「生まれ変わるのはムリ!でもね...」さだまさし流「生き直し」のススメ

シンガー・ソングライター、そして小説家としてご活躍のさだまさしさん。昨年、レコードデビュー45周年を迎え、5月に20年ぶりのセルフカバーアルバム「新自分風土記I~望郷篇~」と「新自分風土記II~まほろば篇~」を2枚同時発表するなど、精力的に活動されています。毎日が発見ネットで2回にわたってお届けしたインタビューの最終回は、人生の「生き直し」を推奨するさださんの元気の秘訣など、総集編的な内容でお届けします。

1907p070_2.jpg「新自分風土記II~まほろば篇~」に収録された「修二会」を歌うさださん。東大寺二月堂の大仏殿にて、夜中の1時。厳かな雰囲気の中歌を奉納した。

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逆に勇気をもらうボランティア活動

――「毎日が発見」では医師・作家の鎌田實先生の連載をしていますが、さださんもご親交が深いとか。

さだ 鎌田先生、最高ですよね!

――鎌田先生とは、どういった出会いだったんでしょうか。

さだ 30代半ばに長野の諏訪市に移住して12~13年いたんですが、そのとき画家の原田泰治さんのご紹介で飲み仲間になって以来、ずっと友達なんです。僕が支援活動のために「風に立つライオン基金」(※1)を立ち上げたときも、佐渡裕(ゆたか、指揮者)さんと古田敦也さん(元プロ野球選手・監督)とともに評議員になっていただいて。

※1 さまざまな助成事業や被災地支援事業を目的に、2015年に設立。2017年公益法人として認定

――「風に立つライオン基金」ではどのような活動を?

さだ 「高校生ボランティア・アワード」を年に一度やっているのと、災害が起きたときに後方支援をするんですよ。昨年の平成30年7月豪雨(西日本豪雨)では、岡山県総社(そうじゃ)市の高校生の女の子がツイッターで呼びかけて中高生を1000名集めて、災害直後の泥かきをしたんですよね。僕らはその後方支援をしました。「足りないものはある?」「できることある?」って聞きに行く。多少落ち着いてきた頃に「みんな災害疲れですさんできているから、歌いに来てください」と言われると、また出向くんですよ。鎌田先生も一緒に行ってくれて、"健康の講演と歌"みたいな、いいコンビですよ。

――こういう活動は音楽活動へのモチベーションになったりしますか?

さだ それがね、勇気付けるために行っているのに、逆に勇気をもらうんですよ。現地に行って歌って、音楽にうなずいたり、泣いたり笑ったりしてくれている人たちを見ると、自分が歌ってきたことが間違っていなかったと思えてくる。愛媛の大洲、西予、宇和島は、災害のすぐ後に入って「みんながんばれー」って言いながらただ歩いていただけだったんですけど、11月に入って松山でコンサートをやったときに、現地からのぼり旗を持った方たちが、「さださん、あのときはありがとう」って来てくれたりするんですよ。いやいや「来てくれてありがとう」ってこっちが言いたいよって。そういう、不思議な循環も生まれたりしていて。ますます勇気が湧いてくるし、大洲、西予、宇和島にも歌いに行きたいし、コンサートももっとやらなきゃなって思うんですよね。

 
今日からでもできる「生き直し」のすすめ

――さださんは昨年45周年を迎えて、ご自身では「Reborn(リボーン)」というテーマを掲げています。この意味とは?

さだ リボーンというと「生まれ変わる」とかって訳すじゃないですか。「生まれ変わったつもりで、いちから出直そう」とかね。でも、人間、実際に生まれ変わることはできないので、「生き直し」じゃないかと僕は思っていてね。生き直しならば、いくつになってもできるし、今日からもできるなって思うわけですよ。

――難しくないですか?

