毎日が発見ネットで「別居嫁介護日誌」を連載されていた島影真奈美さんによる介護エッセイ本『子育てとばして介護かよ』(KADOKAWA)が、9月13日に発売されました。突然始まった介護に奮闘する島影さんのエピソードは連載中も非常に反響が大きく、まさに待望の書籍化です!
そこで今回は、同じく毎日が発見ネットでも連載していただいている、介護ブログの第一人者・バニラファッジさんとの対談を実施しました。
「育児未経験で親の介護」は他人事ではありません
31歳で結婚し、33歳で出産!と自分の中で決めていたという著者の島影さん(このエピソードは下で公開している「巻頭マンガ」をぜひご覧ください!)。
バリバリ仕事をこなし、充実した日々を送っているうち......気づけば40代! 出産のタイムリミットは近い、と焦りはじめたときに突然、義母と義父に立て続けに認知症が発覚。出産も子育てもとばして「いきなり介護」の日々が始まる――。『子育てとばして介護かよ』では、そんな「誰にでも起こりうること」が描かれています。
著者・島影真奈美さんは、介護をする中でバニラファッジさんのブログに出合い、勇気付けられたといいます。そこで今回は、島影さんとバニラファッジさんに、本格的な介護スタートのきっかけともなった「初めて認知症の診断を受けたときのエピソード」、そして「認知症の親と介護で接するときに気をつけていること」についてお聞きしました。
自分を「認知症」だと思っていない人を動かす難しさ
島影:義母の様子がどうもおかしい。義父からもそう相談され、まずは義父と私、夫の3人だけで「もの忘れ外来」を受診し、義母のことを相談しようとしました。でも当日になっていきなり、義父が義母には何も説明せず、うやむやのまま一緒に連れてきちゃったんです。義母はただのお出かけだと思っていたのに、着いた先が病院だったので、ものすごく不機嫌になってしまいました。
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バニラファッジ:うちの義母も自分が認知症だと自覚していなかったので、一緒に診察に行ってもらうまでに苦労しました。「悪いところなんてないのになんで病院に行かなくちゃいけないの?」って。自分を認知症だと思っていない人を動かすのは、本当に難しいですよね。
島影:医師から「今日は何年の何月何日ですか? 何曜日ですか?」といった認知機能を診断するための質問をされたときも、義母は不愉快そうにしていました。うまく答えられないと「人を試すような質問は好きではありません」と医師をにらみつけたり......。隣に付き添っていて、もう冷や汗ものでした。
バニラファッジ:うまく答えられないのが自分でももどかしいから、試されるようなことを嫌がるのでしょうね。そういえば、介護認定を受けるとき、義母は「今は何月ですか?」と質問されて、そのときは真冬だったんですけど「4月」と答えたんです。さらに続けて「でも4月が違うのも私知ってるから!」って。「私は4月生まれだから4月が好きなの!誰がなんと言っても今日は4月!!」と押し切っていて、我が義母ながら(すごい...)と思いました(笑)
島影:「答えられない」なんて絶対思われたくないんですよね。パッと機転を利かせてつじつまを合わせちゃうのがホントすごいです!
バニラファッジ:だから私も義母に質問するときはちょっと工夫していました。「なにか飲みたいものありますか?」と質問すると、義母は自分が何を飲みたいのかわからなくて怒ってしまうんです。だから「お義母さん、ジュースにしますか?それともお茶にします?」と2択にすると、すんなり答えてくれるんです。
島影:わかりやすく選択肢を示す方法だと、親にとっては答えやすくなるし、こちらも意向を尊重した対応をしやすくなるのがいいですよね。内心では「ジュースでも、お茶でもどちらでもいい」と思っていたとしても、何も聞かずに勝手に決められたら、ちょっとイヤだなと感じてしまいそう。こうしたネガティブな気持ちが積み重なると、不信感につながったりもするだろうなって。なので、私も介護サービスを新しく取り入れたり、変更したりするときは必ず、義父母に希望を聞くようにしています。必ずしも希望通りにできるとは限らないけど、「相談して一緒に決めた」というステップを踏むことが親の納得感につながるんじゃないかなって。
『子育てとばして介護かよ』で伝えたいこと
島影:介護は想像していたよりもずっと大変で、「ひととおり介護体制が整ったら、次は離婚...!」なんて思いつめた時期もありました。でも、同時にすごく面白くもあって。介護の荒波を一緒に乗り切ることで、夫婦や親子の関係を再構築できたような実感もあります。今回出版した本では、ある日突然、離れて暮らす親に介護が必要になったとき、生活はどう変わるのか。どんどん介護に巻き込まれていく、最初のビッグウェーブをどう乗り切るのか。その一部始終をご紹介しています。親の老いが気になり始めた方の心の準備として、すでに介護に取り組んでいらっしゃる方のちょっとした休息として、少しでもお役に立てたらうれしいです。
■特別公開!『子育てとばして介護かよ』巻頭マンガをちょこっとお見せします!!
「33歳での出産」を目指していた島影さん。「いきなり介護」に突入するまでを描いた巻頭マンガから、「夫とのエピソード」を抜粋してご紹介します!
■おふたりのプロフィール
島影真奈美さん
フリーのライター・編集者として働くかたわら、一念発起し、大学院に進学した矢先に、夫の両親の認知症が立て続けに発覚。なりゆきで介護の采配をふるうことに。
島影さんの毎日が発見ネットでの連載「別居嫁介護日誌」はこちら!
バニラファッジさん
ブログ「7人家族の真ん中で。」管理人。車椅子生活の叔母さんと認知症の姑を同時に在宅介護した経験を持つ。
おふたりの対談は『毎日が発見』10月号に掲載されます
この対談の詳しい内容は定期誌『毎日が発見』10月号「介護する側、される側。大切なのは『距離感』です」にて掲載されます。ご興味のある方はぜひ!
取材・文/宇都宮薫 マンガ、イラスト/川(巻頭マンガ、島影真奈美さん) バニラファッジ(バニラファッジさん)