心臓は1日に10万回以上も収縮しています。その脈の乱れが「不整脈」です。
急に動いたときや、緊張、ストレスなどでドキドキするのは「怖くない不整脈」。安静時でもドキドキしたり、めまい、息切れ、動悸があるのは「怖い不整脈」かもしれません。
心臓と不整脈について、大阪大学大学院医学系研究科外科学講座心臓血管外科学教授の澤芳樹先生に聞きました。
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怖い不整脈を知って心臓を守ろう
私たちの「生きている証し」である「バイタルサイン(生命兆候)」は、呼吸、体温、意識、血圧、そして脈拍です。脈拍は簡単に測定できるのに、正しい測り方(検脈)を知っている人は意外に少ないのです。
「血圧を気にするように、心臓の健康状態を示す脈にもっと関心を持って、大切な心臓の病気を早期に発見しましょう」と澤先生。
まずは「トン、...、トトトン、トッ」など不規則な脈の乱れのチェックを。そして少しでも乱れがあれば心電図検査を受けましょう。
脈の異常の見つけ方
【正常】トン・トン・トン・トン
【飛ぶ】トン・ト・トン・トン・ト
【遅い】トン...トン...トン...
【速い】ト・ト・ト・ト...
【不規則】ト・ト・トン...トン・ト
心電図によって、心臓が規則正しく動いているか否かがわかります。
「1日に10万回以上も拍動をすれば、たまにエラーも起こりますし、びっくりしたり、急に運動したり、睡眠不足だと脈が速くなったりもします。一時的であればすぐ元に戻りますが、それが長期間続くと、命にかかわるさまざまな病気の原因になります」
自分で確認してみよう!
正しい脈の測り方
1. 左手首を回し手のひらを上に。
2. 左手首を少し曲げ親指の付け根の骨の内側で脈をよく感じる橈骨動脈(とうこつどうみゃく)を探す。
3. そこに右手の人差し指、中指、薬指の3指を立てて当てる。
4. 15秒間の脈の数を数え4倍すれば1分間の脈拍数に。
正常な脈拍と三つの不整脈
【正常な脈拍】
心電図は最初の小さな波「P波」(心房の興奮)、次の「QRS波」(心室の興奮)、その後の「T波」(心室の興奮が覚めるようす)と「U波」があります。正常なら一定のリズムで繰り返し、1分間の脈拍数は50~100。トン、トン、トンという規則正しい脈です。
【期外収縮(飛ぶ)】≪不整脈にもっとも多いタイプ≫
正常な波形の中に時々不規則な波形が現れ、不整脈に最も多い。脈が飛ぶ、胸の不快感、短い胸の痛みなどが症状。自律神経の乱れ、睡眠不足、喫煙、過度のアルコールやカフェイン摂取でも発生します。拍動100回に10回以上の不規則な波があれば治療が必要です。
【徐脈(遅い)】≪脳血流不足のめまい、失神に注意≫
何らかの理由で拍動が遅くなったり、間隔が長くなったりして、1分間の脈拍が50未満になってしまう状態。このときは脳への血流が不足しているため、めまいやだるさ、息切れ、失神などを起こすことがあります。
【頻脈(速い)】≪危険です!≫
脈が速くなるタイプ。拍動が1分間に100を超えると「頻拍」、洞結節で作られる電気信号が250回以上(正常値は60~80回)になると「細動」。この細動が心房で起こると脳梗塞に、心室で起こると突然死につながります。
<命取りになる心房・心室細動>
洞結節(どうけっせつ)で生じた電気信号は、心房を経由して房室結節に集まり、ここから心室に伝えられる。洞結節以外から生じた異常な電気信号で、心房がけいれんしたように細かく震え、血液をうまく心室に送り出せなくなるのが「心房細動」。心房内の血液がよどんで血栓ができやすく、脳梗塞のリスクが高まります。心室がけいれんしたように動くのが「心室細動」。収縮機能を失い、規則的に血液を送り出すことができないため、致命的な不整脈とも言われています。
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取材・文/宇山恵子 撮影(澤先生)/奥西淳二 イラスト/末続あけみ
澤 芳樹(さわ・よしき)先生
大阪大学医学部卒、医学博士。大阪大学大学院医学系研究科外科学講座心臓血管外科学教授。iPS細胞を用いた心筋シートの開発など世界最先端の研究を推進している。