「なんだか疲れやすくなった」「年々体力が落ちていく」など、疲れやすさを自覚している方は多いと思います。ですが、そもそも疲れとは何でしょう?そこで、疲労研究家で、大阪市大学大学院疲労医学講座特任教授である梶本修身先生に、最新の疲労科学研究で分かった、疲労の正体とともに、疲労を改善する生活習慣について伺ってみました。
シリーズ「脳疲労」
自律神経の中枢に活性酸素がたまると疲労を招く!?
疲労の正体は、脳にある自律神経の中枢の疲労だとお話ししました。では、自律神経はどんな働きをしているのでしょう?
「自律神経は、体の恒常性を維持するために、私たちの意思とは無関係に24時間休むことなく働き続けています。血液を循環させる、体温を調節するといった機能は、全てこの働きによるものです」と梶本先生。
ここで、自律神経中枢の疲労について説明しましょう。
●「疲れた」の原因は、自律神経中枢の疲労にあります!
運動や仕事、紫外線、温度差など、さまざまな 要因で人は「疲れ」を感じます。注意力が衰えて散漫になる、動作が緩慢になる、視野が狭くなる、気分がめいるなどの変化が現れます。
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運動したり仕事をしたりすると、脳内にある「視床下部 (ししょうかぶ) 」と「前帯状回 (ぜんたいじょうかい)」という部位が疲労を起こします。これらは、生命を維持するための根幹である自律神経の中枢です。
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過剰な運動や労働、ストレスなどによって自律神経が酷使されると、自律神経中枢の細胞で活性酸素が大量に発生。抗酸化物質(活性酸素から細胞を守る酵素群)が対抗し切れなくなり、 疲労を引き起こします。
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疲労が慢性化すると、さまざまな病気のリスクが増します。老化やがん、動脈硬化、心筋梗塞、 白内障の他、糖尿病、脂質異常症、高血圧などの生活習慣病の症状も起こしやすくなります。
●体内で活性酸素が発生すると...
仕事や運動、人間関係でのストレスなどにより自律神経が猛烈に頑張ると、体内で活性酸素が必要以上に発生します。
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体の中で増え過ぎてしまった活性酸素が、正常に作用している細胞や筋肉を酸化させて破壊していきます。
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細胞から排出される老廃物が増加するのを合図に、FF(ファティーグファクター)という疲労因子が発生!
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脳内にある眼窩前頭野 (がんかぜんとうや)という部位に、「疲労因子FFがたまってきた」という情報が伝わり、疲労感が生まれます。
取材・文/笑(寳田真由美) イラスト/黒崎 玄
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梶本修身(かじもと・おさみ)先生
東京疲労・ 睡眠クリニック院長、医師・ 医学博士。大阪市立大学 大学院疲労医学講座特任教授。「産官学連携疲労定量化及び抗疲労食薬開発プロジェクト」統括責任者。著書の『すべての疲労は脳が原因』(集英社)は、 シリーズ累計18万部を超えるベストセラー。