「何かやってみたい」「時間に余裕がでてきた」...。
そんな風に思ったら、何かをはじめるチャンスです。
学ぶことに、「いまさら」や「年だから」はありません。
2人の学び直しの達人に、"大人のための学び直し術"を伺いました。
今回は、世界最高齢プログラマー・若宮正子さんの学び術をご紹介します。
我流で学んだパソコンが世界とのつながりに!
82歳のときに作ったiPhone向けのひな人形位置当てゲーム「hinadan(ヒナダン)」が米国のマイクロソフト社やアップル社の目にとまり、一躍「時の人」になった若宮正子さん。
国際的な会議に招かれたり、政府の「人生100年時代構想会議」の最年長有識者メンバーに選ばれるなど、広く活躍しています。
「80 歳からがいちばん面白い」と話す若宮さん。
その原動力は、どこにあるのでしょう?
「パソコンをはじめたのは、定年間近の58歳のとき。定年後は、母を自宅で介護することが決まっていたので、なるべく自宅にいなければいけない。でもパソコンがあれば、家の中に居ながらさまざまな人と交流できると聞いて、興味を持ったんです」。
当時は、周囲にパソコンをやっている人はおらず、全てが手探りだったそうです。
「パソコンを使えるように準備して、ネットというものに接続する。それだけでも本当に大変でした。でも、パソコンが使えるようになって探してみたら、ネット上に老人クラブみたいなものがあったのですぐ入会。それが、いまは副会長を務める〝メロウ倶楽部〟との出合いです。ここでたくさんの先輩たちに、いろいろ教えていただきました。知らないことは素直に聞くのが早道ですからね」
現在は、高齢者のためのパソコンやスマートフォンの使い方講座にも力を入れています。
「84歳の私自身が使ってみて便利だと思う最先端技術は、きっと多くのみなさんにも便利なものでしょう。ただ、誰かが持っているからという理由で使う必要はありません。例えばスマートフォンは、外出先で必要なものがいっぱい詰まった箱のようなもので、とても便利。でも、月1回しか外出しない人なら、パソコンの方が使いやすいかもしれませんよね。一人一人が自分にちょうどいいものを見つけるのがいいでしょう」
何でも軽やかに習得されているように見える若宮さん。
その秘訣を聞くと、「大人の学びは道楽のようなもの。〝基本から〟とか〝本格的に〟とかは不要です。失敗しても周りに迷惑はかからないし、自分のプラスにはなるはず。〝年だから〟と自分自身に制限をかけるのはやめましょう。ためらっている時間はないのです。学ぶことで新たな人や社会とつながることも楽しい」と答えてくれました。
いま、学びたいことがある人も、何かしたいと思っている人も、まずははじめてみませんか?
●若宮さんの学び年表
(60代前半)パソコンとネットの使い方を覚える
3カ月かけてネットの接続に成功。
ネット上で見つけた「メロウ倶楽部」に入会してからは、そこでできた友人にホームページの作り方や旅行記の公開方法などを教えてもらう。
(65〜74歳)ソフトを使い作品づくり友人にパソコンを教える
同世代の友人に頼まれて自宅でパソコン教室を実施。
パソコンの機能の一つである「エクセル」を使った「エクセルアート」を考案したのもこの頃。
作品づくりを楽しむように。
(75~82歳)プログラミングを学ぶ。世界最高齢プログラマーに
「エクセルアート」を使った作品(写真下)づくりは高齢者向けの教室でも大好評。
この頃、周囲の人の助けを受けつつiPhone向けゲーム「hinadan」を開発。
(現在)子どもやシニア向けの教室でも活躍中
高齢者向け教室のほか、子ども向けに電子工作を教える教室も開催。
「パソコン仲間には、10歳の女の子もいるの。学ぶことに年齢は関係ないわ」と若宮さん。
写真提供/ NPO法人ブロードバンドスクール協会
取材・文/笑(寳田真由美) 撮影/米山典子