ある日、頭や背中、わき腹などの、体の左右どちらかの皮膚にピリピリした痛みを感じた後、赤い班や小水疱(水ぶくれ)が出てきた...急にそんな症状が出現したら戸惑うものです。実は、これが帯状疱疹(たいじょうほうしん)の典型的な症状。加齢や過労、病気、旅行に出かけて疲れがたまった時などに、子どもの頃にかかった水ぼうそうのウイルスが再び活動し始めて起きる病気です。帯状疱疹の特徴や治療法、後遺症、他の病気との見分け方などについて、宇野皮膚科医院院長の漆畑先生にお話を聞きました。
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帯状疱疹を防ぐにはワクチン接種が一番確実です
インフルエンザを予防するために、毎年秋になるとインフルエンザの予防接種を受ける人が増えてきました。日本でも少しずつ「予防医療」の考え方が浸透しつつありますが、帯状疱疹にもインフルエンザのように、予防できるワクチンがあるのです。
前にも触れましたが、帯状疱疹にかかるとさまざまな合併症を起こしたり、後遺症の「疱疹後神経痛」が残ったりする恐れがあります。帯状疱疹は免疫力が低下すると発症しやすいので、加齢によって免疫力が低下する高齢者や、仕事が忙しくてストレスを抱え込みやすい人などは、事前にワクチンを接種して帯状疱疹を予防することをおすすめします。
帯状疱疹を予防するワクチンは、水ぼうそう予防のワクチンと同じ「水痘ワクチン(水ぼうそうワクチン)」です。2016年に厚生労働省は、このワクチンに「50歳以上の人の帯状疱疹予防」という効能・効果を追加承認しました。それ以前にも希望者には、帯状疱疹の予防として「水痘ワクチン」の接種が行われてきていましたが、それが効能・効果があると、国から正式に認められたのです。
ワクチンの接種を希望する人は、帯状疱疹を専門に診察する皮膚科や総合病院などで接種できます。ワクチン接種を実施しているかどうか、事前に問い合わせると安心です。費用は医療機関によって異なりますが、8,000円から1万円ぐらいが目安です。1~3歳の子どもの水痘ワクチン定期接種は、3カ月以上の間を空けて2回行われますが、50歳以上の人の場合、接種回数は1回です。
ワクチン接種には費用がかかりますが、疱疹後神経痛になってつらい思いをするリスクを減らすためにも、50歳を過ぎたらワクチン接種を受けることが必須だといえます。接種した人は、たとえその後、帯状疱疹にかかったとしても軽症で済むといわれています。
「50歳以降は免疫力が低下していきますし、乳幼児への水痘ワクチンが2014年10月から定期接種になったことで、『免疫ブースター効果』が得られる水ぼうそうの流行が翌年からほとんど起こらなくなりました。したがって、帯状疱疹から自分の体を守るためには、50歳以降の方は積極的にワクチン接種をすることが大切です。水痘ワクチンの効果持続は5~10年といわれています。そのため5~10年おきにワクチン接種をすることが重要です」と漆畑先生。
いま国内では、帯状疱疹予防のための別のワクチンの開発も進められ、2018年3月に製造販売認可が下り、近日中に接種が可能になる見通しです。これまでのワクチンでは接種不可能だった免疫不全の患者や、ステロイド剤や免疫抑制剤を使用している患者種できるという大きなメリットがあります。
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取材・文/松澤ゆかり
漆畑 修(うるしばた・おさむ)先生
東邦大学医学部卒業後、東邦大学医学部大橋病院皮膚科部長、東邦大学医学部客員教授などを経て2007年に宇野皮膚科医院(東京都世田谷区北沢)院長に就任。医学博士、皮膚科専門医、抗加齢(アンチエイジング)医学専門医、温泉療法医、サプリメントアドバイザー。著書に『痛みを残さない帯状疱疹 再発させない単純ヘルペス』(メディカルトリビューン)、『帯状疱疹と単純ヘルペスの診療』(メディカルレビュー社)などがある。