「最新作の主人公は、自分と同世代の56歳にしました」小説家・新井素子さんインタビュー(後編)

高校2年生のときに小説家としてデビューした新井素子さん。以来、40年以上にわたり、さまざまな作品を世に送り出しています。後編となる今回は、59歳になる現在の体力作りや、56歳が主人公の最新作についてお聞きしました。

前回の記事:「見つからないよう屋根の上で読書した子供時代」小説家・新井素子さんインタビュー(前編)

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懐かしの場所を訪ねて散歩で体力づくり

――家でお仕事をされることが多いと思いますが、体力づくりはどうされていますか?

スポーツジムに行けないときは、夫婦で散歩しています。

先日の連休、行くところがなくて悩んでいたら、夫が「あの『おばあちゃんの家』がどうなっているか、見に行ってみようよ!」と言うので、2人で散歩に出かけました。

『おばあちゃんの家』というのは、土地の購入を考えていたときに候補にあがった場所です。

広い敷地に平屋と、おばあちゃんが手入れしたような端正な庭があったところから、私たちは『おばあちゃんの家』と呼んでいます。

最後に行ってから25年たっていたので周囲の風景が変わり、当時はなかった遺跡が発掘されて公園になっていたのには驚きました。

途中で道に迷ったり最寄り駅が分からなくなったりしたけど、なんとか無事に帰宅。

往復で4時間半、歩数は1万8千歩でした。

最新作『絶猫』は夢の中で戦う物語!

本を書くときは、編集者と打ち合わせして展開を決めるのですか?

今作は担当の編集者さんと打ち合わせをして作り上げましたが、私は元来、打ち合わせがあまりうまくはないです。

初期から20年間は打ち合わせとは違った内容になることも多く、時には担当編集者に展開を伝えずに書くこともありました。

直接本として出版される書き下ろし作品が多いのはそのためです(笑)。

最新作『絶対猫から動かない』は、新井さんが大学生のときに出版された『いつか猫になる日まで』の50代版だそうですが、今作はどのような物語なのでしょうか?

同じ地下鉄に乗り合わせた登場人物たちが現実と夢を行き来しながら、自分や友人、教え子など、大切な人の命を守るために、人類を捕食する未知の生物「三春ちゃん」と戦う物語です。

登場人物たちが自分に起きた出来事をよく理解していない1~3章までは、少しもたもたした印象を受けるかもしれませんが、あえてゆっくりと進めています。

その点も注目して読んでほしいです。

私の小説は、立場や環境が理解しやすいこともあって登場人物を自分と同世代にしています。

私は現在59歳なので、主人公は56歳にしました。

登場人物(54~64歳)はそれぞれ、親の介護、家族関係、子どもの発達障害、老後への不安など、人生の折り返し地点を過ぎた世代特有の悩みを抱えています。

主人公のバックボーンに親の介護問題を入れたのは、私自身が経験者ということもあります。

働きながらの介護や離れて暮らす親の生活の把握が難しく、介護施設や病院探しも大変でした。

このように50代はいろいろと抱えている世代で、体力に衰えもあり、昔のようには戦えません。

そこで今作は、中学生と20代教師という若い世代も登場させて、一緒に戦う物語にしました。

また50代は『いつか猫になる日まで』を書いた20代のときのように、何かあっても素早く反応して動くことができないと思って、タイトルは『絶対猫から動かない』にしました。

『いつか猫になる日まで』が読者に『いつ猫』と呼ばれていたので、今作『絶対猫から動かない』は、『絶猫(ぜつねこ)』と呼んでほしいですね。

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取材・文/マルヤマミエコ 撮影/兵頭理奈

 

新井素子(あらい・もとこ)さん
1960年、東京都生まれ。77年『あたしの中の……』で奇想天外SF新人賞の佳作を受賞しデビュー。99年『チグリスとユーフラテス』で日本SF大賞を受賞、その他受賞歴多数。『いつか猫になる日まで』『ひとめあなたに…』『未来へ……』など著書多数。

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『絶対猫から動かない』

(新井素子/KADOKAWA)

17歳で作家キャリアをスタートさせた日本SF界のレジェンド新井素子が贈る、「普通の大人」の冒険小説。両親の介護、発達障害の子どもと向き合う難しさ、老後の不安など、「いま」を生きる大人世代のリアルな悩みを織り込んだ共感エンタテインメント。

この記事は『毎日が発見』2020年6月号に掲載の情報です。

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