腰痛にマッサージは正解? 不正解? 正しく知っておきたい、マッサージの「本当の効果」

腰痛の劇的な効果改善は期待できない!?

すごくざっくりまとめると、マッサージによって短期間ならば腰痛が軽くなる可能性はあるのですが、ただしそれによって、腰の動きがよくなったり、薬を使う量が減ったり、仕事を休む期間が短くなったり、金銭的なメリットがあったりなど、劇的な改善効果はあまり期待しないほうがいいということになります。

一方で、マッサージによって症状がひどく悪化するような事例はあまりなかったものの、痛みが逆にひどくなってしまう場合は1.5〜25%程度あったともされています。

筆者も、わりとマッサージにはよく行くほうだと思いますが、まさに同じような実感を持っています。

ただし外来をやっていると、マッサージを受けたあとに痛みが強くなり、検査をすると肋骨や腰椎に骨折が見つかった......ということがたまにあります。国民生活センターにも「マッサージを受けたところ腰や脚に痛みが出て歩行困難になった。整形外科を受診したところ腰部脊柱管狭窄症(ようぶせきちゅうかんきょうさくしょう)と診断された」などの事例報告がたくさんあります。筆者はもっと重篤(じゅうとく)で人生に影響するような内容のケースも経験しています。

そのため、腰痛が出ているときはマッサージに行くのではなく、まず整形外科を受診することをおすすめします。

マッサージを受けたい場合は、ぜひ主治医に危険性などがないかどうか確認したうえで行くほうが安心でしょう。

整形外科もマッサージも、上手に利用することが大切です。

参考文献:e-Stat「国民生活基礎調査」
https://www.e-stat.go.jp/stat-search/files?page=1&layout=normal&toukei=00450061&metadata=1&data=1

Furlan AD, et al. Massage for low-back pain. Cochrane Database Syst Rev 2015; (9): CD001929. 

 

おると
整形外科専門医。診療にあたりながら、自身の転職経験をもとにしたブログ「フリドク」やX(旧Twitter)を2018年より開始。正しい医療をわかりやすく発信するスタイルや世間のネットニュースについての専門医目線での解説、ニセ医療解説などが大きな反響を呼び、現在12万人を超えるフォロワーを有する(2024年2月時点)

※本記事はおると著の書籍『整形外科医が教える 家族の身体を守る医学的ライフハック』(KADOKAWA)から一部抜粋・編集しました。
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