筋肉が落ちると寝たきりや認知症に一歩、近づき、自由な生活からは遠ざかります。
筋肉を意識的に使うことで脳が活性化され、神経のつながりも良くなり、結果、いつまでも自力で動くことができます。「貯筋・ 運動」で"貯筋"の残高を増やしましょう。
こんな人はいますぐ"貯筋"を始めましょう! 筋肉は何歳からでも増やせます。
□運動習慣がなかなか続かない
□寝たきりはなんとしても避けたい
□認知症予防に脳を鍛えたい
□運動は苦手
□昔より歩く速さが遅くなった
□最近おなか回りだけ太くなった
□骨粗鬆症(こつそそうしょう)には気を付けている
□忙しくて運動する時間がない
意外と知らない! 筋肉のびっくり!?
●筋肉を鍛えると脳と神経も使われる!
筋肉を作る筋線維は、例えば太ももの場合は髪の毛くらいの太さですが、この筋線維1本には必ず神経がついています。筋肉は大脳からの指令で動きますが、体を動かすとき、脳からの指令→神経を経て→筋肉が収縮する、という指令システムを使っています。筋肉を鍛えるということは脳や神経も鍛えられているのです。
アメリカの学校で授業前に15分の運動をして算数のテストをしたところ、運動していないクラスよりも結果が良かった、という調査報告もあります。運動すると神経伝達物質が増えるからです。
●日常生活の動きでは筋肉量は維持できない!
立つ歩く、階段を上る、といった日常動作は、無意識なので脳と神経も無意識に使われています。経験的に脳がこれくらいの筋力を使えば歩ける、と適切な指令を出しています。ただこうした日常生活の動きでは、年齢とともに萎縮していく筋肉を太くする(貯筋)ことはできません。
運動したときに筋肉がプルプルした経験があるかと思いますが、このとき、自分の最大筋力の50%以上の力を出しています。筋線維を太くするためには筋力の40%以上の力を発揮する必要があります。日常動作では使うことがないくらい大きな力を出す必要を、脳が認識して指令を出し、「ちょっときついな」といった強度の運動が筋線維を太くします。
●50 歳以降は1年に1%ずつ筋肉は減少する!
太もも前の筋肉(大腿四頭筋)を例にすると、20代をピークとしたとき、普通に日常生活を送っていても、50歳以降は1年で1%ずつ筋肉量は減少していきます。
「太もも前には約500万本くらいの筋線維があると思われます」と貯筋運動を考案した福永哲夫さん。筋肉量が減少するというのは筋線維の数が減るのではなく、筋線維一本一本が細くなっていくことです。
寝たきりの状態を作り出すベッドレストスタディという実験では、20代でも3週間の寝たきり生活で約10%の筋萎縮が見られました。使わないと筋肉は萎縮していくばかりです。
次の記事「「貯筋」すれば骨粗しょう症予防にも! 筋肉は使って貯めましょう/筋肉貯金(2)」はこちら。
取材・文/石井美佐
監修/福永哲夫(ふくなが・てつお)さん
鹿屋体育大学名誉教授・早稲田大学名誉教授・東京大学名誉教授。「貯筋運動」考案者。筋トレの重要性を提案。
運動指導/沢井史穂(さわい・しほ)さん
日本女子体育大学スポーツ健康学科教授。全国で「貯筋運動」の実践、普及に尽力している。