見る、触れる、耳をすます...考えすぎずに感じたことを素直に詠む、初めて作る俳句「一時限目」

季語と情景などを17音に込める、日本独特の「俳句」。作ってみたいという人は多いでしょうが、その成り立ちや作り方やルールなど知らないことは多いですね。今回は、定期誌『毎日が発見』連載でおなじみの対馬康子さんに「初めて作る俳句」について教えてもらいました。

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【名句】

菜の花や月は東に日は西に 与謝蕪村


俳句の基本は五七五

俳句を始めたいけれど作り方が分からない...そんな初心者の編集部のGとKが生徒となり、対馬康子さんに俳句を習いました。

俳句の定型は「五七五」の17音で、それぞれのパーツを「上五・中七・下五」と呼びます。

文字数ではなく音で数え、促音「っ」と長音「ー」はそれぞれ1音、「にゃ」など「ャ・ュ・ョ」が付く拗音は2文字で1音と数えます。

「上の蕪村の句から、どのような景色を思い浮かべますか? 私は夕日の情景にいっぱいに咲く黄色い菜の花を想像します。地上に菜の花が広がり、月が昇って日が沈んでいくというとても大きな景です」と対馬さん。

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雅な世界を詠む連歌から江戸時代に庶民の生活の面白さに着眼した俳諧連歌が盛んになり、俳句はそこから最初の五七五だけが取り出されるようになったもの。

だから「身近なものを気軽に詠んでいい」と言います。

「〈古池や蛙(かわず)飛び込む水の音〉松尾芭蕉の有名なこの句は、古池に眼の前の蛙(かえる)が飛び込んだ瞬間を詠んだもの。和歌優美の世界で鳴く蛙ではなく、飛び込ませたことで新しい風流が生まれたのです。」

17音に、蕪村や芭蕉が見た世界が広がります。

次から対馬さんのレッスンスタートです。

春 この季節を詠む

【一時限目】何も考えずに春の様子を五七五で

俳句を作る第一歩は、目に見えるものを詠むことから始めましょう。

例えば「ヒヤシンス」でもよいし、名前が分からなければ「春の花」でもよいのです。

目に付いたものを指折り数えて五七五の17音にすることからスタートです。

難しく考え過ぎる必要はありません。

見る、触れる、匂う、味わう、耳をすます...そうしてまずは感じたことを素直に詠んでみてください。

GさんとKさんが詠んだのが下記の句です。

Gさんはコートが不要になる暖かさを、Kさんは初春の山歩きで見た雪解けの様子を詠みました。

講評と添削を読んでポイントをつかみ、ご自身でも一句詠んでみましょう。

【生徒の句】

春近し風の吐息にコート脱ぐ (G)

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雪解けに輝く道を歩きけり (K)

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講評と添削

「風の吐息」はしゃれた表現ですね。

ここに力を入れていることが伝わります。

しかし「春近し」「コート」は、いずれも冬の季語。

「春が近い」ということは、季節はまだ冬ですね。

また、季語が2つ入るのは季重なりといって、絶対にダメではありませんが、初心者にはおすすめしません。

「雪解けに~」は「輝く道を」に、作者の前向きな気持ちや春が本格的に来る明るさが出ています。

「~に」「~を」が説明的なので、「雪解水」とすると輝きがはっきりしますね。

「歩きゆく尾根の輝く雪解水」なら、山の景も伝えられます。

取材・文/岸上佳緒里 イラスト/山村真代 撮影/松本順子

 

対馬康子(つしま・やすこ)先生

1953年香川県高松市生まれ。73年中島斌雄主宰「麦」入会、90年有馬朗人主宰「天為」創刊に参画。「麦」会長、「天為」最高顧問、現代俳句協会副会長。荒川区国際交流協会理事長。

この記事は『毎日が発見』2023年3月号に掲載の情報です。

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