「なんだか疲れやすくなった」「年々体力が落ちていく」など、疲れやすさを自覚している方は多いと思います。ですが、そもそも疲れとは何でしょう?そこで、疲労研究家で、大阪市大学大学院疲労医学講座特任教授である梶本修身先生に、最新の疲労科学研究で分かった、疲労の正体とともに、疲労を改善する生活習慣について伺ってみました。
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目から入る紫外線が疲労を起こさせます!
紫外線が気になる季節が近づいてきました。これまでの紫外線対策というと、美肌のための 日焼け予防というのが一般的だったかと思います。ですが、最近の疲労科学では、紫外線が激しい疲れを引き起こすことが明らかになっています。
「疲れの原因となる活性酸素は、太陽の光に含まれている紫外線を浴びることでも、体内で作られてしまうのです」と梶本先生。
目に紫外線が入ると、外に露出していない部分の肌まで日焼け肌になります。そもそも紫外線は、人にとって、細胞のDNAを書き換えてしまう大敵。目に紫外線が入ることで、角膜が紫外線を察知し、活性酸素を大量に発生させます。すると、脳は紫外線から細胞を守るため、全身のメラノサイト(色素細胞) を活性化させて、日焼けやシミの元となるメラニン色素を作らせます。その結果、目に紫外線が入るだけで、紫外線を浴びていない部分の肌まで日焼け状態 になってしまうのです。
●紫外線が目に入ると、全身の日焼けに影響が!
目に紫外線が入ります。
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紫外線の大半は角膜で吸収され、残りは 水晶体や網膜に到達。角膜では、活性酸素が大量に発生して炎症反応が起こります。
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角膜の炎症により、「紫外線が来たぞ」という情報が脳に伝わります。
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情報を得た脳の自律神経の中枢がメラノサイトを活性化させ、メラニンを分泌させます。
実際、マラソン中継を見ていると、サングラスをかけて走っている選手をよく見かけます。 あれは太陽のまぶしさを防ぐためだけでなく、目から直接入る紫外線をカットして、疲れを防ぐため。外出時や屋外での運動の際は、サングラスをかけると疲れの度合いが変わります。ちなみに紫外線は、曇りの日でも多く降り注いでいます。特に春先から日差しの強い8月までは、 しっかりと対策しましょう。
取材・文/笑(寳田真由美) イラスト/黒崎 玄
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梶本修身(かじもと・おさみ)先生
東京疲労・ 睡眠クリニック院長、医師・ 医学博士。大阪市立大学 大学院疲労医学講座特任教授。「産官学連携疲労定量化及び抗疲労食薬開発プロジェクト」統括責任者。著書の『すべての疲労は脳が原因』(集英社)は、 シリーズ累計18万部を超えるベストセラー。