フランスの名門マルセイユで不動の地位を確立し、サッカーワールドカップロシア大会での活躍が期待されるサッカー選手、酒井宏樹。しかし彼は「弱気」で「人見知り」という性格の持ち主だった...。
サッカー選手に不向きなその性格をいかにして克服してきたのか? 本書『リセットする力「自然と心が強くなる」考え方46』で、その具体的な方法を探っていきましょう。
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自然と信頼が構築されていく伝え方
柏レイソル時代の僕は、味方に自分の考えや意見を伝える作業をほとんどしていませんでした。20歳そこそこの僕に対し、みんながアドバイスをしてくれていましたし、日本人同士なら生まれ育った環境が違ったとしても、感覚でわかり合える部分があったことも事実です。
僕がヨーロッパに来て、もっとも難しいと感じたのがコミュニケーションです。外国人とのコミュニケーションは、国の文化そのものが違うので考えていることを言葉にしてすり合わせていかなくてはいけません。だから僕は、ハノーファー移籍後から自分の言いたいことはすべて伝えるようにしています。
なかには感情を露(あらわ)にして強い口調で言ってやっと伝わる選手もいますが、僕は感情を前面に出すタイプではないから、何か伝えたいことがあるときは、まず相手のシチュエーションを褒めることを意識しています。そのうえで「たまにはこういうことをやってくれたら僕は嬉しい」と自分の意見を伝えています。
相手を否定することから入るのではなく、その人の意見をとにかく尊重する。それは、信頼関係の土壌を耕す行為と言えます。これを積み重ねていくと、自分が普段からきちんとした練習態度をとっているだけで、何かあったときに相手も聞く耳を持ってくれるようになります。つまり、自然とお互いの信頼関係が構築されていくのです。
大切なのは、日々の自分の振る舞いがブレていないか、そして波がないか。ちゃんとした態度で練習をしていれば、その姿はみんなが見てくれています。プラスアルファとして、自分の言葉にどれだけの説得力があるかが問われてきます。逆にそれさえあれば、むしろペラペラと必要以上のことをしゃべる必要もありません。
「お互いの成功のために」という基本を忘れない
これはサッカーに限らず、様々な世界にも当てはまるのではないでしょうか。
たとえば、会社で普段から仕事をサボり気味の人は、周囲からの信頼も得られていないと思います。そんな人から一方的に物事を頼まれたら、受けた側は「自分はサボっているのに、なんで私に頼むんですか!?」と反論したくなるのは当然だと思います。なぜなら、そこに説得力はありませんから。
一方で、いつも一生懸命に仕事をしている人から意見を述べられたり、頼まれごとをされたらどう感じますか? その人の意見を聞こう、その人の期待に応えてあげようと考えるのが人間の本質だと思います。
信頼関係さえ築けていれば、アドレナリン全開の試合中に、多少強い口調で伝えても仲間は絶対に聞いてくれます。しかも、仲間であればそれを僕が怒っているとは認識せず、お互いの成功のために本音でぶつかっていると感じてくれるため、相手もちゃんと理解してくれるのです。そこでは「お互いがパニックにならないように、いま修正しておこう」と発言するときもあれば、問題が発生する前にあらかじめ「いまのうちに修正すれば絶対にうまくいくから、チャレンジしてみないか?」と伝えるときもあります。普段から最低限やることをやって、信頼関係をつくり、それでお互いに歩み寄る。これが僕が実践している伝え方の技術です。
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撮影/千葉 格
酒井 宏樹(さかい ひろき)
1990年4月12日、長野県生まれ。千葉県柏市で育つ。柏レイソルU-15、U-18を経て2009年にトップチームへ昇格。2010年にJリーグデビュー。2011年にはチームの主力として活躍し、チームのJ1優勝とともに、ベストイレブン、ベストヤングプレーヤー賞を受賞。同年10月にはA代表に初選出される。日本での活躍が評価され2012年にドイツ・ブンデスリーガのハノーファー96へ完全移籍。主力として活躍した後、2016年6月にフランスの名門オリンピック・マルセイユへ完全移籍。マルセイユ移籍後も確固たる地位を築き、不動の右サイドバックとして活躍。日本代表でも欠かせない存在として、2018年ロシア・ワールドカップでの活躍が期待されている。
『リセットする力「自然と心が強くなる」考え方46』
(酒井 宏樹/KADOKAWA)
「日本人は活躍できない」という前評判を覆し、フランスの名門マルセイユで不動の地位を確立し、世界の注目を集めるサッカー選手となった酒井宏樹。彼はいかにして「自信のなさ」と「メンタルの弱さ」を克服し、心を強くしていったのか。自然と心が強くなる具体的な方法をこれまでのエピソードをとおして初公開!