処方された薬は飲み切り、日常生活では体を冷やさないことが大切/帯状疱疹

処方された薬は飲み切り、日常生活では体を冷やさないことが大切/帯状疱疹 pixta_23461226_S.jpgある日、頭や背中、わき腹などの、体の左右どちらかの皮膚にピリピリした痛みを感じた後、赤い班や小水疱(水ぶくれ)が出てきた...急にそんな症状が出現したら戸惑うものです。実は、これが帯状疱疹(たいじょうほうしん)の典型的な症状。加齢や過労、病気、旅行に出かけて疲れがたまった時などに、子どもの頃にかかった水ぼうそうのウイルスが再び活動し始めて起きる病気です。帯状疱疹の特徴や治療法、後遺症、他の病気との見分け方などについて、宇野皮膚科医院院長の漆畑先生にお話を聞きました。

前の記事「帯状疱疹の治療で使われる薬は「抗ウイルス薬」と「鎮痛薬」/帯状疱疹(9)」はこちら。

 

通院や日常生活で気を付けることは? 入院になる場合とは?

帯状疱疹になったら後遺症が残らないように、完治するまで治療を行うことが重要です。できるだけ早く皮膚科を受診し、処方された薬をすぐに服用します。そして、しばらくの間はこまめに通院します。症状に応じて入院治療が必要になることもあります。ここでは通院や日常生活での注意点、入院治療の目安について説明します。

○通院や日常生活での注意点
最初の受診から1週間はできれば毎日、少なくとも2~3日に一度は通院して、患部の痛みと皮膚の状態を医師に診てもらいます。患者の年齢が50歳以上であれば、4~5週間は通院が必要になります。50歳未満で持病のない人では2~3週間でよくなることが多いでしょう。

「皮疹の内側に膿のようなものがたまっていることがありますが、ほとんどの場合、化膿しているわけではないので、抗生物質は必要ありません。低刺激性の石けんなどで優しく洗って清潔に保つことです。ただし、急性期から1週間が過ぎても疱疹が乾いていないときには、抗生物質を使った方がよい場合もあります」と漆畑先生。

"かさぶたになって乾いてきたから、もう通院しなくてもいいだろう"と自己判断するのはよくありません。皮膚はよくなっても、神経の痛みは治っていないことがあるので、医師の指示に従ってきちんと通院することが大切です。痛みがあるときには遠慮しないで医師に相談して、症状に合う鎮痛薬を処方してもらいましょう。

家での過ごし方は、発症後1週間はなるべく安静に過ごすように、以前は指導されました。今は一般的な帯状疱疹なら、無理をしない限り普段通りの生活で問題ありません。食事も普通でかまいませんが、お酒はなるべく控えます。飲み過ぎて睡眠の質が悪くなると、病気が治りにくいからです。

「急性期で大切なことは、お風呂に入ってよく温まることです。たいていの炎症性の病気では患部を冷やすように言われますが、帯状疱疹だけは湯船に浸かって温めます。なぜなら帯状疱疹は神経の病気なので、冷やしてしまうと神経に栄養を運ぶ血管が収縮してしまうからです。神経に酸素や栄養が届かなくなり、神経の破壊がますます進んで疱疹後神経痛も起こりやすくなってしまいます。実際、ほとんどの人は、入浴すると痛みが軽くなります」と漆畑先生。

 

帯状疱疹治療の通院・日常生活でのポイント

 受診後すぐ、処方通りに抗ウイルス薬を服用する。
 痛みが生じているときは、がまんせずに鎮痛薬を飲む。
 鎮痛薬や鎮痛補助薬は医師の指示通り内服する。
 かさぶたが治っても神経の痛みは治っていないことがある。途中で通院をやめない。
 患部は冷やさない。お風呂でよく温める。

 

○入院が必要になる場合
重症で症状が改善しない場合には、通院治療ではなく入院が必要になります。入院は通常1週間程度で、抗ウイルス薬や鎮痛薬の点滴治療などが行われます。

【入院が必要になる症状の目安】
 体の広範囲に皮膚症状が広がっている。
 黒ずんだ大きな疱疹がみられる。
 強い痛みや合併症がある。
 がんなどの病気があり、著しい免疫力の低下がみられる。

 

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取材・文/松澤ゆかり

処方された薬は飲み切り、日常生活では体を冷やさないことが大切/帯状疱疹
<教えてくれた人>
漆畑 修(うるしばた・おさむ)先生

東邦大学医学部卒業後、東邦大学医学部大橋病院皮膚科部長、東邦大学医学部客員教授などを経て2007年に宇野皮膚科医院(東京都世田谷区北沢)院長に就任。医学博士、皮膚科専門医、抗加齢(アンチエイジング)医学専門医、温泉療法医、サプリメントアドバイザー。著書に『痛みを残さない帯状疱疹 再発させない単純ヘルペス』(メディカルトリビューン)、『帯状疱疹と単純ヘルペスの診療』(メディカルレビュー社)などがある。

 

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