日本の象徴「富士山」に姿が似ていることから、「ふるさと富士」と呼ばれる山が各地に約400点在しています。土地の人々は思いを込めて地の名を冠し「蝦夷富士」などと名付け親しんできました。では、このふるさと富士が出現したのはいつ頃からなのでしょうか。
富士山遠望鑑定士の日本地図センター相談役・田代博さんに伺うと、「明治時代ですね。近代国家の建設で日本の象徴が必要になり、注目されたのが富士山です。それにあやかって各地で富士山に似ている山を大切にしたいと思いを込め、名付けたんでしょう」。
今回、その中から五つをご紹介しますが、富士山のような山の形、傾斜角、火口の有無が重要とのこと。
「各地に富士見台という地名がありますが、富士山を見たい思いから命名されたものもあります。崇拝の強さが分かります」。
いまでも目にしただけで気分を高揚させ、生きる力を与える富士山。身近な「ふるさと富士」を愛でながら、新たな年を迎えてはいかがでしょうか?
<蝦夷富士(えぞふじ)>
北海道 羊蹄山(ようていざん)
ほぼ同じ傾斜角や整った円錐形など、全国の山でも富士山似はトップクラス
●標高:1,898m ●傾斜角:27度 ●山の形:円錐形 ●火口あり
<富士山>
静岡県/山梨県 富士山
日本の象徴と崇拝されている名山。平らな山頂、裾広がりの美しい姿は海外の人をも魅了
●標高:3,776m ●傾斜角:28度 ●山の形:円錐形 ●火口あり
<八丈富士(はちじょうふじ)>
東京都・八丈町 西山(にしやま)
傾斜角は20度と緩やかながら、360度どこから見ても富士山と間違えるほど
●標高:3,776m ●傾斜角:28度 ●山の形:円錐形●火口あり
<薩摩富士(さつまふじ)>
鹿児島県 開聞岳(かいもんだけ)
傾斜角はやや大きいが、富士山によく似たきれいな円錐形の山。西日本を代表するふるさと富士
●標高:924m ●傾斜角:30度 ●山の形:円錐形 ●火口なし
<南部片富士(なんぶかたふじ)>
岩手県 岩手山(いわてさん)
裾野が伸びた富士山特有の姿が見事。「片富士」(片側が富士似)が望めるのは東の盛岡方面から
●標高:2,038m ●傾斜角:20度 ●山の形:台形 ●火口あり
<伯耆富士(ほうきふじ)>
鳥取県 大山(だいせん)
方面により見え方が違う。富士山に似ているのは、西側からのなだらかな眺め
●標高:1,709m ●傾斜角:30度 ●山の形:台形 ●火口なし
<山の形の注意事項>
※円錐形=山頂部分が平らの円錐形、台形=見る方向により円錐形にもなる
※傾斜角:概数(方面で異なる)
取材・文/中沢文子