シンガー・ソングライター、そして小説家としてご活躍のさだまさしさん。昨年、レコードデビュー45周年を迎え、5月15日に、20年ぶりのセルフカバーアルバム「新自分風土記I~望郷篇~」と「新自分風土記II~まほろば篇~」を2枚同時発表するなど、充実の日々を過ごしていらっしゃいます。今回は、「生き直し」を推奨するさださんのレコーディング秘話をお聞きしました。
リ・ボーンに込められた想い
―さださんは、去年45周年を迎えて、ご自身では「reborn(リボーン)」というテーマを掲げていますよね。この意味とは?
さだ リボーンというと「生まれ変わる」とかって訳すじゃないですか。「生まれ変わったつもりで、いちから出直そう」とかって。でも、人間、実際に生まれ変わることはできないので、「生き直し」じゃないかって僕は思っていてね。生き直しならば、いくつになってもできるし、今日からもできるなって思うわけですよ。
―さださんにとって、今回、ご自身の過去の楽曲を新たに歌い直すセルフカバーアルバム「新自分風土記I~望郷篇~」と「新自分風土記II~まほろば篇~」とは歌の「生き直し」なんですね。
さだ そうですね。今まで作ってきた600曲近い歌の中から、今の声と今のサウンドで歌い直してみたらどうかなって、レコード会社の提案があってね。2枚のアルバム(各11曲合計22曲を収録)を作ってみたんですよ。でも、改めて歌ってみてわかったんですけど、「さだまさしの歌って、むずかしい」(笑)。もうちょっと楽に歌える曲を作れよってさ。なんて、めんどくさい歌なんだって。こんなに歌録りに時間がかかると思わなかったからね。すごく大変だったんですよ。だから、来年作るオリジナルアルバムのテーマは「楽に歌える」ということで。
―(笑)。そうはいいつつ、「精霊流し」(「新自分風土記I~望郷篇~」に収録)は、さださんの故郷でもある長崎・浦上教会(浦上天主堂)のパイプオルガンの生音と歌声の響きがすばらしかったです。
さだ もともと「歌を故郷に帰す」という思いがあって「精霊流し」は自分の歌手人生の原点ともなった歌ですし、特別でしたね。もちろんこの曲も簡単ではなかったですが、パイプオルガンと聖歌隊のみなさんの力もあってよかったですよ。
―「新自分風土記II~まほろば篇~」では奈良を舞台とした楽曲を中心に選曲されていますが、実際に「まほろば」を飛火野(トブヒノ)、「修二会」は東大寺でレコーディングされていて。それぞれ曲の舞台となった土地に歌を帰すとはすごい企画ですよね。
さだ 奈良にもこれまでもすごくお世話になっていてね。「まほろば」と「修二会」はどうしても奈良へ帰したい歌だったんですよね。無茶な希望を出したら、みなさんも二つ返事で撮影まで許可してくださった。奈良の大仏さまと向かい合って歌うとかね......今考えても信じられないけど、東大寺さんとのお付き合いもあって、その日特別に大仏さまの観相窓を開けてくださったんです。「さだまさしのために開けてくれている」って震える感じ。ちょっとできない経験をしましたね。
大仏様と向かい合う...神秘的な空間での歌唱も
―ご縁がつながっておもしろいですね。
さだ そうやって、万が一、今回の企画におもしろいという声があがったら、昔の曲を歌い直していく作品としてシリーズ化していけるのかなと。帰さなければならない歌は、京都にも北海道にも太宰府にもありますから。
「歌を故郷に帰す」という思いやエピソードの詰まった2枚のアルバムもぜひ聴いてみてほしい。
取材・文/古城久美子
■CD info
さだまさし「新自分風土記I~望郷篇~」
故郷・長崎を舞台にした11曲をセレクトし、セルフカバー。「精霊流し」「祈り」「神の恵み~A Day of Providence~」など、長崎・浦上天主堂にてパイプオルガンや地元のコーラス隊との聖なるコラボレーションが実現。
(CD+DVD)¥4000+税、(CD)¥3000+税/ビクターエンタテインメント
さだまさし「新自分風土記II~まほろば篇~」
根強い人気を誇る、奈良を舞台とした楽曲を中心にセレクトした11曲を収録。東大寺二月堂での「修二会」、大仏殿での「償い」、春日大社での「生生流転」、飛火野での「まほろば」など、神秘的なレコーディングが実現。
(CD+DVD)¥4000+税、(CD)¥3000+税/ビクターエンタテインメント
■EVENT info
「高校生ボランディア・アワード 2019」
7月29・30日パシフィコ横浜 展示ホール(Hall A)にて開催が決定
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