変形性股関節症は、股関節に強い圧力がかかり軟骨が摩耗し骨が変形する病気です。脚の付け根の痛みや違和感、歩行困難などが見られ、日常生活にも影響を及ぼします。今回は日本人工関節学会認定医の大嶋浩文先生にお話を伺いました。
この記事は月刊誌『毎日が発見』2024年3月号に掲載の情報です。
どんな病気?
・股関節に強い圧力がかかって軟骨がすり減り、骨が変形する病気。
・原因は、生活習慣、骨の形成不全、遺伝など。
・主な症状は、脚の付け根の違和感や痛み、歩きにくい、あぐらをかくのがつらい、O脚やX脚になる...など。
脚の付け根の痛みが骨の変形のサイン
春の到来ももうすぐ。
暖かくなると外出する機会も増えますが、歩き始めるときに「脚の付け根が痛い」と思うことがあるかもしれません。
歩いているうちに痛みが和らぐと、そのままにしてしまいがちですが、しばらくすると歩くのもつらくなるほどの痛みとなることがあります。
その原因の一つが「変形性股関節症」です。
太ももと骨盤をつなぐ股関節の骨が変形し、痛みを引き起こします。
「股関節は、太ももの骨の先のボールのような『大腿骨頭(だいたいこっとう)』が、受け皿となるお椀のような『寛骨臼(かんこつきゅう)』にはまってスムーズに動いています。股関節が不安定な状態で負荷がかかると、関節のクッションの役割をもつ軟骨がすり減り、大腿骨頭と寛骨臼が直接ぶつかって骨が変形し、痛みや歩行困難などの症状を引き起こします」と、大嶋浩文先生。
変形性股関節症の早期段階では、いすから立ち上がって歩き始めるときなど、股関節に負荷がかかったときに痛みを感じます。
進行すると、歩行中ずっと痛みが走り、靴下をはくことや正座なども困難になります。
さらに骨の変形が進むと、就寝中も痛みが続きます。
また、立ったときに脚の付け根を伸ばせなくなり、直立の姿勢を維持できず、体が曲がった状態になって元に戻らなくなることもあります。
「股関節の変形は、加齢なども関係しますが、患者さんの約9割は『寛骨臼形成不全』や、乳児期の『発育性股関節形成不全』による骨の変形に関係しています」と、大嶋先生は説明します。
寛骨臼形成不全は、本来はお椀のような形に形成されるはずの寛骨臼が、浅いお皿のような形で成長が止まる状態です。
大腿骨頭に負荷がかかるようになり、これが長く続くと骨が変形します。
発育性股関節形成不全は、生まれながら遺伝的に、または成長の過程で股関節が正常の位置からずれた「亜脱臼」の状態になっており、適切な治療を受けないと、中年期以降に変形性股関節症を発症する確率が高くなります。