帯状疱疹の治療で使われる薬は「抗ウイルス薬」と「鎮痛薬」/帯状疱疹

帯状疱疹の治療で使われる薬は「抗ウイルス薬」と「鎮痛薬」/帯状疱疹 pixta_36070492_S.jpgある日、頭や背中、わき腹などの、体の左右どちらかの皮膚にピリピリした痛みを感じた後、赤い班や小水疱(水ぶくれ)が出てきた...急にそんな症状が出現したら戸惑うものです。実は、これが帯状疱疹(たいじょうほうしん)の典型的な症状。加齢や過労、病気、旅行に出かけて疲れがたまった時などに、子どもの頃にかかった水ぼうそうのウイルスが再び活動し始めて起きる病気です。帯状疱疹の特徴や治療法、後遺症、他の病気との見分け方などについて、宇野皮膚科医院院長の漆畑先生にお話を聞きました。

前の記事「後遺症を残さないための帯状疱疹の治療方法とは?/帯状疱疹(8)」はこちら。

 

処方された薬の効能を知り、正しく飲むことが大事

帯状疱疹にかかったらなるべく早く皮膚科を受診し、処方された治療薬は疱疹後神経痛を防ぐためにもきちんと最後まで飲むことが大切だということは、前の記事でも触れました。ここでは帯状疱疹で処方される治療薬について詳しく説明します。

●抗ウイルス薬
ウイルスを死滅させる薬ではありませんが、体内のウイルスの増殖を抑えて、神経や皮膚への感染を防いで早く治す働きがあります。抗ウイルス薬の服用のタイミングは、皮膚に帯状疱疹の皮膚症状が現れてから72時間以内に、または新しい疱疹ができている時期に服用すると効果が得られます。効果を実感するまで1日半~2日間かかりますので、できるだけ早く飲むことを心がけます。急性期の痛みの緩和、治るまでの期間の短縮、合併症の予防などの効果もあります。

《おもな抗ウイルス薬》
バラシクロビル(バルトレックス)
ファンシクロビル(ファムビル)
アメナベビル(アメナリーフ)

 

● 鎮痛薬
急性期に使う鎮痛薬には消炎鎮痛薬と解熱鎮痛薬があります。急性期の痛みを取り、後遺症の疱疹後神経痛を予防するために服用します。帯状疱疹の強い痛みが、脳に"痛かった"記憶として残ってしまうと、後遺症としてその痛みが再現されてしまう恐れがあります。痛みが多少和らいだからといって、自己判断で服用を中止することは避けましょう。最後まで飲み切ることが大切です。

おもな消炎鎮痛薬
ロキソプロフェン(ロキソニン)
セレコキシブ(セレコックス)

おもな解熱鎮痛薬
アセトアミノフェン(カロナール)

 

● 鎮痛補助薬(三環系抗うつ薬)
最近は抗ウイルス薬、消炎鎮痛薬に加えて、発症から1週間目ぐらいから、痛みを取る効果が高い三環系抗うつ薬(アミノトリプチン)が処方されることが増えてきました。これは末梢神経障害性疼痛である疱疹後神経痛にも使われている薬です。急性期の痛みをしっかり取らなければ、痛みが慢性期へと持ちこされてしまうので、帯状疱疹の治療では痛みをとることに重点が置かれているのです。うつ病の症状がないのに、抗うつ薬がなぜ処方されるのか疑問に思う人がいるかもしれませんが、三環系抗うつ薬には鎮静効果があり、疱疹後神経痛の予防につながるため使用されています。

おもな三環系抗うつ薬アミノトリプチン(トリプタノール)

 

● 鎮痛補助薬(プレガバリン)
最近では、急性期に鎮痛薬で痛みが取れない場合は、鎮痛補助薬であるプレガバリン(リリカ)が使われることも増えてきました。この薬剤は末梢神経障害性疼痛である疱疹後神経痛にも使われている薬です。

 

● その他の痛みを和らげる治療
急性期の痛みが強いときや、首から上の帯状疱疹にはステロイド薬を使うことがあります。また最近は、医療用麻薬トラマドール(トラマール)などが帯状疱疹の治療薬としても処方され、痛みを残さない治療に重点が置かれています。ペインクリニックなどでは、痛みが強い場合に神経ブロック(注射)を行うことがあります。軽い疱疹後神経痛には、疼痛治療としてワクチニアウイルス接種家兎(かと)皮膚抽出液(ノイロトロピン)を処方する場合もあります。

 

●ビタミンB12
帯状疱疹はウイルスによって神経が傷つけられるため、血流を良くして神経細胞の修復を促す働きがあるビタミンB12を処方します。

 
● 外用薬
治療薬の基本は飲み薬の抗ウイルス薬ですが、塗り薬として非ステロイド性の消炎鎮痛薬などの軟膏が処方されます。帯状疱疹の場合、塗る量や塗り方などそれほど神経質になる必要はありません。疱疹がただれて治りが悪いときは、細菌感染を防ぐ効果のある抗生物質の軟膏が処方されることもあります。その際は、軟膏をガーゼに塗って患部に貼ります。

 

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取材・文/松澤ゆかり

帯状疱疹の治療で使われる薬は「抗ウイルス薬」と「鎮痛薬」/帯状疱疹
<教えてくれた人>
漆畑 修(うるしばた・おさむ)先生

東邦大学医学部卒業後、東邦大学医学部大橋病院皮膚科部長、東邦大学医学部客員教授などを経て2007年に宇野皮膚科医院(東京都世田谷区北沢)院長に就任。医学博士、皮膚科専門医、抗加齢(アンチエイジング)医学専門医、温泉療法医、サプリメントアドバイザー。著書に『痛みを残さない帯状疱疹 再発させない単純ヘルペス』(メディカルトリビューン)、『帯状疱疹と単純ヘルペスの診療』(メディカルレビュー社)などがある。

 

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