仕事や家庭で、自分の言いたいことがうまく伝えられない。それは、「正しい伝え方」ができていないからかもしれません。そんな悩みが解決できるテクニックがまとめられた書籍『新装版「分かりやすい表現」の技術 意図を正しく伝えるための16のルール』(藤沢浩治/文響社)から、「正しく伝わる表現方法」を一部抜粋してご紹介します。
改札口のとまどい
東京のJRの駅で見かけた光景です。
ある駅の自動改札機のところで、地方から上京されたと思われる老婦人が駅職員に叱られていました。
「なんでも入れちゃ、困るよ~」と職員が言っています。
どうやら、その老婦人が自動改札機に入れてはいけない切符もいっしょに入れたため、機械が異常作動したらしいのです。
老婦人は「そんなこと言われたって、初めてだもの、分からないわよ」とぼやいていました。
そもそも、改札口に差込口があれば、どんな切符でも入れてしまうのが人情でしょう。
まして日本中から人が集まる首都圏の駅に設置する以上、行き届いた配慮がなくてはなりません。
その対策が不十分なことを棚に上げて、間違ってしまう人を責めるのは、親切心が足りないと言わざるをえません。
親切心あるいはサービス精神は、テクニックの問題ではなく、心構えの問題です。
「分かりやすい表現」のテクニックを早く手に入れたい読者にとっては、心構えや精神論などは読み飛ばしたいところでしょう。
しかし親切心は、すべてのテクニックの土台です。
この「親切心の欠如」という犯人はいたるところに出没しています。
クイズのようですが、例3―1の違反例と改善例とは、どこが違うのでしょう?
改善例では、「例―8」が何ページにあるかを明示しています。
見るべきものがその見開きページにないのなら、必ずその所在ページを示す。
それが読者に対する親切です。
親切な一覧表になっているか
私は秋葉原の電気街をうろつくのが好きで、雑誌などで新製品情報をみかけるとすぐに足を運んでしまいます。
ところが評判になっている新製品などの場合、まだ発売前で、しかもメーカー発行のカタログもお店にないことがよくあります。
こんなとき、お客様からの質問攻めを解消するためでしょうか、よく、次の例3―2(違反例)のような貼り紙を見かけます。
これが、実に分かりにくいのです。
ところが、親切でセンスのよいお店などでは、製品の価格と機能の関係を知りたいお客様に対し、改善例のようなビラを貼っています。
どちらが分かりやすいかは明らかですね。
例3―3は表を見やすくするための手法です。
住宅売買のための情報誌などでもおなじみだと思いますが、雑誌に限らず広く採用されています。
これらの工夫が、情報の受け手に対する親切で、こうした配慮がどれだけできているかが、分かりやすいかどうかの、決め手の一つになります。
分かりやすい表現のルール「おもてなしの心を持て。」
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ベストセラーの新装版。分かりにくい表現16の原因と解決方法を全4章で紹介しています