さだ いやいや、誰だってすぐできますよ。コンサートのときにもよく言うんですけど、「1月1日に今年の目標を決めるけど、どうせ1カ月で目標を見失うだろう。でも、日本には節分というのがあるからそこで立て直そう。年始1カ月で駄目になったあなたが2月に立て直そうとしてもすぐ駄目になるだろう。でも、この国には、年度末という考え方がある。新年度で目標を立てるといい。それでもすぐ駄目になるかもしれないけど、今年は令和という時代が始まる。そこでも駄目なら、衣替え。

――あはは。いいですね。

さだ 「いつでも生き直しはできるんだよ」「失敗して全部放り出すのは間違いだ」ということですかね。明後日、明々後日からもう一回やり直してみるという気持ちがあれば、ちょっとずつでも前に進める。途中で投げないでという提案ですよね。

――ゼロにしないで、あくまでも連続の中で。

さだ そう。いままでの自分はゼロになんてならないし、生まれ変われないのだから、「生き直す」方が分かりいい。今年なんて絶好のチャンスですよ。時代が変わったんだから。あとは令和をどう生きるかですよ。

――さださんにとって、今回、ご自身の過去の楽曲を新たに歌い直したセルフカバーアルバム「新自分風土記I~望郷篇~」と「新自分風土記II~まほろば篇~」とは、歌の「生き直し」なんですね。

さだ そうですね。いままで作ってきた600曲近い歌の中から選曲して、いまの声といまのサウンドで歌い直してみたらどうかって、レコード会社から提案があってね。2枚のアルバム(各11曲合計22曲を収録)を作ってみたんですよ。でも、改めて歌ってみて分かったんですけど、「さだまさしの歌って、難しい」(笑)。もうちょっと楽に歌える曲を作れよってさ。なんて、めんどくさい歌なんだって。こんなに歌録りに時間がかかると思わなかったからね。すごく大変だったんですよ。だから、来年作るオリジナルアルバムのテーマは「楽に歌える」ということで。

――(笑)。そうは言いつつ、「精霊流し」(「新自分風土記I~望郷篇~」に収録)など、さださんの故郷でもある長崎にある浦上教会(浦上天主堂)のパイプオルガンの音色と聖歌隊の歌声の響きが素晴らしくて。

さだ もともと「歌を故郷に帰す」という思いがあって「精霊流し」は自分の歌手人生の原点ともなった歌ですし、特別でしたね。もちろんこの曲も簡単ではなかったですが、パイプオルガンと聖歌隊の皆さんの力もあって良かったですよ。

1907p070_1.jpg「新自分風土記I~望郷篇~」に収録された「精霊流し」は長崎の浦上教会(浦上天主堂)にて、地元の聖歌隊も参加し、レコーディングされた。


――「新自分風土記II~まほろば篇~」では奈良を舞台とした楽曲を中心に選曲されていますが、実際に「まほろば」を飛火野(とびひの、※2)で、「修二会」(しゅにえ、※3)は東大寺で。それぞれ曲の舞台となった土地に歌を帰すとはすごい企画ですよね。

※2 奈良公園に属する、広大な林野のこと。万葉などの古歌に詠まれ、歌枕としても知られる
※3 さだまさしさんの曲「修二会」は、仏教寺院で行われる法会の一つで、3月に行われる東大寺二月堂の修二会を元に生まれた

さだ 奈良にもこれまですごくお世話になっていてね。「まほろば」と「修二会」はどうしても奈良へ帰したい歌だったんですよね。無茶な希望を出したけど、皆さん二つ返事で撮影まで許可してくださった。奈良の大仏様と向かい合って歌うとかね......。いま考えても信じられないけど、東大寺さんとのお付き合いもあって、その日特別に大仏殿の観相窓(かんそうまど、※4)を開けてくださったんです。

※4 東大寺大仏殿、大仏殿の顔の正面にある窓。普段は閉まっているが、元日と万灯供養会のみ開く

――普段、元日などの特別な日にしか開かないものですよね。

さだ そう。だから感動しましたよ。「さだまさしのために開けてくれている」って思うと震える感じ。しかも参拝客もいない夜中の1時。真っ暗闇ですよ。星が奇麗でね。扉をゴォーッと開けると、和ロウソクが4本立っているだけなの。ちょっとグッとくるものがありました。ただね、映像チームを入れていきなり撮影するというのも畏れ多いので、まずはギター1本でマイクも何も通さず、大仏殿で一人きりで歌を奉納したんですよ。その後、ミュージックビデオのために歌を奉納している姿をもう一度撮るという。「生生流転」は春日大社の本殿前の林檎の庭で撮影をしましたし、ちょっとできない経験をしました。

