋に草冠」の字が表すように秋を代表する植物。野山に自生しているものも多く、十五夜に薄と供えるほか、秋のお彼岸に作る「おはぎ」の由来ともなっています。
【藤袴(ふじばかま)】
かつては自生していましたが、現在は環境省の準絶滅危惧種に指定されています。桜のような香りがあるので、古くは芳香剤や防虫剤として使われていました。
【桔梗(ききょう)】
その形が好まれ、家紋として使われることも多い花です。万葉集で詠まれた"朝顔の花"は桔梗を指すという説が有力。根は生薬として用いられます。
【女郎花(おみなえし)】
夏から次々に花が咲き続けます。乾燥させて生薬としても用いられてきました。小さな黄色い花を粟に見立て、粟花(あわばな)とも呼ばれます。
【撫子(なでしこ)】
清楚で奥ゆかしい撫子の花にたとえ、日本女性を大和撫子と称えるのでおなじみの花。かわいらしいピンクの花は古くから和歌にも詠まれてきました。
【薄(すすき)】
尾花(おばな)、茅(かや)とも呼ばれます。お月見には欠かせない植物。他の秋の七草が夏から咲くのに対し、薄は秋が本格化してから開花するため、秋の訪れの象徴。
【葛】
葛の根から作られる葛粉は、料理や和菓子の材料として用いられてきました。根を乾燥させて作る葛根湯は発汗や鎮痛作用がある漢方として今も使われています。
<ミニお出かけ情報>
国営昭和記念公園の「盆栽苑」
名品の盆栽だけでなく、草もの盆栽やミニ盆栽なども多数展示しています。
住所:東京都立川市緑町3173
電話:042-528-1751
時間:9:30~閉園30分前
料金(公園の入園料):大人450円、シルバー(65歳以上)210円 ※盆栽苑は入園無料。
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取材・文/石井美佐 取材協力/国営昭和記念公園・盆栽苑 チーフ 矢部優昌