歌手・加藤登紀子さんインタビュー(1)「『許せないわ』より『いいじゃないの』って言えるくらいでいたい」

1804p026_01.jpg旧満州・ハルビンに生まれた加藤登紀子さんは、現在、歌手生活50余年。いまもなお、コンサートや制作に夢中になって音楽に取り組む、元気いっぱいの姿には、胸を打たれます。今回、楽しく過ごす秘訣を伺うべく、登紀子さんのご両親が開いたロシア料理店「スンガリー」の新宿三丁目店を訪れました。ライフワーク「ほろ酔いコンサート」では、ステージで日本酒を楽しみ、会場を大団円へと導く登紀子さん。お酒と共に、本日はどんなお話が飛び出すのでしょうか。

 

おいしいお酒や食事に潜む心に響くエピソード

「このワインのラベルはね、旧ソ連のジョージア(グルジア)のニコ・ピロスマニの絵。このピロスマニって、私の運命の歌『百万本のバラ』のモデルになった貧しい画家の名前なのね。彼は、モディリアーニ(1884年生まれ、20世紀を代表するエコール・ド・パリの画家。1920年、没)みたいに、画商からその才能に目を付けられるんだけど、生前は不遇でね、死んだ後に評価されるんです。ピロスマニもね、どん底の中で死んでいったけど、いまではジョージアの英雄になっている。お酒が大好きだったから、こうしてワインにもなっているって、いいわよね」

歌はもちろん、形あるものには、一つ一つ隠されたエピソードがありますと、目を輝かせる登紀子さん。

「いま、歌自体がどう作られて、どういうふうに愛され、どういう運命をたどって人々に広がっていったかっていう、歌で語る自分史『運命の歌のジグソーパズル』(朝日新聞出版から4月20日(金)発売予定。予価1,500円+税)を執筆中なんですけど、『百万本のバラ』という歌のバックグラウンドもね、掘り下げれば掘り下げるほど面白くなるの」と続けます。

ほんのり甘めで、独特の風味があるピロスマニのワイン。丁寧に煮込まれ、濃厚なトマトクリームソースが染み込んだスンガリー名物のロールキャベツとの相性も抜群です。

「ロールキャベツは、私の母のいちばんの得意料理だったの。母は20歳で結婚して、満州のハルビンに渡り、初めて自分の新しい家庭を持つわけだけど、いきなり満州に引っ越すことになって、ロシアのライフスタイルと料理を覚えるの。そこで感激したのは、料理は、スープ、パン、ロースト肉、ヨーグルトまで、1週間に1度、徹底的に手作りするのね。でも、普段は切ったり温めたりと簡単なの。メインはお昼で、夕ご飯を簡単に済ませて、夜はオペラを見に行ったり、日本と全く考え方が違う!」

 
輝くためには...カップルでいた方がいい

ロシアのライフスタイルは、カップルで行動することが基本にあるそう。
「男ばっかりで飲むとかは基本的になくて、必ずカップルよね。ホームパーティーのときも、奥さんがキッチンに引っ込むなんてない。カップルで腕を組んで乾杯したりするし、奥さんも一緒にいなきゃいけないわけ。この特集の『元気』という意味でいうと、やっぱり横に異性がいた方が元気に輝けるわよね。奥さんをいろんな所に連れ出して、自慢して、他の男性をおもてなししても、いちいち嫉妬しない。

うちの母もみんなにかわいがられて幸せそうだった。折り目正しい日本のしきたりが気持ちいいときもあるけれど、もっとリラックスした状態で、わくわくどきどきするって、幸せよね!」

最近のゴシップ報道については独自の見解を。
「私、いまね、正しいか正しくないかが世の中の判断基準になっていて、やたら性急にみんなが『許せないわ』って言い過ぎてると思うの。逆に、許せないわって言わない女がカッコいいんじゃないのって思ってる(笑)。楽しければいいじゃないって思うし、正しいか正しくないかより、カッコよく生きるっていうのが前はあったと思うんです。

最近のハリウッドのセクハラ問題も...ただでさえ、結婚しない、男は要らないって女の人が増えている中で、私は、男性に好きな女性のひざも触らせないのかというような苦言を呈したカトリーヌ・ドヌーブ派よね。『許せないわ』より『いいじゃないの』って言えるくらいでいたい(笑)」

 

加藤登紀子さんの元気の法則 

その1 日本酒、ワイン...お酒はどんな種類もOK

「ほろ酔いコンサート」の際は、まず一杯の日本酒を飲んでから歌に入る登紀子さん。「お酒の何がいいかって、お酒の力で全身が一つに解け合うの。それは自分自身になるってことね。ぜひ味わってほしいわ」とニッコリ。

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その2 生活の中心にある食事「私の原点はロシア料理」

人と触れ合い、ライフスタイルにも直結する食事の時間を大事にしてきた。自身の原点であるロシア料理は、物心ついた頃からいちばんのごちそうで、「スンガリー」のゴルブッツィも母のロールキャベツの味に近いという。

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写真右はゴルブッツィ(ロールキャベツのオーブン煮込み焼き、ウクライナ風トマトクリームソース仕立て)1,700円+税、写真左はセリョトカ(生ニシンの7日間オイル漬け)1,500円+税(ディナーは、サービス料5%加算)。Aランチ936円+税(平日)。

 

次の記事「歌手・加藤登紀子さんインタビュー(2)「出会いというのは人の運命に触れること」」はこちら。

取材・文/古城久美子 撮影/木下大造 撮影協力/スンガリー 新宿三丁目店

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加藤登紀子(かとう・ときこ)さん

1943年、満州生まれ。歌手。66年「誰も誰も知らない」でデビュー。71年「知床旅情」が大ヒットし、日本レコード大賞歌唱賞受賞。自身が訳詞・歌唱した「百万本のバラ」が話題となり、87年にシングル化。

スンガリー 新宿三丁目店

終戦後、登紀子さんの一家はハルビンから無事に帰国し、父・幸四郎さんは1957年に小さなロシア料理店「スンガリー」を開業する。現在は、オープン当初のクラシックなインテリアが楽しめる新宿東口本店とモダンな新宿三丁目店の2店で営業中。

 

住所:東京都新宿区新宿3-21-6 新宿龍生堂ビルB1 
電話:03-3353-3947 
時間:月~金 11:30~15:00、17:00~23:00、土・日・祝11:30~15:30、17:00~23:00 休み:なし(年末年始、設備点検日を除く)
席数:48席(テーブル) 
交通:JR新宿駅東口より徒歩3分 
※全席禁煙

『ゴールデン☆ベストTOKIKO'S HISTORY』

3,000円+税 ソニー・ミュージックダイレクト
4月18日(水)発売/(2CD)
激動の世界と自らの半生を歌でつづる2枚組ベストアルバム。「知床旅情」「百万本のバラ」「愛の讃歌」他、全35曲を収録する。

加藤登紀子コンサート
「TOKIKO'S HISTORY 花はどこへ行った」

4月21日(土)17:00開演 
会場:東京・Bunkamura オーチャードホール
料金:S席7,000円、A席5,000円
問合わせ:トキコ・プランニング(電話03-3352-3875)

この記事は『毎日が発見』2018年4月号に掲載の情報です。
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