ある日、頭や背中、わき腹などの、体の左右どちらかの皮膚にピリピリした痛みを感じた後、赤い班や小水疱(水ぶくれ)が出てきた...急にそんな症状が出現したら戸惑うものです。実は、これが帯状疱疹(たいじょうほうしん)の典型的な症状。加齢や過労、病気、旅行に出かけて疲れがたまった時などに、子どもの頃にかかった水ぼうそうのウイルスが再び活動し始めて起きる病気です。帯状疱疹の特徴や治療法、後遺症、他の病気との見分け方などについて、宇野皮膚科医院院長の漆畑先生にお話を聞きました。
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体の片側に出ることが特徴です
帯状疱疹は過去に水ぼうそうにかかったことがある人がかかる病気です。水ぼうそうになると全身に発疹が現われます。そして、水ぼうそうが治ったあとも、ウイルスは全身の神経節に潜み続けるのです。ストレスや加齢で抵抗力が落ちると、潜んでいたウイルスの一部が活性化します。これが帯状疱疹です。ウイルスが活性化した部分の神経節から神経に沿ってウイルスが移動し、皮膚の表面まで到達し疱疹(ヘルペス)を作ります。
帯状疱疹の症状が現れるのは全身の皮膚ですが、頻度が高い場所は、胸や腹部、頭部などです。人間の体の神経は、体の中心を縦に通る脊髄から左右に分かれた末梢神経が、さらに枝分かれしながら全身に伸びています。その末梢神経に沿って体の左右どちらか片側だけに症状が現れるのが帯状疱疹の特徴です。片側だけに症状が広がるのは、ウイルスが1本の末梢神経に沿って増殖しながら皮膚の表面まで到達するからです。左右両側に出たり、全身に出たりするケースがないわけではありませんが、それはごくまれなことです。その場合は症状が重いことが多く、入院が必要なケースもあります。
帯状疱疹が出やすい場所(出典:日本皮膚科学会誌2003年)
1位 胸...胸神経が通っている胸や腋は発生頻度がもっとも高い。
2位 腹...肋間神経の腹部に近い領域で起こる。
3位 顔・頭...三叉神経(顔面の知覚や咀嚼運動を司る神経)が通る目や額、鼻などに多い。
「帯状疱疹だと思ったら、あるいは疑わしいときにも、なるべく早く皮膚科を受診するようにしましょう。皮疹(疱疹)が出る前から痛みを感じることが多いので、できればその段階で受診した方がいいのです。痛みは本人にしか分からず、出た場所によっては頭痛、腹痛、腰痛として現れることがあります。他の病気との区別が難しいですが、体の片側だけが痛む場合は帯状疱疹を疑って、すぐ受診してください」と漆畑修先生。
発症の初期の段階では、まだ皮疹(疱疹)はできず "ピリピリ" "チクチク"とした痛みや違和感が生じます。この初期の痛みや違和感も体の片側だけに起こります。痛みや違和感だけで、すぐに「帯状疱疹かもしれない」と判断して受診できる人は少数ですが、覚えておけば早期に治療をすることができます。治療開始が早ければ早いほど、後遺症を防ぐことにつながるのです。
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取材・文/松澤ゆかり
漆畑 修(うるしばた・おさむ)先生
東邦大学医学部卒業後、東邦大学医学部大橋病院皮膚科部長、東邦大学医学部客員教授などを経て2007年に宇野皮膚科医院(東京都世田谷区北沢)院長に就任。医学博士、皮膚科専門医、抗加齢(アンチエイジング)医学専門医、温泉療法医、サプリメントアドバイザー。著書に『痛みを残さない帯状疱疹 再発させない単純ヘルペス』(メディカルトリビューン)、『帯状疱疹と単純ヘルペスの診療』(メディカルレビュー社)などがある。