今日のお話は在宅介護でぶつかる初めての高いハードル 「紙おむつ」です。我が家で起きた介護者と被介護者の心の葛藤を描きました。
同居していた姑の妹「おばさん」は、リウマチと骨粗鬆症の悪化で車椅子生活になりました。杖をついて自立歩行ができていた頃は、トイレにも一人で行って用が足せましたが、トイレ介助が必要となった時...
地域によって違いがあるようですが 当時、私たちの住む地域では介護保険の利用で3000円(税込)/月の 「おむつ券」が支給された。もちろんこれで「紙パンツ」も購入できます。
生前、おばさんに認知症はなく、自分の希望をきちんと伝えることができました。
「おむつ」は寝たきりの人(末期の人)がつけるもので、「パンツ」は生活を便利にするための補助用品と位置付けていたおばさんにとって、「おむつ」はNGワードだったのです。
介護する側はそんなに意識していないと思いますが、被介護者には「おむつ」か「パンツ」かで自尊心が大きく違うようです。
つい「おむつ」と言ってしまいましたが、すぐに「いえいえ、パンツです」と言い換えたことですんなり受け入れてもらえました。
紙パンツをはいていても、頭がしっかりしているおばさんがその中で排尿・排便するのはとても心の折れる作業のようでした。なので、「トイレでしたい」とおばさんが望む限り昼夜を問わずトイレ介助をしました。
もちろん介護者にとってもトイレを利用してもらえた方が清潔で後片付けも楽でした。
一方、お義母さんは、身体は丈夫ですが認知症がじわりじわりと進行していました。
脱ぎ捨ててあったお義母さんの下着やズボンは、おしっこでベタベタでした。
まだら認知症だったお義母さんは、トイレを失敗したことも服を脱ぎ捨てたことも、翌朝には記憶がありませんでした。
昔から身だしなみや身の回りのことには神経質なほどキチンとしていたお義母さんでしたから、自分が服を汚したうえ、そのまま放置したなんて、思いもしなかったと思います。自ら「紙パンツ」を試みたおばさんと違って、お義母さんに「紙パンツ」を理解してもらうのは、とても難しいことでした。
家族からの援護射撃も認知症のお義母さんには届かず、ますますその状況を悪化させました。
そんな時期が続いたある日、嫁は「はいてみませんか?」から「はいてください」作戦で勝負にでてみました。
おもむろに「紙パンツ」を突きつけ...
想像以上にすんなりと受け入れてもらえたうえ...
「私のパンツ!?」
いいんです、お義母さんが履いてくれるなら。 洗濯が間に合わない嫁のために、ひと肌脱いでくれたお義母さんに感謝感謝(笑)それ以降は強いこだわりもなく、紙パンツをはいてくれるようになりました。
ただ、認知症といってもトイレに間に合わない時「洋服を汚してはいけない」という意識が根底にあるので、その場で脱いでしまい、部屋を汚してしまうこともありました。
「パンツの中でしても大丈夫ですよ」を理解してもらうのがまた難しいものでした。
家族の介護が始まると両者にたくさんの試練が訪れます。
お義母さんが汚れた下着や服をほったらかしにしているのは、本意ではありません。
それを家族からガミガミ言われるのは、なおのことでしょう。
なので、お義母さんやおばさんの在宅介護が始まり私がいつも心がけていたことは「叱らない」ということです。
それはいずれ私が高齢になり、今まで普通にできたことができなくなることを「叱られたくない」からです。
「誰もが同じように年をとる」そんな思いで、お義母さんとおばさんの在宅介護の日々は過ぎていきました。
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