「刺し子」をご存じですか? 刺し子は、布が貴重だった時代に、布を重ねて強度をつけ、保温性を高めるために考えられた技法です。ただやみくもに刺すのではなく、花や波などの美しい文様を刺し、布に品格を与えました。また、傷んだ布の補強にも用いられ、貴重な布を大切に扱ってきたのです。そこで今回、手芸作家の堀川 波さんに、布に美しい文様を生み出す「刺し子」の基本について教えていただきました。
図案を布に写して、線の通りに並ぬいでぬってみてください。自然に美しい文様になります。写真の刺し子は参考作品。文様の名は「柿の花」です。
刺し子の基本
【用意するもの】
布(もめん)
刺し子用の点が描かれているものが使いやすいです。
刺し子針
太口の糸を使用するので太めの針で。
手芸用ネットで点を付ける
点が描かれた布がない場合、手芸用のネットを使うと簡単に点が打てます。
水性チャコペン
消せるボールペンで代用でき、使用する場合はアイロンを当てると点や線が消えます。
刺し子糸
刺し子用として売られている糸のほか、太口のもめん糸が使用できます。
キルト芯
片面接着のものを使用します。接着剤が付いているので、寸法通り切って貼り合わせます。
【図案を写す】
点が描かれた布に図案を見ながら、線を引いていきます。点の間隔が狭いと小さな柄に、広いと大きな柄になります。
●基本の刺し方
糸を針に通す
並ぬいを長く続けるので、50cmぐらい糸を切って針に通し、1本どりで。
並ぬい
図案の点の位置を上下に針を刺してまっすぐぬう。布が縮んだようになるので、途中で糸を伸ばす。
※裏が隠れる場合は、玉結びを作ってふつうにぬう。ふきんや鍋つかみのように、裏も見せる場合は、下記参照。
ぬい始め(裏も見せる場合)
5目ほど先から3cmぐらい糸端を残してぬい始めの位置までぬい、針目を少しずらしてぬい始める。
ぬい終わり
ぬい始めと同様に、針目を少しずらして5目ほどぬって糸を切る。仕上げに飛び出た糸を切る。
糸をつなぐ
5目ほど手前から重ねるようにぬっていく。
糸の始末
糸端を切って飛び出した糸をきれいにする。
撮影/原 務 トレース/ウエイド手芸部