年間10万人が訪れる、北海道・帯広の「紫竹ガーデン」。野原のような1万5000坪のこの庭に2500種もの花を咲かせるのは、紫竹昭代さんこと、紫竹おばあちゃん。
もともとはじゃがいも畑に白樺の木が5本あっただけ。"こんなだだっ広い土地に庭を作るなんてムリよ"という周囲の声もなんのそのと立ち上がり、いまも自分の夢を育て続けています。7月初旬、野原のような庭景色です。
幼い頃に遊んだ、花いっぱいの野原を作ろう。
そう決めたのは63歳のときでした
紫竹おばあちゃんは、最愛のだんな様を56歳のときに亡くしました。一度も喧嘩をしたことがないおしどり夫婦でしたから、当時は打ちひしがれ、魂が抜けたような日々...
「このままじゃいけないと思ったのは、"お父さんはお母さんを太陽のような人だと言っていたじゃない"という長女・和葉の言葉に目が覚めたから」
幼いころに野原で花を摘んで遊んだ記憶がよみがえり、もう一度、あのときと同じような幸せいっぱいの場所を作ろうと決めました。
まだガーデナーという言葉が知られていなかった時代。紫竹おばあちゃんは、お客様に見せるためはなく、ただ花に囲まれて暮らしたいという純粋な思いだけで暗いトンネルから抜け出したのです。
無謀だという反対の声もありましたが、"おばあちゃんの夢を応援しよう"と、和葉さんのご主人も力強く背中を押してくれたそうです。
そして土地を探し、初めて植えたのはチューリップの球根。
「30年前の11月24日。雪が降りそうな寒い日でね。土も凍っていて途方に暮れていたら、いつの間にか町内の人がたくさん来てくれていたの。"早くしないと、終わらないよ"って言って、じゃがいもの種芋を巻くトラクターで2500個もの球根をあっという間に植えてくれたんですよ」
チューリップは翌春見事に開花。
「知らない方まで見に来てくださって、とてもうれしかったわ」
こうしておばあちゃんの夢がみんなの夢に変わっていきました。
30年前の風景。ここに色とりどりの花を咲かせるまで、農地法の規制を受けたり、土地に手を入れるのに申請が必要だったり...。いくつもの困難を乗り越えてきました。
紫竹おばあちゃん40歳のとき。仲良しだったご主人・勲さんと。
紫竹ガーデンマップ
取材・文/飯田充代 撮影/守澤佳崇 マップ/今井和世
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紫竹昭代(しちく・あきよ)さん
1927年、北海道・帯広生まれ。1992年に紫竹ガーデンをオープン。長女夫妻、孫、スタッフらとともに園内で花を育て、紫竹ガーデンの運営会社の社長としても活躍。いまも毎日庭に出てお客様を迎え、案内している。
『紫竹ガーデン』
住:北海道帯広市美栄町西4線107
電:0155-60-2377
営:8:00~18:00
開:4月15日~11月末まで (閉園期間もレストランは営業)
休:期間中無休
料:大人800円、子ども200円
(団体割引、シーズン券あり)
交:とかち帯広空港より車で約20㎞
JR根室線帯広駅から車で約22㎞