――そうですね。普通はできないと考えて思いもつかない発想かと。

さだ 以前、新藤晋海(しんどうしんかい)さんという第216世東大寺別当(住職)さんとNHKデジタル衛星ハイビジョン番組でご一緒したんですよ。最初は難しそうな人だなって思ったんですが、気に入られちゃってね。新藤さんが「あんた(歌の)『修二会』をここで演(や)んなはれ」と言うんですよ。何言ってるんだと思いながら「どこでですか?」と聞くと「(東大寺二月堂の)舞台やがな」っていうんですよ。「いつですか?」と聞くと「(実際の)修二会のときやん」と。「アホなことを......」と思っていたんですけど、その時のやりとりがなかったら、こういう企画は思いつかなかったでしょうね。お目にかかった、そのすぐ後に心疾患で亡くなられて、再会できなかったんですが。こうして今回、東大寺二月堂で歌わせていただくことになって。興味深いことですよ。


倒れる暇がない!これが元気の秘訣

――ご縁がつながっていって、素晴らしいですね。

さだ これが、万が一、面白いという声が上がったら、昔の曲を歌い直していく作品としてシリーズ化していけるのかなと。
帰さなければならない歌は、京都にも北海道にも太宰府にもありますから。でもね、これは決して終活ではなくて、あくまでも「生き直し」。毎年少しずつ「生き直し」ですよ。さらに、僕は永遠に新曲を作り続けないと自分が止まっちゃいますから、新しい畑も耕さなければなりません。「同時にやれるかな?」とも思いますが。

――やることはたくさんある。

さだ そうなんですよ!

ーー そんなさださんの元気の秘訣は?

さだ いやあ、結構疲れていますよ。多分、次々と生き直さなければならないきっかけが多過ぎるといいますか。平たく言うと「締め切り」ですかね(笑)。締め切りのたびに生き直さなければならないんですよ。歌作りにせよ、エッセイにせよ、小説にせよ。

――目の前の締め切り!?

さだ そう! 締め切りがないと、本当に何もしないですから。テレビ番組への出演が決まると、そこが締め切りになって、歌う曲を決めて練習をしたり、そこに向けて自分をあおっていく。

締め切りが終わると抜け殻になる。その繰り返しですよね。でも、そういう締め切りの毎日で、抜け殻になる時間もあまりないんです。だから、つっかえ棒4本くらいで支えて、立っているようなもので、「倒れる暇がない!」これが元気の秘訣だと思います(笑)。

 

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取材・文/古城久美子

 


■CD info

sada_h1_nagasaki_0325.jpgさだまさし「新自分風土記I~望郷篇~」
故郷・長崎を舞台にした11曲をセレクトし、セルフカバー。「精霊流し」「祈り」「神の恵み~A Day of Providence~」など、長崎・浦上天主堂にてパイプオルガンや地元のコーラス隊との聖なるコラボレーションが実現。
(CD+DVD)¥4000+税、(CD)¥3000+税/ビクターエンタテインメント

 

sada_h1_nara_0325.jpgさだまさし「新自分風土記II~まほろば篇~」
根強い人気を誇る、奈良を舞台とした楽曲を中心にセレクトした11曲を収録。東大寺二月堂での「修二会」、大仏殿での「償い」、春日大社での「生生流転」、飛火野での「まほろば」など、神秘的な撮影が実現。
(CD+DVD)¥4000+税、(CD)¥3000+税/ビクターエンタテインメント

 
■EVENT info

「高校生ボランディア・アワード 2019」
7月29・30日パシフィコ横浜 展示ホール(Hall A)にて開催が決定


 

 

さだまさし さん

長崎市出身。シンガー・ソングライター、小説家。1976年ソロのシンガーとして活動を開始。「関白宣言」「北の国から」など数々のヒットを生み出す。NHK「今夜も生でさだまさし」のパーソナリティとしても人気。2015年、一般社団法人「風に立つライオン基金」を設立(2017年公益法人として認定)し、さまざまな助成事業や被災地支援運動を行なっている。5月18日埼玉・川口リリアメインホールを皮切りに全国ツアー「さだまさしコンサートツアー2019~新自分風土記~」がスタート。ライブ映像作品「45周年記念コンサートツアー2018 Reborn ~生まれたてのさだまさし~」も発売されたばかり。詳細は公式サイトへ。

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